スヴェング物語 その1

 


さて来日の日程も迫ったので、今日から「スヴェング物語」をブログで連載していきたいと思います。

スヴェングはフィンランドのハーモニカ・カルテットです。左からゲーロ、ヨーコ、パシ、エーロの四人組。

ヨーコはシベリウス音楽アカデミーの先生でもあり世界で唯一のハーモニカ博士でもあります。

初来日は…今調べたら2007年か。なんか自分的には、比較的新しいバンドのつもりでいたけど、16年前なんですね。懐かしいなー

彼らを見つけたのは実は毎年フィンランドから東京にやってくる「Finland Fest」の商談会の会場にて。

これはいわゆるフィンランドの音楽を世界に広めようという振興会みたいな団体が主催しているイベントで、当時は毎年5月に行われていた。

いろんなプロモーター、マネジメント、レーベル、出版社などがフィンランドからこぞって日本にやってきて、そこでサンプル配ったり新しいアーティストを紹介したり…というもの。

ロックな性格の私は普段はそういういわゆる「商談会」の場でアーティストを見つけるのは邪道だと思っているのだけれど(アーティストとの出会いは「恋」のようなもの。お見合いじゃ見つけられません)、まぁ、例年挨拶のために、現場に顔は出していたわけです。

そしたら、彼らの当時のマネージャーから、別の、すでに来日が決まっている某女の子バンドのCDを売り込まれたんですわ。

でも私はその女の子バンドには興味がわかず(確かに可愛いかもしれないけれど、下手くそなんだもの。あっ、言っちゃった! でもマジで下手なバンドってほんとに多い)、たまたま彼女の机の上に並べてあったスヴェングのファースト・アルバムのジャケットにすーっと引き寄せられました。

「このバンド、良さそう」

確かにこのジャケット妙にいいんだよね。音が聞こえてくるというか。
 



だからマネージャー的にもスヴェングは「推し」ではなかったのだけど、まぁ、家に帰って音を聞いてみたらこれがまた最高によかった。1曲目からジプシーっぽい楽曲で、かつ途中で入ってるロシアン民謡も良かったし、最後のラグタイムなんて、さすが!

どんな人たちかわからないけどハーモニカだけのバンドなんて面白いし、一度呼んでみるかというわけで「割とさくっとした感じで」日本に呼んだのでした。

当時、私もいわゆる弦楽器のアコースティックバンドとは違う、もう少しわかりやすいポップなバンドがウチのラインアップにいないものかと思っていたから。(ここにも何度か書いているけど、プロモーターとしては同じカードを何枚も持ってても意味ないんです)

初来日から同じく北欧の伝統音楽を熱心に紹介しておられた関西のプロモーター、ハーモニーフィールズの小巌さんに協力をいただき、なかなか良い内容のファーストツアーを作ることができたのでした。懐かしいなぁ!!

そんなわけで「割とさくっとした感じ」来日を決めてしまったこともあってスヴェングは、私にとっては、ウチにおけるたった二つの「日本の空港ではじめまして」バンドだ。(もう一つはバルトロメイ・ビットマン)

それなのにこんなに長く続いているのだから、やっぱりすごい。彼らを初めて日本に呼んだ時、私はまだフィンランドには行ったことすらなかった。(スウェーデンは、すでに一度か二度行っていたと思う。もう記憶があやふや)

でもスヴェングの第一回目のツアーが大成功したというのを聞きつけたフィンランドの音楽振興会の人たちが翌年の春、私をフィンランドに招待してくれたんだよね。

何度も言うが、私は当時からいわゆるロック体質で(笑)「こんなのに招待されちゃったら、向こうが推薦するたいしたことないバンドも拾わなくちゃいけなくなる」「この仕事は本当に大変なんだ。唯一ある自由、ミュージシャンを選ぶ自由が奪われてたまるか」くらい思ってただった。

でも周りの、それこそ昔からよく知っている取引先が「そんなこと言わずに行っておいた方がいい。お前のバンドのためにも」と私を説得してくれたのだった。

「お前のバンドが現地で助成金を申請した時、あ、受け入れ先はマフィアではなくヨーコか、だったら大丈夫だって向こうも思ってくれるだろう。お前も現地に行って顔を売っておきなさい。お前にはもうそういう責任がある」とアドバイスしてくれて、私も心をあらためたのであった。

ほんと友達って大事!

そして、いつまでも子供っぽい私。確かにそうだ。そういう、言いにくいアドバイスをしてくれた素晴らしい友人には今でも本当に感謝している。

そんなわけで私はヘルシンキへ飛び、自分の出張では泊まれない4つ星のホテルに留まり、夜は白と赤両方のワインが飲み放題の素敵な3コースディナーをご馳走していただき、世界中のプロモーターさんたちと一緒に朝から晩までいろんなバンドを見せられた。

最初は「けっ」と思っていたのだけど、結局その後、結構な数のバンドを日本に呼ぶことになったのだから、やっぱりこういうことも大切なんだなと反省したのである。

(その時に出会ってその後一緒に仕事をしたグループ:ノルディック・トゥリー、アラマーイルマン・ヴァサラット、ヨハンナ・ユホラ、ヴァルティナなど)

まぁ、でもいつもこんなことやってるようじゃダメだけどね。私もちょろい。結局業界の慣習に載せられちゃったのかな…。

そんなわけでスヴェングは私をフィンランドという国につないでくれた大事な大事なバンドなのであった。本当に縁があるところには、縁があるんだね。

フィンランドは… 私的にはすごく仲良しの国だと思っている。ウマがあうというかなんというか。たとえばスウェーデン、デンマーク、ノルウェー、グリーンランド、フェロー諸島、北欧のいろんな国をやってきたけど、圧倒的に国として面白いのは、絶対にフィンランドだ。

まぁ、そもそも知っている人間の数がフィンランドが多い、というのはあるかも。

私にとってはアイルランドの次がフィンランド(その次はポーランドかな)が、自分にとってウマがあう国。そんな縁をつないでくれたスヴェングには、本当に今でも感謝している。

その2に続く…

今回は、素晴らしいツアーを作ってくれたハーモニー・フィールズさん主導のツアーです。スヴェング。ただ東京公演はウチで作りました。南青山曼荼羅で、アットホームなライブハウス公演です。


ハーモニカだけで、すべてを演奏してしまうフィンランドからやってきたカルテット。宮崎アニメのテーマ曲や、ハリー・ポッターなどの映画音楽、「恋のバカンス」や「赤とんぼ」もやるよ。シベリウスとショパンも! 詳細はこちら。

ラグタイムもお手のもの!