Train to (from?) Sligo

 


91年に、初めてアイルランドに行った時、スライゴまで電車で行く旅程を組んだのは、
当時はインターネットもなかったけど、よく行ったよなぁ。珍しくアイルランドは真っ白く雪で覆われた日だった。

到着したスライゴに行った感想。東洋人がまるでいない! 例えば英国は、どんなド田舎に行ってもチャイニーズは普通にいるもんだったけれど、ここはみんな真っ白だ…
そして子供と老人しかいない!

懐かしいなあ。

そして、この歌が好きだったからアイルランドに行ったら、まずはスライゴに電車で行かねば!と思っていたのだった。


モーラ・オコンネルはメアリー・ブラックも在籍していたデ・ダナンの女性シンガーだった。ちょっとカントリー志向な歌声と歌い方がいいんだよねぇ。



トムはロシア経由でアメリカからやってきた人で、よくメアリー・ブラックの『ノー・フロンティアーズ』に収録されている「カロリーナ・ルー」を書いたことでも知られる。この曲は大学で勉強する娘さんのために書いた曲らしい。

よくメアリーが「カロリーナ・ルー」を歌う前に、トムのことをステージで紹介するのに「私たちは何百万人も移民を送り込んだのに、They sent us only one」と言っていたのが思い出される。

「カロリーナ・ルー」はモーラとメアリーの争奪戦だったという話を聞いたことある。(注:モーラとメアリーは大の仲良しです)


オリジナルはこちらのバンド。トム・ムーアという人がやっていたバンドで、ミッドナイト・ウェルというグループ。70年代のアイルランドでこの曲はヒットしたんだよね。アナログ盤を持っているけど、めちゃくちゃいいんだ。


のちにトムもソロアルバムで、この曲をセルフカバーしている。


こちらは私が知らないアーティストなんだけど、ガイドの山下直子さんが見つけてfbで教えてもらった。2014年になってもカバーされるなんて、アイルランド人に本当に愛されている楽曲なのかも。

彼はモーラのヴァージョンを聞いてこの曲を知ったのか、「Train to Sligo」って歌ってる。


この曲を書いたトム・ムーアはその後、ギャヴィン・ラルストンと一緒にソロ・アルバムを作ったけど、表立った音楽活動はしていなかったと思う。その後、2018年に亡くなったし、アルバムをプロデュースしたギャヴィンも若かったのに2019年に癌で亡くなってしまった。

こういう最近の作家が書いたんだけど、ヒットも大きくなかったんだけど、なんとなくスタンダードになっていく曲って、アイルランドでは他にアンディ・アーヴァインなんかもそうじゃないかなぁと思う。

例えば 「AS I ROVED OUT」とか、「MY HEART'S TONIGHT IN IRELAND」とか。そういや「MY HEART'S...」も、正式な作者がつけたタイトルではなく多くの人が「SWEET COUNTY CLARE」って愛称で呼ぶよね。それはスタンダードの兆しかも? 

「THE SCHOLAR」が、「TRAIN TO SLIGO」になったように。


アンディの詩集が柴田元幸先生の訳でこちらで販売されています。もちろん「SWEET COUNTY CLARE」も収録。素晴らしいよ。ぜひ。

それにしてもアンディは英国生まれだし、トム・ムーアはアメリカ人だし、そうやって「ダイバーシティ(多様性)」がアイルランドですら文化に貢献しているのがわかる話でもあるわ。

っていうか、外からの「血」を入れないと、文化って澱んじゃうよね…と文科省の方角に向かって叫んでみる。