ルナサ基本情報 メンバー紹介 トレヴァー・ハッチンソン


今週はメンバー紹介を連載しています。火曜日の今日はトレヴァー。

まずは公式バイオ。タイローン州クックスタウン出身。Tyroneって、読み方がいつもいろんな説があるようなんだけど、私の感覚ではティローンは北アイルランド出身(地元)の人の呼び方。タイローンは共和国側の呼び方。私はアイルランドはダブリンが好きなので、共和国風にタイローンと呼んでます。

ほんと英語をどうカタカナ表記にするかはいつも問題で、それについてうるさくクレームを言ってくる人もいるのだけど、もっとおおらかで良いようにも思うんだよね。

いつだったか、それこそルナサのキリアンにとある曲のタイトルの読み方についてしつこく聞いたところ、「お前の質問は面白い。というのも普通こういうのは読む側がどこ出身かによって変わるからだ」と言われ、ハッとしたのでした。

さすが移民の国。そういうことはおおらかなんだな、と。もちろん地元の人の呼び方や読み方は尊重したいけど、それでいいんだと思った出来事でした。

話がそれた。

トレヴァーは、ベルファーストのクイーンズ大学在学中にロック・バンドでベースをひきはじめ、ロンドンに出てイングランド出身のShowdogsというバンドに参加し、イギリスやアメリカで活動したのち、86年はじめにマイク・スコットに誘われ、91年の解散までウォーターボーイズに参加。

こちらウォーターボーイズ時代のトレヴァー。ヘアカットが味わい深い。

 

91年からは、同じウォーターボーイズの同僚シャロン・シャノンのバンドに加わり世界中をツアー。これがトレヴァーの伝統音楽の世界への入り口になったことになります。

アルタン、ドーナル・ラニー、リアム・オメンリィ、ルカ・ブルーム、メアリー・チェイピン・カーペンター、マイク・スコットなどと共演したり、オアシス、ヴァン・モリソン、ナンシ・グリフィスなどのサポートを勤めるなど活躍の場をひろげてきました。

とにかくトレヴァーとは、誰もが一緒に仕事をしたいと思う。そんな存在なのです。

こちらはシャロン・シャノンと。



とにかく人気がある人で、みんながみんなトレヴァーと一緒に仕事をしたがっている。

多くのセッションに参加したり、ダブリンに自らのスタジオを構え、グラーダなど多くの新しいアーティストのプロデュース、サポートするなど、とにかくアイリッシュミュージックシーンにおいて、なくてはならない重要な存在となっているトレヴァー。

トレヴァーもショーンと同じで3人の妹たちをひきいる長男。妹たちも全員ドレヴァー同様、背が高い。一番下の妹たちはなんと双児で、一人は東京にすんでいるバリバリのキャリア・ウーマン(現在は帰国)。

トレヴァー自身もクイーンズを出ていることから、相当なインテリの家系と思われるが、そういったことを絶対にひけらかさない。(専攻はなんだったのか、一度聞いてみたい気がする)

しかし時々、その育ちの良さがにじみでる瞬間がある。「沈黙は金」ではないが、絶対に余計なことを言わないタイプ。

そんな男らしいトレヴァーは、メンバーの中で一番頼りにされており、皆の精神的な支えとなっている。ステージ上では絶対にしゃべらないトレヴァーだが、しゃべる声は、演奏する楽器のように低い。

また、おそらくアイリッシュ・ミュージック界イチ、IT/コンピューター関連に精通している。むーかしむかし、トレヴァーにiPodの前身のような、MP3プレイヤーを見せてもらったことがある。それは地味なルックスで、とても重かった。

またなぜか元ギターのドナ・ヘナシーと兄弟だと誤解されることが多い。この二人の場合、おそらく一緒にいすぎて顔が似てきてしまったと言った方がいいだろう。

ルナサのメンバーの中で一番結婚に遠いと思われていたトレヴァーだったが、10年前くらいかな? ついに結婚し、多くの女性たちをがっかりさせたとか、させなかったとか。

トレヴァーはいろんな意味で仕事魔だとは思う。ツアーがない時はスタジオに篭りっきり。よく奥さんに「そろそろXXX Road(トレヴァーの住む住所)を出なさいよ」と、からかわれていた。

