なるほど重厚な映画だった。最近友人の若めの男子が見に行き「???」だったようだけど、そういった感想も理解できる気がした。確かに簡単な映画ではない。
主人公がなんとなくフレディー・マーキュリーにちょっと似てた。かつ歴代ボーイフレンドの中にはジョン・テイラー(デュラン・デュラン)風の子もいて、その子が繊細な感じで可愛いんだ。なんかグッと来ちゃう。
第二次世界大戦直後のドイツ。強制収容所から、この当時ドイツであった刑法175条(同性愛を禁じていた)のため、刑務所へ直行。しかも20年に渡って何度も投獄されるフレディ…もとい…ハンスという男性が主人公。
そしてやっとこの刑法が刑法でなくなった時(なんと94年。つい最近までこの法律は有効だった)、男は釈放され、同性愛者に解放された世界へと飛び出していくのだが、しかし刑務所内で見つけた愛を優先するため、わざと犯罪を犯し刑務所戻りを企ててしまう…。
とにかく悲しいけど、人生何を優先するのか、だよね。彼は同性を愛しつづけることをあきらめなかった。そっちの方が法から解放されるよりも彼にとっては大いなる自由だった。Freedomとは何か、そんなめっちゃ切ない思いに囚われる。
これが「愛」と言えるのだろうかと思わない部分もなくはない。でもなんかお互い、ただただ一緒にいたい、お互いを必要とする感じがヒリヒリ伝わってくる。
でもって、どっかの映画評にもあったように、真っ暗中、スポットライトが当たった映像はまるでレンブラントの絵みたいでもある。
扉を開けずに食事を供給するために扉につけられた小さな窓からのぞく顔、その窓からのぞく風景、鍵穴みたいなところからのぞく視線、真っ暗なお仕置き独房(みたいな場所)に暴力的に入ってくる眩しい日差しとか。光のコントラストが味わい深い。
あと聖書に穴をあけて手紙にしてジョン・テイラー(違うって)に送るシーン。あれは最高にロマンチック。最高に美しかった。
俳優さん、全員とても個性的で良い演技してた。音楽もなんかよかった。静かなんだけどパワフルな作品。
そしてパンフレット! パンフレットに掲載の北丸雄二さんの文章が、これまた死ぬほど良いので、ぜひパンフの購入をおすすめします。「愛は匿名では不可能です。愛は実名の行為なのです」北丸さんの言葉、好きすぎる。
宮下坂の文化村ル・シネマにて。この暑さだから駅から超近いのがいいですよ。