映画『東京クルド』を見ました。これは絶対に見て欲しい。そして知って欲しいこの現状を。


オリンピックで皆さんも沸点がさがってると思いますが、ただでさえ普段から沸点の低い私はもう激怒しまくりです。そして本当に本当にこの映画を見て自分の国が恥ずかしくなりました。私たちはひどい国に住んでいる。が、一方で、こういう気骨溢れる若者と、素晴らしいドキュメンタリーを制作する素晴らしい人たちもいることを忘れてはいけません。「東京クルド」現在、都内では渋谷・表参道のイメージフォーラムで上映中。

この下に貼った音声は皆さんご存知ですか? 名古屋入管で亡くなったウィシュマさんの遺族の方に対する職員の対応の音声記録。



これを聞いた時も、もう沸点爆発だったんだけど…

さてこの「東京クルド」というドキュメンタリー映画。そもそもクルド人とはどんな人たちなんでしょう。クルドとは歴史的にクルディスタンと呼ばれる山岳エリアに住む人たちで、国はトルコ、シリア、イラク、イランにまたがっていて、その人口はトルコ人の19〜25%とも言われています。中東ではアラブ人、トルコ人、ペルシャ人につぐ人口規模だけれど、強制移住や弾圧迫害に苦しめられていえる人たち。実は私も全然わかっておらず、この文章も映画館で買ったパンフレットを参考に書いているんだけどね…(苦笑)ほんと世界のことを私も何も知らなすぎる。本当にやばい。

でも、この映画はそんなふうな低知識の私でもすんなり入れるようにすごく上手に組み立てられている。最初はボウリング場で楽しそうにしている若者。一見して中東の方だとわかるのだけど、言葉を聞けば完璧な日本語。そんな風景からこのドキュメンタリーは始まる。

18歳オザンと19歳のラマザン。二人はクルド人。ドキュメンタリーはこの二人の若者を追っていく。二人とも親にくっついて子供のときに日本に来た。日本で育った彼らは日本語もめちゃくちゃ流暢。そして普通の日本人の同い歳の男の子たちとなんら変わりない。特に父親との人間関係が微妙なところなんか、ほんとにほんとに日本の子たちと変わらない。

この映画でも紹介されているように難民認定されなかったクルドの人たちは埼玉の蕨や川口あたりに集っているんだそうだ。そんなふうにして首都圏で生活しているクルド人の数は1,500人と言っていた。結構な数だ。そんな数の人たちが、実は明日収監されるのではないかという恐怖におびえビクビクしながら毎日を過ごしている。

実はウチは最寄りのJR駅が王子なので、川口にもすごく近いんだよね。それなのに全然知らなかったよ。川口までは、近いので、実はいつだったか天気のいい日にウチから荒川土手沿いに歩いていったこともある。1時間かかったけど(笑)

そんなこともあって、映画は川口のシネコンでも上映されているようで、でもそこは車で行かないと不便な位置だったから、やっぱり私は渋谷のイメージフォーラムに行ってきた。イメージフォーラムは渋谷から行くのが普通なんだろうけど、この時期だし渋谷を避けたい人は表参道から歩くといいですよ。それでも四連休しらなくて、木曜日にこの映画を予約してしまった私は表参道の結構な人混みにびっくりしたのだけれど…。

それにしても、このドキュメンタリー、川口の映画館での上映時に彼らの家族も来場したそうで、それは本当によかったと思う。

というか、彼らにとっては映画に出たこともリスクだ。監督である日向史有さんは、彼らや彼らの家族と何度も何度もそのことのリスクについて話し合ったそうだ。

彼らは何度も難民申請を続けるトルコ国籍のクルド人。国に帰れば未来はない。申請が通る確率は1%以下。いわゆる不法滞在者とされかつ入管の収容を免除されているという立場。いつ声がかかって収監されてもおかしくない。非正規の滞在者として、自由に移動することもできない。働くこともできない。そういう人たち。

狭い家ではなかなかプライバシーもないから、監督と夜の公園とかでコメントを収録する。あそこのシーンはグッときたなぁ…

通訳になりたいと話すラマザン。通訳業にうるさい私は(笑)、通訳ってそういう仕事じゃないんだよ、言葉がしゃべれるだけじゃダメなのよ…と彼に心の中で声をかけつつも、つまりはそういうことを学んだり失敗したりするチャンスすら彼らにはないんだなということを改めて実感する。将来の道に進むためには、彼らはまず難民として認定されて、住所を与えられ、自由に働いて、失敗したり経験を積んだりしないといけない。ところがその道がない。普段は解体業者でバイトしながらも、芸能人として働きたいオザン。いや、ハンサムだから彼なら「あり」でしょう。でも芸能界って本当に大変な世界だから!…と思いつつ、こちらもこちらで道はシャットダウン。頑張ろうとする彼らの目の前にドーンと現実が突きつけられる。日本はこういう国だという現実が。

