本田五郎『膵臓がんの何が怖いのか 早期発見から診断、最新治療まで』を読みました。私の執刀医の先生の本です。

 


なんとウチの先生が本を出しましたー! アマゾンのリンクはこちら。

といっても、どうやら2冊目らしいのだけど、去年の7月にこの本が出た。買うのはすぐ買ったけど、積読になっていたので、やっと今読みました。

私の執刀医、本田五郎先生。私の手術の時(2018年)は、駒込病院勤務(たしか消化器の部長だった)。そして今は女子医大の消化器部長。

本田先生には手術以来、お会いしていないのだけれど(というか、手術1週間後くらいに挨拶にお見えになられて、その時以来)、私の当時の主治医のN先生もやはり本田先生にくっついて駒込から女子医に異動されたので、私は知っている先生方について自分の病院も変えた。(N先生は自分から自分へ紹介状を書いてくれた・笑)

今はN本先生が独立されて開業医になられたので(大学病院勤務だと次男の塾代が払えないと言っていた)、私の担当は同じく駒込病院から女子医に来られたO先生(やはり本田先生の弟子的存在の方)が主治医をしてくれている。

そのくらいの長い付き合いになるチーム本田なのです。

今でも月1回、O先生と会うと本田先生の話題になったりする。執刀医が同じ病院にいてくれるというのは、心強いものなのだ。

駒込病院時代は、関西人のO先生が私の担当になるとは想像もしなかったが、まぁ、とにかく私は恵まれている方で、ずっと同じチームでハッピーにやっているのだから、本当に幸運なんだよね。こういうケースはあまりないんじゃないかな。

この本、難しいかなと思いつつも、先生が本を出したんだしという半ばお義理で購入。それから1年以上くらい積読してた。でもなんかふと読む気になったんだよね。

で、難しい本だと思っていたら、すごく読みやすいし、わかりやすいし、ものすごくいい本だった。膵臓癌になった人や、家系に膵臓がんになった人がいる人は読んだ方がいい。

私も病院にかかる前にこれ読めていればよかった。と言ってもこの本事態、比較的新しいので、私が手術した頃にはこの本は出てなかったのだけど、とにかく膵臓がんって、こんなに難しい病気なんだというのが、すごく理解できた。

っていうか、それをなんとかしちゃうわけだから、外科医、すごすぎる! 

そもそも膵臓って、すごく変な位置にあるから、お腹をあけて手術しても、胃をよいしょと持ち上げて、その奥に手をつっこまないと到達できない。

ちなみにYou Tubeには、そのすごい手術の動画があがっている。リンクは貼らないでおくけど興味ある人はぜひ見て。すごい手術だから! 私も自分の手術前は食い入るように見てしまった。とはいえ、うまく行ってる手術なので、延々みていても妙に退屈ではあった(笑)

まぁ、私のガンについては、ここに何度か書いているけれど、今だに何度も聞かれるので、改めて書いておくと、最初足が妙に痒くなって(手足が痒くなるのは黄疸の初期症状)、変だなと思いつつ地元の内科であるI先生に受診。

そこで2度の血液検査、そしてその結果を待つうちに、黄疸が出てきてすっかり黄色くなってしまった私を「これはおかしい」とI先生が駒込病院に速攻送り込んでくれたのだ。それが、よかった。

まず朝8:30(開院は普段9時なので、開院前に病院を開けてくれたんだよね)に来いと言われ、I先生のところに行くと、その日のうちに速攻大病院送り。

(その日は、私は音楽業界の大先輩とディナーのアポがあったので、キャンセルするのはとても心が痛かったのだが、仕方がない)

その後は、検査を待つ長い行列よりも優先され、すいすいと検査が進んだ。その後検査入院を経て、膵臓ガンだと診断され、すぐ入院、そして手術となった。

そこで本田先生のチームに出会った。執刀は私は当時消化器でNo.2だったO先生か担当のD先生かなと思っていたら執刀も本田先生ご本人がやるよと聞いて、安心するとともに、えっ、そんなにすごい手術なんだとびっくりもした。

