ノードグレン+ションタル『「変化を嫌う人」を動かす 魅力的な提案が受け入れられない4つの理由』を読みました


ツアーのおかげでブックレビューが3冊ほどたまってしまった。ここから連日ブックレビュー行きます。しかも全部ビジネス啓発本。まぁ、あきれずお付き合いください。

原題は「The Human Element - Overcoming the Resistance That Awaits New Ideas」。いやー 久しぶりに学びの多い本を読んだ。

ビジネス啓発本や仕事術の本を読むの、私は大好きなんだけど、なぜかっていうと自分がすでに実践していることを肯定してもらいたくて読んでるんだよね。

だいたいの本は読むと「ふむふむ、自分は大丈夫だ」「うん、私はこんなことはもう私は実践できている」ということを確認できるから。

偉そうだよなぁ、自分(笑)

でも実際そうなのよ。さすがフリーランス歴30年近くたっただけのことはある。っていうか、もう自分のスタイルができちゃってるから、あまり人が提唱する新しいやり方に感動することもない。

本をむさぼるように読んで、自分のやっていることを肯定している何かをその中に偶然見つけ気持ちよくなってるだけだ。それが楽しくて本を消費するように読んでいるだけだ。

ほんと単純なわたし。まぁ、そんな風に楽観的に生きてます。そういう自覚あります。

が、この本においてはマジでものすごく新しい発見があり、自分も取り入れてみようと思うことがたくさん載っていると思った。すごく勉強になったし、この本に書かれている多くのことが目鱗だった。

新しく仕事をしようとしている人、若い人、あと10年仕事をするんだったら、あなたもこの本を読んで実践するといいと思う。いやー 久々ビジネス書、激推しの1冊です。すぐ実践に役立つということでは『影響力の武器』以来かも。

この本によれば、人はだいたいプロジェクトの魅力を増大させることにのみ注意し(燃料とこの本では呼んでいる)、それを妨害するいろんな要素や抵抗に着目してない。ひたすらプロジェクト、商品の魅力を増大させるばかりで(ひたすら燃料投入!)、本当にそれが売れるために邪魔になる抵抗を取り除くことに注意していない。

弾丸を飛ばす時、その破壊力を増大させることばかりに注目し、弾丸が飛ぶ時の空気の抵抗を緩める重要性を忘れている。

抵抗を解消する…とは。

例えば飲食店の予約受付。「キャンセルの際には電話いただけますか」と聞き「はい」の返事を引き出す。その方が「必ず電話してください」と命令口調より無断キャンセルが減る。

例えばウチも時々やる定員に限りがある当日精算のイベント。

「定員があり、キャンセル待ちのお客さんもいるんだから」と言ってもいくら説明しても、お客さんはそれを理解しない。

そして必ず当日は無断キャンセル者があらわれる…orz(うちのお客さんでだいたい10%くらい)。

でもここで「キャンセルの際は連絡ください」ではなく「キャンセルの際は連絡いただけますか?」と疑問形にしてみる。そして「はい」と答えさせる。(申し込みフォームにチェックボタンでもつけるか?)

こういうの!!! こういう些細なテクニックなんだよなぁ、仕事って。人をコントロールするのには、こういう小さいことが重要だったりするのだ。

他にも入院中の子供にメッセージを送ろうキャンペーン。なかなか数が集まらない。ところが、どんな強いキャンペーンよりも何よりも効果があったのは、文例を提示すること。これで飛躍的に集まるメッセージの数が伸びたのだという。

これ、これ!! こういうテクニック。こういうのが大事なんだよ。

子供にメッセすることがどんなに大切か、どんなに素敵なことか解いても人は動いてくれない。

それよりも、こう書いたらいいんですよ、と文例をしめすことで行動をうながす。背中を押す。そういう方が何倍も効果がある。

他にも目鱗のキーワードがたくさん。未来の自分のためにここにメモっておくと、「快楽非対称の法則 Law of hedonic asymmetry)= 喜びは変化が起こらない限り生まれてこないため、満ち足りた状態が継続すると消え去る。これに対し苦痛は状況が続く限り残存し続ける、ということ。

ネガティブな感情は尾をひき、ポジティブな状況が5回なければ、人はネガティブな状況1回を克服できないのだそうだ。

職場に周りを暗くする人、自分の役割を果たさない人が一人いれば、それがチームに一人でもいれば、そのチームのパフォーマンスは40%も低下するのだという。すごい(悪)影響力。

こういうことを理解せずに、プロジェクトリーダーは、延々「燃料」の投入に力を入れがちだ、と著者は言う。

一方で、例えば子供を犯罪の道に走らせないよう、学校主催で刑務所1日体験をやらせる。が、これは残念ながら犯罪抑止力にはならない。刑務所を訪ねた子供たちは犯罪者たちのグループに怯え、刑務所の環境に怯えるわけだが、その恐怖は実はあっという間に忘れられてしまう。つまり彼らの将来に待ち受けるであろう犯罪の抑止には全く効果がない。これは燃料投下の失敗例だ。

