西村賢太「どうで死ぬ身の一踊り」を読みました。なるほど、すごいや、これは…。


西村賢太って実ははじめて読んだ。ほんとフィクションを読まないわたくす…『苦役列車』は映画見たけど、こちらもすごい。

本…すごかった。すごい世界で圧倒された。これが私小説ってやつなのか。いやー すごいね。

フィクションというか、でも私小説だからノン・フィクションとも言えるよね。でも自分のことこんなに書けるとしたら… 本当にすごいよなぁ。

西村さんのファンって男性が多いんだって。なんかわかるような気がするわ。女子供が読んじゃいけない本なのかもしれない。

実はkindleの積読本の一番上にあったので、先日ワクチン副反応で寝込んだ時に読んでみた。というか、実は熱で本を読むのもしんどくて、kindleの読み上げ機能で読んでもらおうと思い、kindleあけたら、これが一番上にあったのだった。だからkindleに読んでもらった。

なので機械の抑揚のない女性音声でずっと聴いていたから、印象がまた文字で読んだ時と違うかもしれない。が、すごい世界だった。

「墓前生活」と「どうで死ぬ身の一踊り」と「一夜」の三編が収められている。kindleに読ませていたら1日もかからなかったので、文庫本だとしてもひどく薄いものかもしれない。

この主人公ほんとどうしようもないんだよなー 暴力DV男の典型で、結果ももう目に目に見えている。

自分の趣味のなんちゃらとかいう作家にこだわり(女の私には、男性特有のこういうマニアックなこだわりみたいなものがまったく理解できない)、パートナーのことを「女」呼ばわりし、暴力暴言、借金、もろもろ本当に最低だ。

時々見せる優しさもデパ地下でカニを買ったり、まったくもってバランスを欠いている。バカもいいところ。だがしかし…

この人には文学の神様がついてるよー
文学の神様はこういうダメ人間に微笑むんだだよなぁ!! 音楽の神様もそうだから、困っちゃうんだけどさ!!

とにかく迫力の文章で、圧倒された。

とはいえ、こんなのばっか読んでたら、頭おかしくなりそうなので、この一冊くらいにとどめておこうかとも思おう。そのくらいパワフルです。いろんな意味で。

また反対に絶対に死ぬまでに一度は読んでおきたい作家さんだとも思いました。これ、読まないで死ぬのはちょっと人生もったいないです。

西村さん、最近、突然亡くなられたそうで(私より若い…)本当に残念。50代になってやっと「真剣に生きるようになった」「小説以外に興味は何もないと自覚したとき、他の一切が無駄に思えた」とかお話ししてらしたのに。(そのインタビュー記事はこちら

しかも赤羽からのタクシーの中でなくなったと聞き、もしかしたら近くですれ違ったこともあったかも…などとも思う。赤羽はすごい場所だ。

先日の石原慎太郎の追悼文は、ほんとに素晴らしかった。石原慎太郎、私は大嫌いだし、本は一冊も読んでいない。あの人は寂しい人だったんだと思う。作家としてもっと認められたかったんじゃないかな。その寂しさが暴力的な政治家に彼を作り上げてしまったようにも思える。

西村さんの追悼文は亡くなった本人が一番喜びそうな気がする。まぁ、でも追悼文って、そうあるべきものかもね。

映画の「苦役列車」すごくよかったし、本でも読んでみようかな。他に西村さんの作品、読んだことのある人、おすすめがあれば教えてください。(一冊でやめとこうと言ってたくせに、>自分!?)

しかし具合悪い時に読む作家じゃなかったかも。熱が二度くらいあがったかも(笑)