すごいもん観た。『WOMEN TALKING』。こちらが公式サイト。
なんとこれが実話に基づいており、その実話が2,000年時代の話だというから驚きだ。
保守的なコミュニティ。どうやら宗教がベースになったアーミッシュみたいな自然派コミュニティらしい。自給自足で暮らす人々。
この保守コミュニティでは女たちはまるで奴隷のような存在だ。少女のうちから薬を飲まされ(どうやら家畜のための睡眠薬的なものらしい)、夜中に無意識のうちにレイプされているらしい。
不思議がる子供たちを母親たちは抱きしめるしかない。被害は3歳の子供から65歳の老人にまで及んでいたというから驚きだ。
ある日、その薬物が効かなかった少女が告発したことで男性が警察に逮捕されたことがきっかけで運命が周り始める。その彼らの保釈金確保のため村の男たちは、学校の先生一人を残し、この小さなコミュニティ村を2日間留守にすることになった。
この男たち不在の2日間の間に、女たちは自分たちの未来について話し合うことになった。
村ではこの残った先生だけが唯一、大学に行くためにこのコミュニティから出たことがあるらしく教養があり、女たちに対しても優しい存在だ。が、その先生が教えているのも、男の子たちのみ。女性は教育を受けられず、文字も書けない。
そしてこの先生役がベン・ウィショーなのだから素敵じゃないわけがない。優しい男を演じたら世界一!(笑)
失礼。シリアスな内容の映画なのに横道にそれた。女たちのこの2日間の会議に映画はフォーカスする。ほとんどが大きな納屋での女たちの会話で進行していく映画だが、いやー、圧巻。
特にフランシス・マクドーマンド。そりゃあ彼女が出てる映画で悪い作品はないわな…。彼女はこの映画のプロデュースにも係っている。
若い女性の役の中では、ルーニー・マーラーが光ってるのよ!! 彼女って『キャロル』のころからいいと思ってたけど、いやーーー いいよねぇ。静かなんだけど主張があるというか。そういう役がぴったりなのだ。
とにかくものすごい存在感の女優たち。そんな女たちの女優対決!!みたいなすごい迫力の会話… 議題はこのコミュニティから「止まって戦うか」か、「戦う」か、「逃げ出す」か…
でも彼女たちの真剣な会話の中にもちょっとした笑いを誘うセリフがあったり、あまりにもお互いが真剣すぎて自分で自分たちがおかしく思えて吹き出したり…。女同士って、なんかいい。緊張感がある中にも、ちょっとゆるむ瞬間があり、それがリアルだ。
とにかくリミットは男たちが不在の2日間のみ。そして女たちが残した結論は…? いやどんな未来を選んだとしても、彼女たちの未来が明るいわけではない。外の世界は、彼女たちが考えているほど良い場所ではない。
実際、彼女たちの会話の中に、今の私たちの、一見フェアで開かれていると考えられている世界における矛盾が垣間見れる。
この超保守的なコミュニティの内側と今私たちの生きている世界と、いったいどんな違いがあるというのか。
変えようと思っても男たちは変われない。男性の中のヒエラルキーもあり上のものが下のものへ「やれ」とけしかける、などなど。外の世界のことはまったくわからないから、リスクを冒して出ていくこともとても怖い…
時々彼女たちのそんなセリフにドキッとさせられながらも映画はあっという間に終わってしまった。(2時間切る映画、大好き! 最近の映画は長すぎるんだわ、もー)
あ、そうそう、映画の中で女たちはものすごく古めかしいながらも、素敵なワンピースみたいな服を着ている。藍色ベースが多いんだけど、これが映画衣装として見るのであれば結構素敵。ちょっと前のローラ・アシュレイみたいな。小花模様。
そしてシューティングのカメラがいいのか、特に納屋の外の景色がすごいのだ。迫力のカメラワークとアングル。そして、まぁ、最近はいかにもドローン使ってるって映像が多いんだけど(最近じゃ安予算のドキュメンタリーでもドローンあるよね!)、圧巻の景色がこれまた良い。
そうそう、この映画のベースになった実話の話。結局のところ実態は今でも明らかに解明されていないらしい。女性たちは文字が書けず、記憶もあいまいだから。でもこの納屋での会議は学校の先生が議事録をつけたおかげである程度記録になったらしい。
とにかくたくさんの人に見てもらいたい素晴らしい作品でした。東京ではシャンテ・シネ他で上映中。