実際手術は8時間におよび、超難易度の高い手術だったらしい。

だから本田先生は私の命の恩人なのだ。しかし当時の私といえば、ブログにそれを詳細に書かなかったこともあって、すっかり今では記憶が薄れている。

匿名でもいいから病人ブログ書いておけばよかったと後悔するのだが、本当に具合が悪い時って、ブログ書いている余裕なんてないんだよね。

で、自分のことを書き残すよりも、それ以上に控えていた海外レコーディングやツアーをどうするかというところに来ていたので、そっちに忙しく、正直あまり病気の説明も真剣に聞かなかった。

なんというか興味もわかないし、そもそも自分が死ぬかもということもあまり実感がなく、死んだら死んでも、それも人生だなくらいに思った。幸いにも子供もいないし、養っている家族もいない。やりたいことはほぼ実現してきた人生だから早く死ぬのも悪くない、くらいに思っていた。

だから病気のことは自分でも勉強する間もなく、先生たちに任せっきりで、ちゃっちゃと手術を終えた。とにかく早く切って出してもらって、すっきりしたいというのが本音だった。TO DOリストをこなし、毎日ゴロゴロとして、入院時は本を大量に持ち込んだが、それも読まずにゲームしたりしてた。(本当に力がないと本も読めなくなるんだなと実感した)

それでも書いていた毎日のブログ(具合のことはあまり書かなかった)は、さすがに手術当日および集中治療室に入っている期間は書けない、ということになり、ブログはお休みしますというのを初めてここに告知した。1週間くらい書かなかったかな?

その後5年たって、転移が見つかったりもしたけど、どっちにしてもそれは早期で、あっという間に内視鏡みたいな手術で手術完了してしまった。

というか、取る前にはガンだと判断がつかず、なんか気になるから検査もかねて取ってみましょうと取ってみたらガンだったという経緯。

(すごいよね。私はこの時、この先生たちにかかっている間は死にたくても死ねないかもしれないと思った。とはいえ、このO先生のウルトラCに、私は頭があがらないのであった。なんか負けた感。O先生の満面の勝利の笑みよ)

今も肺の、今度は右側に小さな影があるが、それはまったく大きくならないので、経過観察中という状態である。ガンに違いないのだが、それにしてはまったく大きくならない。いつまでたってもグレーで、2018年の手術以来の三ヶ月ごとのCTをいまだ卒業できない私だが、それも仕方がない。

なんというか、CTでその影を見るたびに、消化器担当のO先生と、肺担当のI先生は、いつ手術してやろうかと身構えているのがわかる。はぁ、ガンでなくても取っちゃおうかなぁ。

まぁ、来年暇な時期にやってもいいしなぁ、と私はぼんやり考えている。特に比較的優しいO先生と違って、肺のI先生(女医さんです)は妙にストレートで容赦がない。会うたびに取っちゃいたい感を隠そうともしない(笑)。

というのが現状なのだけど、改めてこの本、読んで、私はやっと膵臓癌の怖さを理解した。

この本にも書いてあるとおり、当時から私が手術をした駒込病院は「臨床コース」と言って(といってもすでに10年以上実績あり)、いきなり手術をするのではなく、放射線や投薬でガンを小さくしたり、ガンの予備軍をやっつけたりしてから手術を行うというコースを推奨していた。

私は標準コースと臨床コースどっちがいいですかと言われて、先生方も臨床コースの方が頑張ってくれるだろうと思い、臨床コースの方にした。それによって取った時のガンは7mmだったそうだ。放射線前は1cm超えていたのだろうか。それはCTにもMRIにも映らないから、わからないのだった。(そこが膵臓癌の怖いところ)

なので最初は放射線の治療ということで入院。この時の入院はなかなか楽しかった。病院自体新しい経験だし。そして本田先生のチームはすごくみんな優秀な感じで、若くて、フジテレビのトレンディドラマにでてくるような先生ばかりだなぁと思ったが、唯一放射線の先生だけは、いかにも「お医者さん」と言った出で立ちで、この先生もすごく親しみを持てた。

