観ました。話題のドキュメンタリー『正義の行方』
いやー すごいドキュメンタリーだった。
素晴らしい点、
まず映像・音質が最高によい。ドキュメンタリー映画は、その対象になっている社会問題とかが重要なので、普段低予算ドキュメンタリーを作っている人たちを悪く言いたくはないのだが、結構見ていてクオリティが低いのがストレスになることもある。(特に音声)
その一方、この映画は映像、音質ともまったくストレスなし。最高のクオリティ。NHKの番組がベースになっているからなのかもしれないけど、制作陣がプロで一流。いずれにしてもそういったクオリティの面がまず一つ。
加えて音楽がうるさくない。そしてナレーションがない。音楽は最初と終わりに流れるだけ。必要以上に感情をあおらない。これ、ドキュメンタリーにおいてはとっても重要。観客に公平な判断を委ねる。これ重要。
ナレーションも、何かを決定ずけたり、下手すれば観ている人に対する誘導にもなりかねないので、これも「なし」が正解と言えるだろう。
ひたすら関係者の証言だけで、立体的に見せていく。その点がいい。
というわけで、それら点からもめっちゃ私好みの映像作品なのだが、それ以上に良いのはもちろんその伝えている内容だ。
「飯塚事件」については、下に貼った青木理さんのお話がわかりやすく短めなので参考にしていただくとして、とにかく死刑判決を受けた久間さんは、判決後、脅威の短さの2年で死刑が執行されてしまった。
果たしてこれが冤罪だったのか… となれば、私たちは国家権力を使って無実の人を合法的に殺してしまったことになる。
警察側・弁護側・そして新聞という3つの視点から事件はたんたんと語られていく。どうしても気持ちとしては、弁護側のおじさんたちの努力(本当に頭がさがる)、そして過去の報道を反省したところからスタートしている新聞の気骨な男性ジャーナリストたち(これができる報道機関は少ない。偉い)に同情しがちではある。
が、とはいえ、引退したというみんな「いい感じにおじいちゃん」となった警察の関係者たちにも、気持ちがまったく寄せられないわけではない。
が、再びとはいえ(笑)、彼ら側にももう少し反省なり、もっと気持ちの揺らぎや迷いを持った人がいて良いような気がしたけれど。
だって絶対に人間ならば「人を裁く」「人を罰する」ことについては、迷いの連続に違いないからだ。
が、彼らのほとんどは退職した今となっても、心の内を明かさない。この職業に「謙虚」と言う文字はないんだろうかと、ちょっと思わないでもない。
そして、結局真犯人は見つかっていない。…というか、久間さんは本当に犯人だったのかもしれない。が、彼はずっと否認し続けていたんだよね。
そして裁判の原則に則れば、これは無罪ということになるのではないだろうか。(このページを何度も読んでかみしめたい)
また久間さんが犯人でなかったのだとしたら、この残虐な事件を起こした犯人は、普通にその辺を歩いている、ということになる。まぁ、そのことを考え出すと頭がぐるぐるしちゃうのだけど。
ただ圧倒的に言える圧倒的な真実は、私たち国民は「もしかしたら無実の人を死刑にしてしまったかもしれない」ということだ。これは圧倒的な事実だ。死刑は本当に取り返しがつかない。後戻りができない。
久間さんの名誉をかけて、まだまだ弁護団の皆さんの大変な努力は続いている。本当に頭がさがる。この「もしかしたら無実の人を死刑にしてしまったかもしれない」という圧倒的な事実を、ちゃんと見つめて未来を作っていかないと、今のままでは日本はダメだ。
しかし良い作品だった。と同時に、ちょっとやっぱりあきれたのは、まさにこれは男の世界の話だよな、ということ。
見事に警察のおじさんは警察のおじさん、弁護団のおじさんは弁護団のおじさん、マスコミのおじさんはマスコミのおじさんである。いや、みんなかっこいいけどね。映画の制作陣も、これまたおじさんばかりだ。
映画には久間さんの奥様も登場したのだが、顔は見えないボカシがかけられ、パンフレットに彼女に対する記載はまったくない。映画の応援コメントには、『つけびの村』の高橋ユキさん、長野智子さん他、何人か女性がいるのだけれど。
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