彼らだって、そういう未来を夢見る権利がどんな人間にでもあるのだ。っていうか、こんなに若くて、健康で、頭もよくて素敵な若者たちなのに、なんか変だよ!! だいたいこれから人口が減る日本において、必要じゃないのかな。教育機関だって、学びたい生徒、Welcomeのはずでしょう? これから日本少子化でしょ。子供減っちゃうのに、どうするのよ…

この映画をみながら私はもうすでにぐるぐると頭の中で解決法を考えていた。これを突破する何かが必ずあるはずだ。ラマザンの入学面接に同行した弁護士の大橋毅さんが、教育の機会の平等を人権的に学校側に訴えかけたのは、すごく感動した。例えば、例えば…そういうこと。そういうなにか根本的なことが突破口になったりしないのだろうか。これはあくまで人権侵害だと。自国に帰れば命すら危ない人を、なぜ日本で受け入れないんだろう。ましてや彼らはもう二世と言っていい世代だ。殺されそうな人を保護しないことは、憲法違反とかにならないんだろうか。いや憲法だから適用されるのは日本国民だけ?? でもこれって国際法にも何かひっかかるよね?

っていうか、変だよね。そもそも日本は難民条約に批准してるよね。なぜ難民を認めないんだろう。そして許せないのが、あの横柄な態度!! 

オザンもラマザンも何ヶ月置きだかの出頭命令で、品川へ通う。しかし、これってどんな筋書きになってるんだろう。例えば彼らは住所がなかったけど一応小学校とか中学校とか高校とかには行けたわけだよね…この映画が撮られた当時、オザンは専門学校・大学への入学に苦労していたのだけれど…でもそういった教育という名目のもとに突破口がないのかな…とも思った。彼らを(なぜか)中学生としてもう一度中学校に入学させる。でも実態は国際的なことを教える教師としての仕事をこなしてもらう…とか。いや、なんかわからないけど、そういう法律の目をくぐりぬけられるような何かはないのか。でも例えばクリチャニアみたいな治外法権的なエリアをどっかにつくって…  あ、違うか…  とグルグルグルグル考える。難しい。難しすぎる。

それにしても、二人ともかなりハンサムで素敵な男の子。体格もよくかっこいい。中東の人はルックスが本当にエキゾチックでセクシーだよね。そして、これ、余計なことかもしれないけど、登場するお母さんたちが作っている料理のめっちゃ美味しそうなことよ!!! そしておそらく…こういった2国のことをよく知るラマザンやオザンみたいな子たちは将来中東と日本の間に立って、素晴らしい活躍をしてくれるに違いないのだ。 

それにしても、職員の「帰ればいいんだよ、他の国行ってよ」で、もう怒り爆発。あんたら何様?! 途中からもう悔しいやら何やらでいてもたってもいられず… 

最後、収監されたオザンのパパがやっとの思いで外に出てきて(入管は病院に行く彼にも腰縄と手錠をつけた。ありえない…)出迎えた子供がこらえきれず涙を流すところなんか…もう。

というわけで、沸点警報出まくりでしたけど、これ!! この事実を何も知らないでいたらそれこそ最悪ですよ。日本は国際社会から総スカンをくらうことは間違いない。っていうか、もうくらってるでしょ、十分に。

ウィシュマさんの件といい、なんといい、どうしてこういうことが起こるんだろう。おそらく公務員の人たちは事を荒立てずマニュアル通りにしていれば、いつか自分は窓口担当を外れることができる…とでも思っているのかな。すっごい嫌なボスが上にいて、現場レベルのいろんなイレギュラーなことに対する判断を認めないのかな? 難民認定するにしても自分がやらなくてもよかろう、次の担当者なんとかしてくれとか思ってるのかな。っていうか、そもそも人間として、どう思っているのかな。

これさぁ、ワクチン大臣じゃないけど法務大臣が「私が責任を取るから現場で判断してくれ」って言わないかな。ダメなのかな、そういうの。

悔しい。何も力のない自分が悔しい。だから皆さんもぜひまずはこの映画を見に行ってください。ほんの100分だけ、あなたの時間をこの映画にください。そして自分の国がどういうことをしているのか知って欲しい。詳細はここ「東京クルド」のホームページへ。

この映画、外国の映画祭とかでもかからないかな。そして日本の恥ずかしい部分として海外に知れ渡ってほしい。日本は外圧でしか変わらないんだよね…。自分で検証し自ら変わることを学ばずにここまで来てしまったから。





PS