本のレビューがたまっているので、次々行きます。
本が出たのは1982年とある。だからもしかしたらそんなに前の話ではないのかもしれない。いや、今でもこういう話は日本のそこここにあるのかもしれない。感想文に江戸時代だと書いている人、多数。うむむ、そうなのかな。私はそこを読み逃したのかな…
とにかく、ものすごい作品だった。なんというか、貧乏の実感。食べられなくなるのではという恐怖。その描写がものすごい。
身売りされていく父(若い女性ばかりではなく働き手も労働力として、大きな村や街へ売られていく)、必死で家庭を守ろうとする母。そして健気な主人公。弟、死んでいった妹たち。
でもなんか決してウェットな感じではないから、読んでいて辛いというか、そう言う感覚はなかった。単に「すごい」。
映画化されてもおかしくないとコメントされていたけど、まさに。いや、今からでも誰か映画化しないかな。
すごい話だった。
自分の力で稼げない、ただただ利用されていくしかない貧しい人々。つらい、ほんとうにつらすぎる。最後、病気から生還した人たちが捨てられていく様は、なんか既視感があった。なんだろう。
お船様とは、たとえば原発のことを言っているのかもしれない。私は少なくともそう読んだ。間違っているかもしれないけれど。
でも、じゃあ何かがおかしい、何かが間違っているとしても、そこから抜け出す力が自分にあるんだろうか。
人生諦めるしかないんだろうか。
下記は出版社のプレスリリースより。
『破船』の舞台は、北の日本海に面した、戸数17戸の寒村。村の耕作地には乏しい作物しか育たず村人は常に飢えていた、主人公の9歳の少年・伊作は、年季奉公で不在の父にかわって一家を支えなければならない。彼は浜辺で働き、「塩焼き」に出る。この「塩焼き」とは、単に塩を作るだけではなく、もう一つの役割として、夜に塩を焼く明かりで船を引き寄せ、船を岩礁で難破させ、船の積荷を奪う手段になっていた。村の生活は潤うが、それは村ぐるみの犯罪でもあった。この船の到来を願う祭りごとが「お船様」である。
今回は大量の米を積んだ船が「お船様」として破船し、船にいた4人の男女は殺され、伊作の家にも8俵の米が分配された。翌年、再び「お船様」が村に到来する。しかし今度の「お船様」には積荷はほとんどなく、中の者たちはすべて死に絶えていた。骸が着ていた揃いの赤い服を村民たちは分配する。しかし、しばらくすると、村人たち次々と病に倒れ死んでいくというおそろしい事態に。「お船様」に乗った人々は、天然痘に冒され、他村から追放された者たちだったのだ……。
僻地の貧しい漁村に伝わる、サバイバルのための風習「お船様」。難破船が招いた、悪夢のような災厄を描いた、吉村作品の中でも異色の長編小説です。
すごいな…。すごい世界だ。とにかくスルスル読めてしまうので、おすすめ。そしてあまりにパワフルで、ここではないどこかにポーンと飛ばしてくれる、そういう読書体験でした。
本当に怖い、貧乏は怖い。無意味に労働の対価ではなく得られる物は怖い。本当に怖い。
汗握り読み進め、最後はすこーーーーんと脱力。そんな感じ。
日本貧しかったんだなぁ、って思った。っていうか、今でもこういう人たちはいるのかもしれない。本当にすごいなぁ…