トレヴァーはルナサの中では唯一のダブリン在住なので、私は割と気楽にトレヴァーの家に遊びに行くこともあった。トレヴァーの家にいると、いろんなミュージシャンが次々やってくるので、すごく楽しい。

今は奥さんが家の中を綺麗にしちゃったけど、昔は割と気楽な男所帯風で、グラーダのジェリーとかが居候してた時期もあった。

ジェリーは、私が訪ねて行ったら、お腹空いてない?といって、カリカリベーコンとオレンジマーマレイドのトーストを作ってくれて、若い男の子は料理のセンスあるなぁ、と感心したのを覚えている。

またいつだったかは、ルナサのメンバーがゾロゾロ集まり、トレヴァーが大きな鍋でアイリッシュシチューを作ってくれたことがあった。

ヨーロッパでは、料理は男性の仕事なのだ。(一部をのぞく)

あれは美味しかったよなぁ。大きな鍋で作ったのに、みんなすごい勢いで食べて、あっという間に鍋は空に。そういうつまらないエピソードを、何年たっても、本当によく覚えている。

あと、これはどういう経緯だか忘れたけど、トレヴァーが家の大改装を自身で行なっているところに私が行って「終わるまで本でも読んでるから気をつかわないで」と言ってソファーでゴロンと寝っ転がって本を読んでいたのだけど、トレヴァーは「もう飽きちゃった」とか言って自分の作業を中断してくれて、一緒に二人でパブに行ったのも覚えている。

グラスネヴィンのプロパーなノースサイダーズ(ダブリンはリフィー川の南と北で生活スタイルが大きく違う)のパブ。なんか二人だけでちゃんと話したのって、あれくらいだと思う。そのくらい無口なトレヴァーだけど、あれはほんと素敵な時間だったなぁ。

トレヴァーって、ツアー中、私とかに用もないのに話しかけてくるタイプじゃないんだけど、いつだったかグリーンリネットと私が大闘争中に「ヨーコ、本当に迷惑をかけてるね」と話しかけてきたことがある。そして「この前アメリカで飛行機に乗ったら、C(グリーンリネットの副社長)に似たやつが乗ってたんだ。俺は思わず殴ってやろうかと思ったよ」と、あんまり面白みもないジョークを言ってくれた。

普段、とにかく積極的に私に話すタイプじゃなくて、ほんとに静かにしているので、なんかその優しさが沁みた。いいよなぁ、トレヴァーは。そんなこともなんか覚えている。

映像集です! 

こちらはグラストンベリー Eric Bibbと。 エリックは、おそらくルナサのマネージャーのスチュワートのラインだと思われる。スチュワートの音楽出版社はエリックの楽曲も管理している。

いつだったかロンドンでスチュワートとミーティングしてたら、エリックが奥さん(スカンジナビア系だった)と一緒にあらわれ、一緒にお茶したことがある。

  

エリックとルナサの共演のこの曲、いいよね。ゴスペル+ケルトみたいな感じ?



こちらはアコーディオンのダミアン・ムレーンと。ダミアンは私はマジでやりたかったんだよね。すごいうまいプレイヤーで天才だと思った。来日にはドナがギターで来てくれたんだっけ。

でもなんかドライな子で、自分の音楽追求してくぞ、みたいなところがあるんだか、ないんだか。それともこのジェネレーション特有なんだか、そうではないのか。

今は割と北米マーケットのための大営業ツアーみたいいなショーに参加して、おそらくすごい稼いでると思うんだけど、そうやってじゃんじゃん稼いで貧乏くらしなんてまっぴらと思っているような風情がある。

ちゃんと自分のソロアルバムとか作ってほしいと思うのは、贅沢なおばさんの悩みか。古い人間なんだな、私も。でも、特に彼、トレヴァーとドナのバックだと最高なんだ。

 

 映像的にはこっちのがいい。 
 
 

アコーディオンとやるのが好きなのかな。ダーモット・バーン、スティーブ・クーニー。  

こちらは最近の映像。パンデミック中のものらしい。こういうのをやらせてもトレヴァーは最高。本当に味のある良いベースだ。

 

