ケルト市、もう何回やっただろう。数えていないが、自分で主催(ファイナンスやお客さんを集めることに責任を持つ立場)をするのは、多分4、5度目くらいだと思う。ケルティック・クリスマスなどに便乗したやつも入れたら、かなりの回数になると思う。
人のイベントに便乗すれば、動員をかけなくていいので楽だけど、イベントをやる人間としては、常に自分でお客さんを集めることを自分に課さないとダメだと思う。(あ、また「べき」みたいな発言しちゃった)
でも、それがイベントを作るプロデューサーとしての「筋力」になる。これって、筋トレみたいな能力で、運動していないと「筋力」はあっという間に落ちてしまう。
イベントをやる人間は常にイベントを自分で主催していないと、あっという間に集客力は落ちてしまう。
そして、イベントには常に新しい人を入れていかないと、あっという間に縮小する。人間はあきっぽいし、オタクは熱心だが、私がやっている分野では、絶対数がとても少ないからだ(笑)。
いつだったか某料理屋さんへ他のイベンターさんとご飯を食べに行った時、この店主さんが北欧伝統音楽の大ファンで「これを呼んでくれたらチケット買う人、自分の他に二人知ってます!」と熱弁していたのだが、それを聞いてイベンターさんは爆笑していた。
いや、二人とも悪気はない。でも本当に3枚しか売れなかったら、公演はできないんですよ…
日本は自民党に投票する人が多いことでもわかるようにマイルド・ヤンキーが社会を作っている。「世界が土曜の夜の夢なら」は素晴らしい本だが、あれに書かれているヤンキータイプの人が人口の中のマジョリティーなのだ。
あのタイプをたくさん集めないと、イベントはあっという間に縮小してしまう。
オタクの人は少数で、かつ審美眼も本当に厳しく、もうケルト市で並んでいるものなどには目もくれないしお財布を開いてくれない。一方で、新しい人は、物やもう売れないと言われているCD、本も買ってくれる。
CDや本が売れないのは、売る側が新しいファンを開拓することをサボっていたからじゃないかと思う(これについては、思うこともいっぱいあるので、またいつかここに書く)
もちろんイベントをひらけば、間違いなくやってきてくれるオタクの皆さんには感謝だ。ここが崩れるとうちのイベント自体、まったく成り立たなくなる。
一方で、出展者をこれだけ集めたはいいが、人が来なかったり、物が売れなかったりしたら、私のプロデューサーとして面目は丸潰れだ。っていうか、めちゃくちゃカッコ悪い。だからとにかく頑張るしかない。
うちの近所のココキタは廃校になった学校を修復した良い施設だが、普段は地元の子供たちの遊びの場となっていて、スタジオにはダンスやバンドをやる子供たちがたむろしていることが多い。
もちろんそれがこういった施設の最初の一歩の目的なので、それは良いことだと思う。また北区在住の名人に伝統技能を学ぶ子ども向けのコースなども開催されていたりする。それは施設としてはとても充実している。
加えてここには最近流行りの指定管理業者も入ってない。
というわけで、どうなのかな…と思いつつ、ケルト市の企画を施設の方に提案してみたら、企画書が通ったのだった。
私が自分が住んでいるこの北区・足立のエリアにポテンシャルを感じるのは、ここには人がたくさん住んでいるからだ。
人口が少ない絶望感は、例えばグリーンランドに行ったことがある者ならわかると思う。英国の田舎で1時間に2本しかないバスを待っていた時も、それを強く感じた。
人がたくさんいるだけで、実はすごいことなのだ。それ自体がすでに希望なのだ。
ココキタの周辺はとにかく人がたくさん住んでいる。大型のマンションや団地がぼんぼん立ち並び、その割にいわゆる「お店屋さん」が極端に少ないのがこのエリアの特徴だ。この、ある意味、交通の便がものすごく悪いこのエリアに住む、地元の人たちを集められないだろうか。
そういうこともあって、新しいケルト文化ファン獲得のため、近所のポスティングを始めてみた。ポスティングのバイトとかする学生さん、多いかもしれないけど、私にとっては、56歳にして初めてのポスティング・バイト・デビューだ。雇い主は自分自身(笑)
