ルナサの音楽を斬る:キャッチィ・ビットをいかに生み出すか

 


どっか(たぶん日立)の打ち上げで納豆にトライするケヴィン。

ルナサのケヴィンといつだったか一緒に楽屋にいるときに、私が鼻歌でルナサの曲のワンフレーズをふんふん歌っていたら、ケヴィンに「そこいいだろ? キャッチィ・ビットなんだ」と言われた。

この「キャッチィ・ビット」っていい言葉だなぁと思って、それ以来、なんとなく自分でも頻繁に使ってる。レコーディングやライブの時「あぁ、今のいいねぇ!」とか、そういう意味で。

先日も某アイルランド音楽のバンドの演奏を聞いていて、まずまずのバンドなんだけど、なんか面白くない。このバンドは、まぁ、確かに上手い。上手いは上手いんだけど、ほんと一本調子で、ライブで聞けばまぁそれなりに楽しんだろうけど素人だよなぁとちょっと思ったのだった。

この違いって、どうなんだろう。

良いバンドとつまらない音楽のバンドを分ける要素はいくつかあるのだが、今日はこのケヴィンの言うキャッチィ・ビット」について書きたいと思います。

1曲の演奏の中に、この「キャッチィ・ビット」をいかに作れるかというのはバンドにとって大きい課題だと思うし、アイルランド音楽は循環していくものが多いので、そうでもしないと一方調子になりがちだというのはある。

でも反対にその循環を利用して、盛り上げていくという手法もあるのだろうけど。

例えばこの曲なんかの「キャッチィ・ビット」最初の8小節ですでにある。特にイントロが終わってメインのメロディが始まり2小節目(11秒くらい)に行く時のこのベースライン、気持ちいいと思いません? そして3小節目(14秒くらい)

この流れ! この流れがキャッチィ・ビットなんですよ。(小節の数え方、まちがってたらすみません。私は楽譜は読めるけど、よくわからないで書いてます)

 

それは2周目でも展開される。ここも、ほんとに気持ちいい!(35秒目、39秒目)

それにしてもここでもセットの2曲目におけるパイプの速さがまたもや尋常ではない(1:22秒くらいのところ。詳しくは月曜日のブログをどうぞ)。

これなんかも同じよね。上物のメロディは変わらないのに、冒頭のベースラインの下降する感じが気持ちいいー


「キャッチィ・ビット」はこのように単なるベースラインであることも多い。

これなんかもすごくいい。そもそもメロディ自体がめちゃくちゃキャッチイ。2曲がワンセットになっているのだけど、1曲目がケヴィンが亡くなった友達のために書いた「Absent Friends」2曲目がディアムド・モイニハン作の「Ivory Lady」(こちらはピアノ奏者の妹に向けて書かれた曲。素敵でしょ?)。

この2曲の展開がいいんだよね。「Absent Friends」でしっとりしたあと、「Ivory Lady」に入っていって徐々にテンポをあげていく(2:37のところ)(こういうの専門用語でなんて言うんだっけ?)あの感じ。

最高でしょ? ここもいわゆる「キャッチィ・ビット」だよね。


キャッチィ・ビット」は、どの曲とどの曲を組み合わせて一つのセットにするかというセンスの上で適用される。

例えばこれ。ドナの名作「1st of August」と、マイケル・マクゴールドリックのペンによる「Wind Broke」この2曲の傑作を組み合わせたという、このセンスの良さ!! ドナの曲が前へ前へと押してきたと思ったら、マイクの曲で後ろからたたみかけるように押してくるこの感じ!

このセンスだよね。バンドを見ていて思うのは、楽器が下手なのは練習すれば治るけど、センスの悪さは一生治らない。ルナサは最初からうまかったし、音楽的センスも最高だった。それはもう最初から。

センスの良さは本当にアイルランド音楽のバンド、ピカイチじゃないかしら。いや、他のバンドがダサいって言ってるわけじゃないけど、ちょっと言ってるかな(笑)


「キャッチィ・ビット」はたった1つの音符であることもあるし、バンド全体が作るコード感だったり、はたまた楽曲の大きな展開であることもあるし、いろんな考え方がある。

これなんかはやっぱりすごくキャッチィだよね。ぜひみなさんもこの曲の「キャッチィ・ビット」を探してみて。ほんと、プロで人気のあるバンドだって、この「キャッチィ・ビット」を作れてないことが本当に多いから。


というか、比較的最近知ったのであるが、インストルメンタルを聴き慣れていない人は、音楽を聞いていても上物のメロディばかりを耳が追ってしまうことになりがちなんだって。

上物のメロディは、歌もので言うところのシンガーの役割と言っていいだろう。

でもインストバンドの場合、この全体の構成や展開を聞くことに面白さがあるんですよ。ここが見えちゃうと、本当にもうたまらないものがある。

だから普段、歌物ばっかり聞いているお友達がいたら、「今のところベースが良かったでしょ」「ここがキャッチィなんだよ」とか言葉で説明してあげると良い。

バービーに出てくるケンのごとく、嫌がられるかもしれないけど(爆)

いつだったか椎名林檎がいみじくも言ってた。「音楽って歌が入ったとたんに違うものになる」「歌ものって、結局料理における<どんぶりもの>と同じなんだ」と。上手いこと言うなぁ、と関心したものだった。

もっとも彼女の最近の極右趣味はいかがなものかとは思うけど、ね。

何はともあれ、ルナサは色んな意味で最高のバンドだと私は信じてやみません。この違いがわからない人は、もういいっ!って感じ。ぜひこの違いを分ってもらえると嬉しいのです。

ルナサ、クラウドファンディング、めっちゃ頑張ってます。ぜひ応援してください。


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