逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』を読みました。こういう小説、初めて読んだよ


このブログをよく読んでいただいている方にはご存じのとおり、私はフィクションを読むのがあまり好きではない。

だけど久しぶりにフィクションを読んだのは、なんかパンチのあるものが読みたかったのと、和久井光司さんのfbでの紹介投稿を読んで。


和久井さんは私の知る中でももっとも本を読んでいる人の1人だ。和久井さんは圧倒的にフィクション派なので、普段はあまりその読書活動から影響を受けることはないのだけれど、和久井さんがこれだけ押すのだから間違いないだろうと思い切って購入。

ソ連とかドイツとか戦争とか、まったくうとい私なので、読めるかな…とちょっと心配になりつつも、なんか、こうパンチがあるものが読みたかったのだった。

パンチがあるもの…ということでは、ノンフィクション大好きだけど、やっぱりフィクションの名作はかなわないことが多い。本屋大賞にノミネートというのも信頼がおける。

で、読んでみたら確かにすごい。すごい迫力だった。長い本だけど、4日ほどで読めてしまった。ただ私としては武器がどーしたとか、なんとかとの距離がーとかまったくチンプンカンプンなため、その辺のくだりはかなり飛ばして読んだけどね…。(数値に弱い私)

まぁ、でもリアルさを出すためには、こういうのも必要なんだろうな…と。

でもすごいのは、やっぱり人を殺すということに対する心の変化だ。そして…敵だの味方だのの境界線のあやうさ、男たちの語る戦争の意味のなさ、卑劣さ…  

正直ちょっと長すぎるかなとも思ったけど、最後の方に来るともうすごい展開で、最後の100ページくらい、布団の中で読みながら止めることができなかった。幼なじみとの再会、伝説の狙撃手による講演&質疑応答、敵討ちにでていく主人公、仲間とのやりとり…いやーーー すごい。

史実をつかみつつも、それをここまでのフィクションに昇華させてしまう作家の素晴らしさに圧倒された。こういう感じは原田マハの『たゆたえども沈まず』にも似ている。作者は、なんとまだ30代で、これがデビュー作というからすごい。

ちなみに私の姪も作家志望(でも春から地方公務員)なんだけど、彼女と文章のスタイルがとても似ているので、思わず久しぶりに姪っ子にLINEしちゃったよ。

そしてまったくの偶然なんだけど、読んでいる途中で聞いていた朝日新聞ポッドキャストがベラルーシの話だったこと。

これもすごいのでぜひ聞いてみてください。ベラルーシの女性たち、本当に素晴らしい!! しかも私のように無知なものでもわかるようにベラルーシってどこにあったっけ…ということから始まる。白ロシアと呼ばれていた時代、そして現在の独裁政権…

選挙では不当に投獄された対立候補の妻たちがたちあがり、逆出口調査(私たちに投票してくれる人は白いリボンを腕にと呼びかけて、投票の状況を可視化できるようにした等々)や、白い花を持って非暴力を訴えるデモが行われるなど、本当にすごい。


また重ねて、偶然にも同じ日の夕飯のお供にNHKの100de名著のスヴェトラーナ・アレクシェービッチの『戦争は女の顔をしていない』の回を見たことがあいまって、ロシアのベラルーシの戦う女性たちの姿がいきいきと自分の中で立ち上がってきた。

例えば戦場でもっとも嬉しかったことの一つは、女ものの下着がもらえたことだそうだ。そんな小さなエピソードが実は何人死んだとか、そういった統計よりも戦争の悲惨さを伝えている。

100de名著でも紹介されていた小さなエピソードで、それが『同志少女よ〜』の方にも一行だけど登場していたので、ぐっっと来た。

ネタバレになっちゃうけど、『同志少女よ〜』の最後は生き残った少女が歳をとり、そこにアレクシェービッチがインタビューに来るところまで描かれている。つまり現実とつながっている。

ちなみに『戦争は〜』はコミック版が話題になったんだそう。こちらで一部無料で読めるようですので、興味を持った方はぜひ。

私もアレクシェービッチの本、買ってみようかな。今、積読がひどいので、ちょっと保留。でもここにメモっておきます。これは死ぬまでに読まないといけない一冊だと思う。また読んだことがある方はぜひ感想を教えてください。

それにしても世界はひどい場所だと思う。みんなが幸せになりたがっているのに、なぜ? でも一人一人がこうやって思考を深めていければ、きっと平和な世界が訪れるよね。

ウクライナ国境がきな臭いけど… きっと大丈夫なことを願って。