伊集院光『名著の話 僕とカフカのひきこもり』を読みました


NHKの100分de名著が面白いとTwitterでつぶやいていたせいか広告がタイムラインに流れてきて、その流れでぽちり。番組以上に面白い本でした。おすすめ。

100分de名著は好きな番組だ。だいたいは配信やオンデマンドで見るんだけど、数々の名前だけ、タイトルだけは知っている名著を、その筋の先生が登場して、それらの本を読んでいない伊集院さんや私たちに指南役として登場してくれる。

伊集院さんはあえて本を読まずにのぞむのだそうだ。そして番組収録のあと興味がわいた本を実際に読む。そんなふうにして「読後」の伊集院さんと先生方の、名著にまつわる対談集。これが第1弾。

番組が良いは、伊集院さんが自分の無知を隠さず、さらけ出しているということもあげられると思うのだけど、先生がたも魅力的なんだよね。

もちろんその筋では超有名な方々なのだろうが、ほとんどの先生が自分の好きな本を語る時は、めちゃくちゃキラキラしてしまうという…その感じがいいのだ。伊集院さんの視点に素直に驚き、感心し、そしてめっちゃ嬉しそうに語ってしまう。

やばいよなぁ(笑)

実はこの本で取り上げられている、この3冊の名著。私は読んだことがありません。

カフカの『変身』柳田国男『遠野物語』神谷美津子『生きがいについて』

それでもカフカと柳田国男は、かろうじて、その存在は知ってた。またそれぞれがどんなの本なのかも、なんとなく知っていた。ただちゃんと読んだことは今でもない。

一方で神谷美津子については何一つ知らなかった。

というわけで、この本を読む前にまずはそれぞれが紹介された100分de名著の番組を見る。

(それにしても番組の公式サイトはめちゃくちゃ検索がしにくい。いつ放送されたか、ページによっては年度も書いてないし、ここからまっすぐにNHK オンデマンドや配信サイトに誘導してもらえないもんかと思う)

そして、番組を見終わったあとに、そのあとに本を読む(笑)。

この本では、名著の数々にまつわる話はもちろんだけど、伊集院さんが話してくれる、子供のころの細かいエピソードも興味深かった。著名人の子供のころの話って、おもしろい。

確かに伊集院さんもそうだけど、親と連絡をとっていない著名人の方、結構多いよね。たしかマツコさんもそうじゃなかったっけか。私も親とは仲良しとは言えないので、気持ちはわかるんだ。普通程度に連絡はしているし感謝はしてるけど、距離を取った方が人間関係が良いのだわ。

私も子供の頃はもう実家から、もう一刻も早く飛び出したかったパターン(笑)。

そして、そんな伊集院さんとともにこれらの名著について知りたいと思い、この本を読みすすめれば、思い出すのは角幡さんの名言「人は本の中に自分を見つける」ということ。

確かに、どこの名著にも、こんなふうに自分との共通点を見つければ、不思議と惹かれていく。

それにしても、子供のころ(高校時代をのぞく)はよく本を読んでたよなぁ。実は子供の頃からなぜか文字を見ながらでないと食事ができなかった私は、食卓でも好きな本を広げて読んでいた。それでよく親に怒られていた。一人で食べるとき、文字がないと食べれないのは、今でも一緒だ。

リアルな本、モーニングなどの漫画雑誌、ラーメン屋でのスポーツ紙や週刊誌など、文字はわたしの最高の友達だ。今はパソコン机で見るネット上の記事が食事の友。

よくわたしが家での食べ物の写真をTwitterにアップすると、いつもキーボードが写り込んでいるので、笑われるが、うちにもダイニング・エリアがないわけではないのだ。だが、どうしてもパソコンの前で食べてWeb記事を広げてしまう。

(パソコン前はそんなわけで消毒液が欠かせない。きっとバイキンとかウヨウヨ繁殖してそうだ。また外で一人でご飯を食べるの時はiPadが必要だ。寿司屋をのぞき、やっぱり読みながら食べちゃう)

子供の頃に話をもどせば、なぜか高校に進むと、新しい本はまったく読まなくなった。自分の好きな本ばかり何度も読み返してしまう。

高校時代はわたしの人生の中でもっともおもしろくなかった時代で、学校の先生たちが大嫌いで、勉強が大嫌いだった。

そんなふうに人生に辟易してたときに好きなのは音楽の方だったかも。洋楽を聴き始めたのもこのころだったかもしれない。

現役で入れた唯一の大学に進み、大学2年の夏、19歳にして初めて海外(イギリス)に行くということを経験した。そこでわたしの人生は、180度回転し、そこから英文学をたくさん読んだ。ブロンテ、オースティン、ディケンズ… シェイクスピアは何がすごいのかさっぱりだった。

そしてキリスト教とは何かを知るために遠藤周作の「沈黙」を何度も読み(でも「沈黙」を初めて読んだのは高校の教科書だったと思う)、人気が出始めていたイシグロにも夢中になった。いや、ほんとにイシグロを理解していたかは怪しい。

でも友達がみんな村上春樹に夢中だったから、わたしはなんとなく天邪鬼な気持ちでいただけかもしれない。

…みたいな感じだから、本来「高校生」の時に読まねばならぬいわゆる名著はずぼっと抜けているのだ。トルストイ、ヘミングウェイ、ドストエフスキーとか。いわゆる「読んでおかねばならぬ名著」。

あ、夏目漱石や谷崎潤一郎は入院中にkindleで初めて読んだが、あまり面白いと思わなかったな。

というわけで、ムラのある読書人生なのだわ…。

伊集院さんが自分を発見したというこれらの本、3冊を、56歳になった今、初めて読んでみようと思う。順番としては逆も甚だしいが、今なら私も自分自身をこれらの名著の中に見つけられるかもしれない。

それにしてもこの本、いい企画だよなぁ、これ。このままシリーズ化しないかしら。

番装丁も可愛く、文字の感じや行間もちょうどよくてあっという間に読める。100分で読めるんじゃないかな… さすが角川ぬかりない。実際、売れそうだ。

番組ファンなら買って間違いない。