いやー 読んじゃった。まさに「文明の『理数系史観』」。ちょっと読み違えると変な方向に行っちゃいそうなことが書いてあって、これでいいのかなと疑いたくなるくらい。すごい本だった。世界が全く違って見える。
決して読みやすい本ではない。著者は在野の学者、長沼伸一郎さん。
私はバカすぎて学校とかに学会に所属するのは無理だから、在野の学者!! 毎日畑耕しながら、日長一日ずっと思考研究を続ける。いいなぁ、それ。いいよー。で、たまにブログを書く。そういう生活をしてみたい。
…ということはさておき、なんというかこの本を読んでいると、視点を変えただけで、こんなにも世界が違ってみえるのかと驚愕なのであった。
よーく考えてみれば、よーく考えると、すべての視点を大きく…!!大きく、大きく広げて科学的に考えると、こういうところに落ち着くのか?とか。
でもこの本を読むと本当の敵はロシアでもなく中国でもないのもよくわかる。そしてここから想像できる未来の人類は、いつだったか『百億の昼と千億の夜』で描かれた、A級市民と一緒だ。
人間は意識だけが存在し、パイプにつながれて、ひたすら気持ち良いまま死んでいく。そういう存在になるのではないだろうか。
冗談ではない。でも、今、世界が向かっているのは、そっちだ。まるでSFだけど、この長妻先生に言われると、なんだか本当にそうなるような気がしてきた。いや、まじでそうなる可能性が高い。やばすぎるだろ!
ルソーの言う一般意志など、煩悩だらけの人間には所詮無理だった。今の人間を見ていればわかるじゃないか。いつまでたっても戦争は終わらない。貧しい人たちはさらに貧しくなり、金持ちはさらに金持ちになる。
人間を支配しているのは「一般意志」ではなく短絡的願望をひたすら求め、それを増幅させる「全体意志」。
多様性? そんなものは表面的なものにすぎない。それよりも、もっと大きなもっと怖い何かが世界を支配しているのに、あなたは気づいていないかい?
なんかふと周りを見回せば、多様性多様性と言いながら、世界はみんなどこも似たような街になっていないかい? 世界中どこへいっても同じ行動洋式、同じ価値観。それを実感しないか?
行き着く先は「快楽カプセル」つまり『100億の昼と1000億の夜』で描かれた、A級市民の生活。まさにそれはディストピア…
「将来の人類社会はあまりにも単一の制度・風習に固着して、全く動かなくなってしまうのではないか」
「そして社会の全てが目の前の安楽を求めるためだけに使われて、そこから長期的に抜け出すための全ての力が人類社会のなかから消滅していく。そのとき社会は絶えず動いていながらも少しも全身せず、人類は永久にそこに屈従を続けるのである」(by トクヴィル)
現代世界でもっともおそれられるべき権力は独裁者などによる人格的な権力ではない。
むしそそれは人間の短期的願望を極大化する方向に社会を動かそうとする「縮退力」という非人格的力で、資本主義が富を生み出すメカニズムと不可分に結びついたこの力が、表面的には民主制度を維持しながら、実質的には根本部分で世界を不可逆的に一個に統合していく…と長妻さんは解く。
そしてこれが現代世界の「形のない皇帝」である。GAFAなどはこの帝国にもっとも忠実な勢力なのだそうだ。
あと面白かったのは、実は世界史を大きく見れば、米ソ冷戦は実は第3次世界大戦と言ってもいいもので、今、我々は準4次世界対戦のまっただ中にいる、というもの。
そこにおいて世界はアメリカと中国が巨大な力として一応は存在するものの、巨大なグローバリゼーションという力がからんだはるかにスケールの大きなものになるだろう、ということ。
いやー なんかこういうこと考え出すと、日本の政治家たちや検察権力などにイライラするのも馬鹿らしくなってきた… と、それではいけないわけなのだけど…
でも、本当になんとか、なんとかどうにかして、この「形のない皇帝」にあらがっていきたいよなぁと思ったりするのであった。今は、そう、まさに準4次世界対戦のまっただ中にいる。私たちはこの「形のない闇の皇帝」の独裁下にいる。
この本読んでると、もしかしたらウクライナに侵攻しているロシアを止めることができるのは中国かも…と思ったりする。なんか仕事辞めて、日長一日ずっとこういうことを考えていたい。やっぱり目指すは在野の学者だな…
あ、違った。もう黙って仕事します(爆)
今日はポーランドの音楽ミッションの人たちのイベント、そしてめっちゃ興味深いレコーディングに立ち合いなのだ。楽しみ!