カーリ・ロースヴァル『私はカーリ、64歳で生まれた』を読みました。野崎的今年のノン・フィクション大賞は、この作品です。

 




ものすごいものを読んだ。ここ数冊読んだ中でも圧巻の内容でした。『親愛なるレニー』以降、最大のノン・フィクションの大ヒットかも。

本は2021年に出ていたのですが、ボケな私はこの本の存在をずっと知らず、そんな時スウェーデン大使館の文化担当でもある速水さん(この本の翻訳者でもあります)が、著者のカーリさんが来日するというので、イベントの案内を送ってくれたのであった。

「おおっ、ノルウェー生まれ、アイルランド在住の著者か。これは私としては知っておかねば」と思い、早速「行きます!」と返事をしたのはいいけれど、なんとうっかりその日わたしはその約束をすっぽかしてしまったのであった。

あぁ、加齢によるボケが始まったよ。その日のスケジュールを夕方見て、愕然とする。某大学でのカーリさんによる講演だったのでした。

速水さんに謝罪のメールをいれると、親切にも速水さんは翌月曜日にもジュンク堂でイベントがあることを教えてくれた。なので、そこに申し込み、なんとか著者カーリさんのお話を聞くことができた。良かった。

ちなみに本はこの時点では、毎度の冒険研究所書店から購入したものの、まだ読み始めていなかった。

ところがイベントは実際すごく良かった! 速水さんの教えてくれた木曜日のイベントには森百合子さんも行かれたようだったのだが、彼女もすごく感銘を受けたとツイッターで話されていたので、行って本当に良かったと思う。(っていうか、森さんと一緒にお話を聞きたかったなぁ、ほんと失敗。自分のバカバカバカ!)

それはともかく、イベントはだいたい50人くらい集まって、それほど大きくない会場は満杯の大盛況。なんというか、通訳の方と二人で座ってお話をする設定だったと思うのだが、カーリさんは立ち上がり、身振り手振りで、ゆったりとしたスウェーデン語で話される。

スウェーデン語を昔ならっていた私でも、なんだか聞き取れるんじゃないかと勘違いしてしまいそうなスウェーデン語だったし、優しい話し方だった。



あれ? そういえば、カーリさんはノルウェー生まれじゃなかったっけか? と言う疑問は、お話を聞く中で、すぐ解けた。

カーリさんはドイツ人のお父さんとノルウェーのお母さんとの間に生まれた。しかしその後戦争が終わり、カーリさんをナチスの子供だと言って引き取ることをノルウェー側は拒否したのだという。

というわけで、当時中立国であったスウェーデンの赤十字が子供達を引き取るということになったのだそうだ。

そしてそこからとても素敵なお父さんに引き取られていく様子を、カーリさんは活き活きと語った。

それは、もう、途中、会場からは拍手があがるほどだった。

詳しくは本を読んでほしいのだけど、とにかくカーリさんの人生すべてがものすごい迫力だった。でも今は本当に幸せそうに、一緒に来日していた旦那さんや息子さんを誇り高く紹介するカーリさんに、こちらも涙ぐむ。

すでに購入していた本にカーリさんにサインをいただいたのだけど、これがなんともヨーロッパのおばあちゃんぽくって、めっちゃ萌える(笑) この数字の書き方とか。



で、帰りのバスの中でこの本を開き、さっそくガシガシ読み始めてしまった。正直、装丁や内容のヘヴィさから読みずらい難しい本かなと想像していたのだけれど、これがめちゃくちゃ読みやすい。

まさにカーリさんの人柄そのものの本。

カーリさんは今、アイルランドに移住してダブリンに住んでいて、この本は一番最初にアイルランドで出たんだそうだ。(こういう本を出す、さすがアイルランドの出版業界!)

その後、この本はスウェーデンなどでも発売になり、今回、偶然にもカーリさんの息子さんのローゲルさんが日本大使館に勤務していたことから、本がスウェーデン大使館の速水さんの手に渡り、速水さんが動いたことによって無事に日本版が発売になったというのだ。(この経緯は、速水さんによる後書きにも書かれている)

何せ読むことを止められない。このイベントからの帰宅のバスでの30分、そしてたまたまこのイベントの翌日電車で2時間くらいの場所にミニ出張があったのをいいことに、がんがん読んで、あっという間に終わってしまった。いやーー圧巻。

なんというか、ミステリー仕立てで、とっても読みやすい。「えーー、この次どうなっちゃうんだろ」とぐいぐいお話の中に読者を引っぱりこむカーリさんの話術もさすが。そうまるでカーリさんのお話を直接聞いているみたいに感じられたのでした。

いやー、とにかくおすすめです。この本、絶対に読んでください。


圧巻のノン・フィクションといえば、こちら。北とぴあで音楽と本祭。7月6日にイベントをやります。著者による講演、指揮者の広上先生との対談、そして先生の生徒さんたちによるミニコンサートなどもりだくさん。

ホワイエではたくさんの音楽本の著者や出版社、そしてバーンスタインにちなんだジャムやベーカリーも出展。楽器体験も計画していますよ。

東京音大の民族音楽研究所の皆さんの出展も決まったので珍しい楽器が見られたり、楽器体験もできるかもしれません。あ、そうそう、チェロの体験コーナーも予定されています。

正式に決定し次第、特設サイトをアップデートしていく予定です。






                    ★

THE MUSIC PLANT次のイベントは5月。CDの在庫セールとクライヴ・グレッグソンのミニライブもあり。無料。クライヴのライブ観覧は要登録。詳細はこちら。http://www.mplant.com/cg/


THE MUSIC PLANT初の「本」のイベント。北とぴあ音楽と本祭 第1弾は『親愛なるレニー バーンスタインと戦後日本の物語』著者の吉原真里さんの講演、広上淳一先生との対談、若手ミュージシャンによるミニコンサートの他に、ホワイエには音楽の本が大集合。バーンスタインにちなんだジャムやベーカリーも出店しますよ。http://www.mplant.com/lenny


スコットランドのトリオLAUが10月再来日。詳細はこちら。http://www.mplant.com/lau/


今年は春のケルト市はありません。

秋のケルト市は豊洲にて10月に行う予定。7月発表。


THE MUSIC PLANTでは本屋も運営しております(神保町&渋谷)。よかったらのぞいてくださいね。時々店長業務もやってます。http://www.mplant.com/index.html#book


THE MUSIC PLANTではアイルランド音楽名盤ガイドをリリースしております。第1弾 Paul Brady、第2弾 Mary Black、そして第3弾は10月発売。すでに制作が始まっております。www.mplant.com/books/


THE MUSIC PLANTCDショップですが、そろそろ店じまい予定。在庫は限られておりますので、お早めに。http://www.mplant.com/shop.html