「燃料」はある意味わかりやすい。例えば米国陸軍。採用のために「燃料」として勧誘テレビCMを流す。一人の兵士の映像。かっこよさ、友情、団結。街の尊敬を集める、愛国心などをあおるイメージ映像。そして決めに高賃金を提示。

これを流して彼らが勧誘しようとしてるのは「興味なし」の若者ではない。「興味があるのだけれど」タイプの若者だ。

つまり「燃料」はわかりやすい物が多い。これを流せば、そういった若者を釣れるだろう、と、そう単純に考える。

が、しかし。こんなにメリットがあるのに多くの若者は軍隊には入りたがらない。彼らが本当に心を砕いているのはそんなことではないからなのだ。

彼らが恐れているのは例えば「それを告白した時の母親の反応」なのだ。ここを取り除く方法を解かないと、軍隊に希望する若者を増やすことをできない。

他にも多くの「抵抗」はあらゆる場所に存在する。例えば多くの人は「既知のもの」にものすごく安心する。(コンサートに行った時、自分の知っている曲をやれば安心する。コンサートホールや音楽財団に外国アーティストの新規企画を持っていけば日本の曲を演奏してくださいと言われる。それはお客さんを安心させたいためだ)

わたしたちには既知のものを手放したくないという強い欲求がある。そしてその「惰性」がイノベーションを損ねているのは… みなさん、周知の事実だろう。

(でも今やこの世界で変化せずに生き残れるものなどもう誰もいないのにね…。ほんと日本で保守層が強いのは…以下自粛)

ではその「惰性を克服するには」 

ジョブズがiMacの中身をフォルダ、ファイルなどと既知のものの名前で読んだこと。テスラのイーロン・マスクが自動車型の移動モーヴィルを作ったこと(機能を考えれば車の形である必要はまったくない)などを例にあげて、軸足をキープしながらも変化に誘導する、という方法を著者は解く。それによって「抵抗」を少なくできる、と。

この他には、人々をアイディアに慣らすための戦術はいくつかあると著者は解く。たとえばアイディアについて知らせてから実践までの時間をなるべく長く取る。

そのアイディアについて思い出させる時間を喚起しつづける。→  何度も触れているうちに新しいアイディアはどんどん人々の間で親近感を高めていく。

他にも「喩えを使う」「複数の選択肢を用意する」など有効的なアドバイスが続く。なんかこの辺の話はマイナンバーカードとかそういうのにも通じる。これは組織で働いている人は絶対に知っておいたほうがいいテクニックの数々だ。

そして「労力」問題。今や若者を中心として多くの人が、労力を嫌がり、すべてにおいて最短距離を行きたがる。これをどう克服するか。

著者は「労力」には二つの側面があると言う。一つは具体的な「苦労」(時間的、肉体的な)。

そして、もう一つは「茫漠感(ぼうばくかん)」だ。(←この茫漠が読めなくて、ググルのに苦労してしまった)うまくいかないかもしれないと思った時に予測される、とりとめのない無力感というか。とほうにくれる感というか。

それを克服するにはプロジェクトのロードマップを作成し、この茫漠感を克服する必要がある。「なぜ」ではなく「いつ」「どうする」か。そういう具体的なプランがこの茫漠感を克服することにつながると著者はいう。(ふむ、ふむ)

そしてイノベーションをこのロードマップに落とし込んでいくことが重要なのだ、という。

また一方で「労力」に価値が見出される状態もある、とも。例えば体験すること自体が目的である、美徳である、質と勘違いする、または結局退屈しのぎで、そういうことも人生には必要だ…などなど。これは日本の社会にとっては「ある、ある」な話だ。

他にもアマチュア音楽家を生み出すための「接客業」なども参考例としてあがっていて面白かった。とある米国の楽器チェーン店の例なのだけど、新しいお客には楽器の話はせず、ひたすらお客さんがどんな夢を持っているかを訊ねる。

でもって初心者のお客さんに必要なのは「彼らの夢を応援し、あなたならできると励ましてあげること」「一歩踏み出そうという意欲を讃えること」

他にもパンケーキミックスの話(初期のミックスにはなんと卵の粉末も入っていたのだそうだ。だがそれでは売れなかった。卵を別にいれるというレシピにして初めて売れるようになった。というものケーキは「表現するもの」という側面も持つから)、アメックスの若い人向けキャンペーン(お金の管理の主導権はお客にあると思わせる)など、興味深い話が満載だった。

でもそうなのよ、そういうこと。そういう小さいことによって人は行動を変えるのよ。

それにしても日本語タイトルもよく考えられているよな。「変化を嫌う人」は誰の周りにもいくらでもいると思うんだよね。

でも今や変化を嫌っていては生き残れない。そう言う時代なんだからさ。ま、普通にサラリーマンやって、そのまま「あがり」を目標にしている人はそうじゃないのかもしれないけれど。(最後棒読み)

まぁ、だから日本社会って精算性があがらないのよね。そういう人ばっかだから。

それにしても勉強になった。会社や組織でフラストレーション感じている人は、ぜひ!