来たーーーーーーーーーっっ こういうのが読みたかったのよ、こういうのが! というわけで、クレア・キーガンの『ほんのささやかなこと』を読みました。こういう本に出会うため、私は本を読んでいるのだと思います。
ガイドの直子さんも絶賛してたので、
彼女のブログもぜひ。っていうか、直子さんの方がこの本の魅力を伝えるのが上手だから。
まさに「そう、そう、そう!」と私もこの本を読んだあと、また
直子さんのブログを再読し、うなずきまくっているわけです。
読んでー(と3回リンクを貼る・笑)
本当に細部がいい。細部がすごくよくって、そしてお話は…今の日本にも通じる本当に大きなことを伝えている。80年代のアイルランド。まだ洗濯屋があったころのアイルランド。これはやばい。っていうか、英語でも読みたいなぁ!
洗濯所はご存じですよね。かつて映画でも『
マグダレンの祈り(The Magdalene Sisters)』や『
あなたを抱きしめる日まで(Philomena)』などの傑作が生まれていますが、アイルランドでは”ふしだら”と認定された少女、女性たちが戒めとして家族や地域によって、無理やり洗濯所に入れられ奴隷のような生活を強いられていたという黒歴史があります。
最後の洗濯所は1996年まであったというのですから、驚き。私が初めてアイルランドに行ったのは91年だったので、あの頃は、まだ存在していた…ということ。そのくらいカトリック教会の力は強かった。
そういった社会問題(というか当時は問題だと思う人もいなかった)が存在していた閉鎖的な1985年のアイルランド。そこが舞台です。洗濯所の存在を偶然目撃し、知ってしまった男性が主人公。自分の子供である女の子たちも同じ運命を辿る可能性があるのかもしれない。最終的に男性が取った行動は?
著者はクレア・キーガン。あの『コット、はじまりの夏(Quiet Girl)』の映画の原作も彼女のなんだよね。そういやコットの原作本『Foster』も読みたい。読みたいんだけど、こちらは日本版が出てない。うーん、英語で読むか。おらーーっっっ(泣)
訳者後書きによると、この『Small Things Like These』は訳を手がけた
鴻巣友季子さんの大プッシュで、日本版出版が決まったらしい。素晴らしい、鴻巣さん!
以前もここに書いたけど、本当にクリエイティブな仕事をしている翻訳者さんは、受注仕事をするだけでなく、自分で訳したい本を出版社に売りこむ。こういう職業観、本当に共感する。
いわゆるアイルランド特有の固有名とか、ブランド名や、細かい生活の描写もたくさん出てくるのだけれど、そこには細かい注釈も入り、アイルランドことを知らない人にも、とても親切な訳となっている。
一箇所だけ、アイルランドの警察はガーダじゃねぇの?と思いつつ読み進め、おかしいなぁとググったら、アイルランドではガーダじゃなくて、ガルディって複数形で呼ぶ方が一般的だそう。私もアイルランド通をきどっていて、まだまだ知らないことが多い。だから鴻巣さんの訳は正しい。
ほんと、こちとらはアイルランドのことばっかりやってるのに、全然「ガルディ」という呼び名は、知らなかったよ。
今や円安のこのご時勢で、翻訳本の値段はちょっと高いけど(この本は2,420円)、でも絶対に買う価値ある。
なんといっても、短いので、あっという間に読めちゃいます。私は一晩で読みました。
それにしても、『Small Things like these』ってタイトルがいい。特に「Small」を「ほんのささやか」と訳す、鴻巣さんのセンスがいい。
鴻巣さん、実は、私、神保町の本屋で棚仲間なんですよ。一度、神保町で1日店長やってた時に、書店でお見かけして(鴻巣さんは納品に来られたようでした)、話かけようと思ったけど、ちょうどレジやってて(笑)、お話できなかったのだった。惜しい!
そしてこの日本版の愛情のこもった装丁よ!! カバーを取ると、ペパーミントのすごく素敵な本になっている。やっぱりハードカバーはいいなぁ。早川さん、グッジョブ!!!
この本、ケルト市で売れないか検討中。先日ケルト市用に入れた『中世ねこの暮らし』も10冊仕入れて、3ヶ月経たないのに、もう全部売れちゃったから、こういう移動自主本屋活動、楽しいよなぁと思う。そういや、あの猫本も、2,000円台だった。翻訳本は高い。
あとは、出版社が卸してくれる、本の値段がなぁ。もう少しパーセンテージがなんとかなったらなぁ…と常々思う。しかし著者の方ですら8で購入しているのだから、ひどい。さらに言えば、著者ですら最近は「書店を通して」購入するように言われるらしい。ありえない!
アマゾンみたいにカタログ勝負の場所に半額で卸してる出版社の営業さん、売る気がある著者や、私みたいな売る気がある自主書店に、その捨ててるパーセンテージを幾分かあげた方が絶対に売れると思いますよ。なんちて。
それにしても映画への期待も高まるな。エミリー・ワトソン大好き(あの『レッド・ドラゴン』での盲目の女性の名演は忘れられない!)、キリアン・マーフィーもいいじゃないですか。期待。日本に来るのは…おそらく来年のアイルランド映画祭には間に合わないだろうなぁ。
著者ご本人が読者の質問に答えているところ。興味深し。お話の終わり方について、タイトルについて。また主人公はモデルがいるのかという質問に、完全に彼女のクリエイションだと答えています。
自分でキャラクターを作るのが好きみたい。でも、書き終わった今は「He is existing now」とも言っています。キャラがきっと本の中で動き出すんでしょうね、きっと。すごいな。
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THE MUISC PLANT 次の主催公演は、2025年4月FLOOK。
FLOOK 2025
22 April(火)南青山曼荼羅
23 April(水) Shibuya www
26 April(土)春のケルト市(豊洲)
27 April(日) 横浜 Thumbs Up
28 April (月)名古屋 Tokuzo
30 April (水)京都 磔磔