こちらはトレヴァーがプロデュースした「ルナサの弟バンド」グラーダ。一時、うちではめっちゃ押してて、実際かなりいい線まで行ってたと思うんだけど、解散しちゃったんだよね。

この当時、トレヴァーから直接メールもらうことなんて滅多になかったので、トレヴァーからこのバンドを大推薦されて、すっごい私も入り込んじゃった部分はあったと思う。これはトレヴァーにかっこいいところを見せるためにも頑張らねば、みたいな(笑)。

この時のグラーダはフィドルは、コリン・ファレル。コリンは今、アメリカに住んでいて(このパターン、まだまだ多いよなぁ)アメリカツアーとかではルナサのショーンの代わりにルナサのメンバーとして参加している。(ほぼ正式メンバー)

それにしてもこの時のグラーダはすごい。コリンとアラン(フルート)というすごい上物プレイヤーがいて、曲はどんどんどんどん早くなっていった。

私はでも前任のブレンダンがいた頃のグラーダがよかったよな。うまいバンドって演奏のスピードが早くなる傾向があるんだけど、曲に最適のスピードって、絶対にあると思う。早ければいいというものではない。ちなみにこの映像では、ダンサーの子もすごい。


グラーダはとにかくいい子たちだった。リーダーのジェリーはしっかりした子で、私がダブリンに行ったタイミングで、私とトレヴァーをインドネシア料理だかなんだかとにかくエスニック系の素敵なレストランに招待してくれた。

そんなことを若いバンドにしてもらうのは初めてだったので、帰り道をトレヴァーと歩きながら(グラフトンストリートだった。なんでだろ。帰宅の方向が一緒だったのか?)トレヴァーと「若い子たちなのに、えらいねぇ」とか話していたら「俺なんて、そんなことやったこともないよ」なんて、謙遜してた。

でも確かにルナサに食事に呼ばれるとか今までにないかも(爆)まぁ、私がいつも突然行くからいけないんだけど。

こちらはそのグラーダのギタリストのジェリー・ポールとトレヴァー、そしてティム・オブライエンのトリオ。 このグループ、たぶんジェリーが言い出しっぺなのだと思う。ニュージーランド(彼の地元)を二、三度ツアーして終わっちゃったプロジェクトだったけど、よかったよな。

 

しかし本当に改めて、ルナサをルナサたらしめてるものの大きな要素は、やっぱりトレヴァーのベースだと思うんだよね。控えめで優しいトレヴァーの性格がそのまま音楽になっていると思う。本当にかっこいい。

あ、これも貼り付けておこう。こちらはWaterboysの2013年のリユニオンの時。これがあったから、この年のケルティック・クリスマスのルナサにトレヴァーは参加できなかった。代わりにリアノン・ギデンスのバンドでもお馴染み、ニューヨーク在住のジェイソン・サイファーがトラとして来日した。彼はそこで今の日本人の奥さんと出会って結婚するにいたったのだから、人生はわからない。


…で終わろうかと思ったけど、もう一個トレヴァーのエピソード思い出した! うちで20周年のライブをやった時、ヴェーセン、ルナサ、そして当時私が猛プッシュしていたナヌークのエルスナー兄弟がアコースティック編成で来日していた。

最後共演ということになった時、まぁ、結局のところ彼らの楽曲をメドレーみたいにしてやるしかなかったわけだけど、ナヌークの二人がアコギと歌で演奏していたら、トレヴァーがさりげなくベースで入ってくれたんだよね。全然打ち合わせもなしに。

あぁいうの、ほんと大好き!!!!! これぞミュージシャンシップ。それがそのくらい素晴らしいことか、ナヌークの経験値低くて若い二人が理解したかわからないけど、あれは本当に素敵だった。なにせ同じアイリッシュならともかく、まったく共通点がないような状況で、本当によくやってくれた。

そうそう、あの時はヴェーセンのローゲルもすごく活躍してくれたんだった。ローゲルとトレヴァー、体の大きさもそうだけど、ちょっと似ているところがあるかも。

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