入院していたのは1週間くらいだったけど、私は病院の大部屋に入るのが好きである。というのも、いろんな人の生態が見られるからだ。
普段は自分でもあきれるくらい自分の自由を謳歌している私にとっては、新しく体験できる「普通の人々の生活」は、本当に貴重な体験。自分がいかに恵まれているかを感じる場でもある。(しかしこの私のものすごい自己肯定感っていったいどっから来てるのだろう。それはさておき…)
ところが今回は残念ながらパンデミックの影響で、病院にお見舞いは一才禁止。今回「他の家族の会話」を聞くことはほんとどなかったけど、今回も個性的な患者さんたちに出会えてなかなかの体験だった。
私はといえば入院中は、あれこれ考えるまでもなく、とにかく「今、私は外国に来ているんだ」と思うことにした。そこは日本食に近い、世にもまずいご飯が支給される場所。(作ってくれてる栄養士の皆さん、ごめんなさい)そう思えば、なんか楽しくなってくるぜ!
そして普段はたった一人で寝るけれど、入院中は大部屋で、いろんな人の様子が感じられるのも、なかなか興味深い。
ぺちゃぺちゃよくしゃべるおばちゃんもいた。私は「話しかけないでください」オーラを出しているので、あまり隣の人としゃべることはしない。でもそのおばちゃんは看護師さんとよく話をしていた。
抗癌の点滴を受けに定期的にきているのらしく看護師さんひとりひとりともえらい仲良しで、いわゆるプロ患者。薬のことなども詳しい。
1日だけ他の元気なよくしゃべる患者さんも入院してきて、そのプロ患者さんとよくしゃべっていたので、これはこれでおばちゃんの会話を盗み聞きし面白かった。
おばちゃんとは意味のない会話を延々を続けていられるすごい生き物である。
そのおばちゃんが入ってくる前、最初の2晩くらいだったか、私の前に手術した患者さんは、大変つらそうで、最初の2晩は、その彼女と4人部屋で二人だけだったのだが、これがこちらも本当に心配になってしまうほどだった。
とにかく痛くて辛くてうんうん唸っているような状態。高齢(と思われたけど、私と同じくらいだったかもしれない)の女性は、確かに本当に辛そうで、私の担当の看護婦さんがこっそり「野崎さん、同室の方を見ていて自分の手術が怖くなっちゃうかもだけど、大丈夫だからね。こういうのは個人差あるから」なんてわざわざ声をかけてくれたほどだ。
私も彼女がうなりだすと「自分が代わりにナースコール押してあげたほうがいいかしら」と思いながら、私も耳をそばだてていた。
病院の看護師さんたちはみんなものすごく親切だ。それでも数日たって、このおばちゃんが多少ご飯を食べられるようになった時も「アイスクリーム買ってきてあげるよ、なんにする?」「ハーゲンダッツとかの方がカロリー取れるからいいのよ」「でもさっぱりしたのじゃないと無理なら、これとか、あれとか…」
手術後の患者をいち早く点滴というマジックから解放し社会に戻すのが病院の役目だ。ご飯なんぞ食べなくても点滴さえ入れれば人間は生きていられるのだ。
が、点滴をいつまでもしているようじゃ、外には出られない。栄養点滴をご飯に、炒め止め点滴をタブレットに… そうしてみんな普通の「日本国」へ帰っていく。
アイスクリームは、患者さんは自分のお財布からお金を渡し、看護師さんかヘルパーさんに買ってきてもらうわけなのだけど、こういういったことは下手するとトラブルの火元にもなりうる。
お財布まで自分で到達できない患者もいるし、ルールでもしいて「できません」と却下してしまえれば病院も楽だろう。でもそこをなんとか看護師さんたちはさぐりながら日々の業務にあたっている。
私も「ランチに外に行くから帰りにコンビニで買ってきてあげるよ」という優しい看護師さんにあまえ、ハーゲンダッツのバニラを買ってきてもらった。あれは最高に美味しかったなぁ。
看護師さん、ほんと涙でる。天使だ。
でも目の前に大変そうな人を助けるのは、極めて自然なことじゃないのか? 今回の入管でも目の前にいる200人の子供たちとかさ、それさ、今すぐに法務大臣特権でもその人たち救えるでしょ? なんでやらないの?
看護師さんたちが親切であればあるほど、私はウィシュマさんの最後の映像が思い出された。あそこにいる人間と、看護師さんと、私と何の違いがあるんだろう。
人間が幸せを感じる時、それは他の人を助けた時だ。あの状況を放置している人は、夜きちんと眠れているんだろうか。HOW DO YOU SLEEP?
人を助けている人、人の役に立っている人は、普段幸福度がとても高いと言う。だから他人を助けない日本人の幸福度はとても低い。そういう原因は、こういうところにあるんじゃないかと思う。
こういう日本だから、いつまでたっても死刑があり、LGBTQ問題に向き合わず、なあなあできちゃっていて、外圧がなければ何の問題も自分で解決できない。忖度ばかりしていたら、中身がすっからかんの男が7年半(あれ、8年だっけ?)が総理大臣をつとめてしまった。こんな世の中じゃ子供作る気になれないのも当然だよと思う。
猿以下だ、おめーらっっ! この動画でも見なさい。
「想像力の限界を超えて」入管の壁の向こうへ、アクリル板の向こうへ|七尾旅人
— 七尾旅人 (@tavito_net) May 11, 2023
昨日、角膜がもういちどぶっ壊れてもいいやという覚悟で想いを込めて書きました。
入管法改悪の強行採決まで時間がなく、少し長めの文章ですが、ぜひご一読頂けたら。#入管法改悪反対https://t.co/kKOWHtuMn6