たまっていたブックレビューが続きます。
彼女の主演した『かもめ食堂』を一連としたほのぼの系の映画の世界観がどうも苦手だったのだけど、彼女が本気でぶつかってくるような役柄(『紙の月』での宮沢りえさんとの女優対決は本当にすごい)とか、コメディのコミカルな役柄(テレ朝の『離婚なふたり』今でも配信で見れる)が大好きで、一時、小林聡美マイ・ブームな時があったんだよな。
文章を書く人だということを知って、何か読んでみようと思ってその時点での最新刊を買ったらこれだった。でも彼女が書いた文章ではなく、あくまで「鼎談」のホステス役なのである。
なので、私が普段読んでる本に比べて正直パンチにかけるというか、なんというか。雑誌の連載なんてこう言う感じだよね。それでも、お風呂で一つずつ楽しく読みました。正直、出ているほとんどの人が知らない人ばかりで、本当に私って物を知らないな…とも思った。
14歳から女優をしているという小林さんだけど、彼女の言葉で気になったのが「女優というのは待つのが仕事」というところ。
確かによく考えてみればわかる。人気者であれば、それなりに仕事のオファーは来る。でもそこに自分にぴったりの役や自分でやりたいと思えるような役が来るかということは、まったく別。
確かに女優は仕事を選べない。でもオファーが来た中でなんとなく「やってみようかな…」という中で、自分なりに精一杯その役に自分のすべてをかけて挑み、そこから何かを発見していく。
自分と一緒に帆走し、一緒に企画をたててくれるプロデューサーやマネージャーでもいれば別だけど、普通はそんな幸運はないよね。
また人気者になればなるほど、なんか違うな…っていうオファーも多くあるだろうし。
あと井上陽水さんとの回で、そのくらいの人ともなれば自身の活動の周りに生態系ができている…と彼女が言うところ。それもなるほどなぁ…と。売れてしまうと、自分だけの問題じゃなくなる。
そう言う意味では人気者になったからといって、自分のやりたいことをやれるわけではないわけで、いや〜 社会で生きていくのは大変だなぁとしみじみ考えた。
あと「かもめ食堂」の三人が集まった回では、小林さん演じるサチエさんが本当にしっかり者だという話になって、小林さんが「誰かが整えてくれれば自分も海外でお店を… なんて言っている時点でカッコ悪いですよね」みたいな話をしていること。リアルだ。
うむ。小林さんって、なんかすべてお見通し感がすごくある。
(かもめ食堂、映画ではサチエの店を開業する資金源がまったく語られていないけど、原作を書いた群ようこさんの本にはサチエは宝くじを当てた…という記述がはっきり書いてある← なんだかんだ言って結構詳しい私)
あと役者というのは「これまでと違う役をやりたがる」という話も妙に共感した。相棒で再ブレイクの水谷豊さんとか。桃井かおりさんとか。そういや桃井さんは監督業にも挑戦してたよね。あれって、どうなったんだろう。
俳優という仕事って何か不思議だ。妙に「何か欠けている」性格の人の方が向いているような気もする。
すごい演技派の女優さんが、ワイドショーやトークみたいな番組にゲストに出ると目が泳いでいたり落ち着かなかったりしているのが良い例だ。番組宣伝、映画宣伝といって、媒体に露出させるのも疑問だよな…。
そういう人たちは、ものすごく不安定な印象があって、逆に役が入って演技とガッツリと一つの人間が完成する。そんな感じだ。職業が彼らのすべてを支えている感じがして、私はすごく好きだ。
本当にすごい職業なんだよなぁ。そういうのになんか最近は興味がある。
小林さんがちゃんと書いたエッセイ(もしかしたら「なりあがり」みたいにゴーストがいるのかもだけど)も読んでみたいなぁ。読んだことある方、ぜひぜひお薦めを教えてください。