(この先生はしかし突然数年前に心臓だかなんだかで亡くなってしまった。唐沢先生、ありがとうございました。ちなみに唐沢先生の奥様も放射線の先生をしている)

看護婦さんは親切で優しく、プロフェッショナルで、私は駒込病院で幸せだった。今の女子医も大好きだけど、入院環境は駒込の方がよかったかも。

とにかく私はなんだか安心しきっていて、あまり深く考えることもなく、手術を終え、そのまま一時は栄養不良になってヘロヘロ状態だった時期もあるが(あの頃はまじで死ぬかとも思ったけど、そういう時期もなんとなく終わってしまった。今はほとんど記憶がない)、今は元気に生活できている。

でも実際、私がガンになるのが、もし5年早かったら、私も助かっていなかったかもしれないとこの本を読んで思った。そのくらい膵臓がんは怖い病気であり、今でも膵臓がんの生存率は10%行ってないと思う。そういう意味では、頑張る先生方のためにも、私はいい実験台にならなくちゃなぁと思う。

今の主治医のO先生によると、この本を読んできてもらうと膵臓がんについて細かく説明しなくてもいいから、すごく助かるのだそうだ。

というわけで、膵臓がんになった人、もしくは親戚に膵臓がんの人がいる人(この確率はとても高いのだそうだ。ある程度遺伝の要素がある)は、ぜひ読んでもらいたい一冊です。

ほんと膵臓がんは他の癌と性質が違う。大体の人は発見した時には手遅れということが多い。

私は運良く早い段階で黄疸が出た。でも黄疸が出なくても、その翌月には毎年行っている血液検査があったはずだから、そっちで引っかかっていたはずだとは思う。

けど、それにしてもラッキーではあったわな。

ちなみに、これもよく聞かれるんだけど、ガンの検査のために、わざわさ高額で身体に負担がある検査は受ける必要はないと思います。でも血液検査は気軽に受けられるから、年に一度やっておくのは、ありとは思う。何かがおかしければ、大抵のことは血液検査でわかります。

ちなみに癌の原因だけど、そもそもおじいちゃん二人が膵臓がんになっている(といっても二人とも超長生きだった)ことで、遺伝子的要素があるということ。

あと変な話だけど、私個人的には「太り始めたなぁ」と思い「スポーツしなくちゃなぁ」と荒川土手を走り始めたことが原因だと思っている。

土手をガシガシ走り、走ることで、食べ物も飲み物も抜群に美味しく感じられるようになった。そして暴飲暴食が進んだことが原因だろうと自分では思っている。そもそも飲む体質じゃないのに、あの頃は赤ワインとか大好きだった。

でもそれは勝手な解釈だけど、とにかく私のガンは運の良い位置にできたから早めに症状が出て、かつ本田先生に見ていただいたことでちゃっちゃと手術ができた。たぶん、これが5年前だったらたぶん私は助からなかったかもしれない。そのくらいこの膵臓がんは難しい病気だ。

今だって5年生存率は7、8%だと思う。他のガンより圧倒的に低いのだ。それに臨床コースにしなかったら、転移はもっと進んでいた可能性はある。

私はいつ死んでもいいと思って生きているからいいのだけれど、運悪く膵臓がんで亡くなった人たちは本当に気の毒だ。

とはいえ、ガンは準備ができるのが良いよなぁと今でも思っている。悲劇なのは事故で死ぬ方だ。先日読んだ「サクリファイズ」にも書いてあった。人間は物語を作るのだ、と。

物語を作る間もなく、あっという間に奪われてしまう命はやっぱり可哀想すぎる。

ガンで死ぬのがいいのは、治療中にに残される人も本人も自分の物語を作れるから良いのだ。それって人間としてすごく重要なことだよなぁ、とも思った。

長くなりました。本田先生、実は私と同じ荒川土手ランナーでもあるらしい。もっとも土手で会ったことは一度もないのだけれど。他の先生の情報によると日曜日に走ることが多いそうなので、日曜日は本田先生に合わないように、なるべく走らないようにしている。

本当に本田先生、ありがとうございました。アマゾンのリンクはこちら。

こちら医療関係の業界誌に載った、五郎先生。かっこいい。