で、これが、なかなかおもしろいのだった。
ポスティングをしていると小学生や買い物帰りのお母さんたちにジロジロ見られる。それもなかなかの気分だ。郵便局のおじさんと並行に並びながら作業をしたことも。またチラシを取り出しじっとながめているおばちゃんがいたので話しかけてみたり…とか(笑)
そのおばちゃんはそれでもそのチラシをチラシごみ専用のカゴの中にぽいと捨ててしまった。くぅっっ!(笑)
一方で、この仕事をしていると、例えば港区にある気取ったバーやホテルに白人男性を複数を引き連れて入れば、ドアマンも私にヘコヘコするんだから世の中って本当にちょろい。
この両方を楽しめるようにならないと人間としてダメだと思う。
メアリー・ブラックがかつてロイヤル・アルバートホール公演の翌日に脚立にのぼって窓掃除していたら近所の人に爆笑されたとテレビで言っていたけど、この「まともな感覚」を失うと人間はバランスを失う…って大袈裟か。
が、何度も書くが56歳にして初めてやったポスティングはとても面白かった。
ポストに自分でシールを貼り「チラシはいっさいお断り」(こういう既成品のシールはどこで購入するんだろうか?)とか、「入れたら着払いで送りかえします」っていうメモが貼られたポストもあった。すごいな。
そんなに嫌ってたらデリバリーピザのメニューももらえないじゃないの、と私なんぞは思うのだが。
うちの近所はUR(昔の公団住宅)が多く、ブランド・マンションも何件があるのだが、ブランド・マンションはポスティングのハードルが高い。巨大な郵便受けの入り口に「チラシを入れてるのをみたら即座に通報」なんて掲示もあり、そこは、さすがの私もすごすご引き下がった。
が、そういうマンションの一つであるうちのマンションにも維新のチラシとかは本当によく入っている。あれはどういうわけなんだろう。ほんとに保守系の人たちはマメで根性がある。それを見習わないといけない。だって「世界は土曜の夜の夢」なのだから(笑)
ポスティングしながら、この一件一件に人が住んでいるんだなと思ったら、そのすごさに震える。100枚ポスティングした中の1家族が来てくれたらそれは合格だ。基本無料イベントだから、その可能性は高いと思っている。
調べたら、うちの近所の巨大団地群は5,000世帯、約1万人が住んでいるそうである。それなのにあの寂れたシャッター街の商店街はいったいどうしたことなのかと思う。
あと足立区新田の掲示板を発見し、そこにも貼ってもらった。少年野球団やヨガのコースの会員募集の掲示ととも張り出してもらう。これは効果があるかも。
とにかくご近所さん、カモン!! 天気さえよければ、近所だしたくさん来てくれるんじゃないかという予感もしている。どうかな…
今回フリーマーケット制を導入してみたのだが、出店者の傾向もよーくわかった。
毎回ケルト市は「手伝いますよ」という人があまりに多いから「そうか、みんな作る側に回りたいんだな」と思って今回はフリー・マーケット制にしてみたのだけど、どうやらポイントはそこじゃなかったようだ。
こういうことも一度やってみないと本当にわからない。明確にわかったことがあるけど、それはここには書かない、次回のための企業秘密(笑)。
しかし、ワークショップをたくさん受けてくれる方には感謝だ。こういった方がお金を落としてくれるから、うちのイベントは支えられている。大したギャランティも払えないのにこのイベントに協力してくださる講師陣の皆さんにも感謝。
講師のラインアップも超豪華。その筋の一番の方がそろった。
というわけで、ケルト市。終わったあとに「行けばよかった」とか言わないように(笑)。あと「関西でもやってください」とか言わないように。関西でもできるのなら、私がとっくに実現させてます。私が一番やりたいと思っているのです。それは間違いない(笑)
というか、私はあと4年で引退予定だし、そもそも私がやめたくなくても疫病、戦争でやれなくなる時は必ず来る。
今日と同じ明日が来るなんて、誰が保障してくれるんでしょうか。これが最後のケルト市かもと思って、皆さんのご参加をお待ちしております。