映画『怪物』を見ました。なるほどこれはすごい作品




面白かったし、すごい作品だなと思った。

一つの物語を3つの視点から描いている。最初は母親の視点、次が教師の視点、そして子どもたちの視線。

子どもの世界がピュアで一番正しいとは言わない。でもなんか最後はいろんな気持ちが昇華されていくのを感じた。

圧巻なのは校長役の田中裕子。出番が多いわけでもないしセリフも少ないのに、すごい存在感。安藤サクラはもちろん素晴らしく、1部で見ている時は彼女が「唯一のまともな大人」で、であるならば安藤サクラと田中裕子の女優対決?と思う人も多いかもだけど、ある意味全然対決するしていない。

が、とにかくこの二人は二重丸。すごい存在感だった。

いや、俳優陣、みんなすごいな。男の子二人もものすごく良い。この年頃って確かに難しいかも。小学校5年生の世界。自分の中から湧き出てくるものに戸惑い、周りにも戸惑い、まったく。

坂本龍一さんの音楽が素晴らしく、彼のやった劇版の中で一番好きだった。控えめな、でも印象的なピアノが多かった。

監督は我らが是枝監督。だから子どもが遊んでいるシーンは最高だ。廃車になった電車を秘密基地にするなど、めちゃくちゃイカしてる。二人で嬉しそうに走っていくシーンや、雨があがったシーンなど、いちいち感動した。

そして脚本は「東京ラブストーリー」「花束みたいな恋をした」の坂元裕二さん。すみません、よく知らないけど、さすがの脚本で、普段、是枝作品でまったりする時間があるのと違い、なんかスリリングで長さを感じない良い脚本だった。これはこれでプロの仕事。脚本ってやっぱりプロっているよなぁ。

3部にしたのも、プロデューサーたちが坂元さんの書くテレビの連続ドラマみたいな効果を狙ったのだそう。なるほどー。

是枝監督は実は自分の作品で脚本にちょっと迷いが出たところだったので、この映画の話が来た時は飛びついたそうだ。

自分の脚本だと撮影中にセリフを変えたりする監督だけど、なんと今回はほとんどまんま、というか坂元さんが長すぎると削ったセリフも復活させたり、二人して転校生風の遠慮合戦になったっぽいのだが、それも良い結果としてこの作品に着地したのではないかという。

あ、そうそう、子どもの演出についても、今回はセリフは当日ではなく、二人が希望したので台本を事前に渡したとも言ってた。うん、やっぱりあの男の子二人が最高だね。

それにしても、すごい。脚本がやっぱりすごいのかな。何がなんなのかわからないのに、ぐっと引き込まれ、全く飽きなかった。

パンフレットを990円で購入。写真集みたいな感じで、すごくいいパンフ。かつエンドクレジットが小さいけど転載されている。これは嬉しい。パンフを買うのは情報をさらにほしいからであって、いつも目を皿のようにクレジットを見ているのは疲れる。これなら顕微鏡でゆっくりあとから確認できる。映画のすべてのパンフでやってほしい。

まだまだ絶賛上映中。ぜひみなさんもご覧ください。