平野啓一郎『死刑について』を読みました

 



読んでも読んでも終わらない『イラク水滸伝』を傍において、こちらを読み始めてしまった。(あれ、持ち運ぶのも重いので、本当に進まない。高野さん、すみません。でももう残り1/3くらいです!)

ポリタスで知って購入した本。実は平野さんのことを私は全然知らなかった。有名な方なのに、なにせ私、フィクション普段は滅多に読まないからなー。でも読んだら、すごく良かった。

死刑については、私は人生のビックイシューの一つに掲げているので、なんでも勉強できることは勉強しておくことにしている。だから基本死刑についての本は買って読む。

本も結構読んだけど、今のところ、No.1は佐藤大介さんの「ルポ死刑」かなぁ。あれは硬派なノンフィクションで説得力がものすごくあり、読みごたえも抜群で、うちのプラチナ本の棚にキープしてある。

こちらはもっとソフトなエッセイみたいな本である。でも世間的には、こういう本の方が売れるのかもしれないし、死刑について普段死刑に注目していない人でも色々考えるきっかけになるかもしない。

もともと「死刑は仕方ない派」だった平野さんが「死刑反対派」になるまでのエピソードなどは共感しかない。

私も海外の友人たちと話しているうちに、…というか、一番最初は確かピーター・バラカンさんだった。ピーターさんが死刑と原発は反対と言っていたから気になっていたのだ。で、実際欧州と仕事が始まれば、これは違うなと違和感を覚え始めた。そして2023年の今日、気づけば日本は死刑が残る数少ない国(先進国ではアメリカとここだけ)になってしまった。

この本にはノルウェーの例の受刑者の話も出てくる。ポリタスで青木さんや津田さんと平野さんが語っていて思ったのは「これは戦いなのだ」ということ。自分の信念を守ることは、このように本当に辛いことでもあると言える。でもこういう世界でありたい、人は殺しちゃいけないんだという自分の信念を、悪意のある人間に悲惨な事件を見せつけられたからと言って変えるわけにはいかない。

あとすごくいいなと思ったのは「この国は人権教育に失敗した」というところ。確かに日本において、人権は絶対的なものであり、人が生きている以上そこに存在しているものなのだという認識がすごく薄い。

何かが起きれば、その人がいかにいい人か、同情するべき人かに重きが置かれる報道。なんだか全然間違っている。この辺は、私にとっては新しい視点だった。

もともとこの本は講演会を文字起こししたものに、手を加えて発表したのだそうだ。だからひたすら口語体で、とても読みやすい。

こういう本が存在すること自体が素晴らしい。佐藤さんや、青木理さんの硬派なノンフィクションもいいけど、こういう本があることもより良い未来を生み出すきっかけになると思う。

ちなみに平野さん、Twitterがすごくよくって、最近フォローしているのだけど、一つ一つの発言に共感し、平野さんがタイムラインにいるだけで、ちょっとホッとする。ぜひみなさんもフォローを。

平野さんのフィクションの方も読んでみようかな… どれがいいですかね。


PS
平野さんと青木さんが出演したポリタスTV。今、有料会員(しかも上級会員)しか見れないけど、よかったら、ぜひ。



PPS
この書評目当てで、このブログに初めて来た方。私は普段アイルランドやケルト文化圏の音楽を紹介する仕事をしています。今、こんなクラウドファンディングをやっています。よかったらご覧ください。リンク先でバンドの音も聴けます!