先日の渋谷の店長は、なかなか楽しかった。まぁ、毎度のことなんだけど、あそこの客層はなかなか面白い。普段自分では全く接触しない層のお客様にあえる貴重な機会だ。
上の東急のシアターから降りてくるマダム系のみなさまたち、週末になると親子連れ、そしてデートの途中の若者たち。本が目当ていうわけでもなく、ぷら〜っと「ここは何屋さん?」って感じで入店してくる人が多い。
平日に来る人たちで多いのは、納品や自分の棚の状況をチェックに来る棚主たちだ。中にはなかなか面白い人もいて、話をしていると「やるなぁ」と自分の仕事へのヒントをもらって感心することもあるし、この人、相当変わってるなーみたいな人もいる。
大抵の棚主は、本が売れないことに心やぶれて割と早期に撤退していく。その割合は他にも私がかかわってる神保町の棚本屋よりも渋谷の方が高いだろう。まぁ、神保町がちょっと特殊なので、渋谷の方が標準かな。
平均してどのくらいで棚主は変わっているんだろう。渋谷の本棚も、今、5つ6つ空いているんじゃないかと思う。
とはいえ、やはりヒカリエで店長をやることのメリットは大きい。なにせヒカリエだ。普通にポップアップしてたら、1日10万取られてもおかしくない場所。
また平日は運営会社の人が誰も来ないので、かなり自由だ。好きな音楽をかけ、ラップトップを広げて内職もしやすい。
先日の渋谷のポップアップは、私よりちょっと年上かなぁというお姉様を一人、ケルト文化に引き摺り込むことに成功した…と思う。
実際、その方は「新しい世界が開けました」と結構感動しながら、本も購入して、帰っていった。こういう出会いが、まぁ、数名いたら、ポップアップも悪くないよな、と思ったりする。
面白いなぁと思ったのは、「へぇ、ここが今、流行りの棚本屋かー」とばかりに店に入ってきて「写真撮っていいですか?」となって、写真をばちばち取っていく人たちの存在。
こういう人は、写真を撮ってシェアしてくれるし、情報の発信地にはなってくれるけど、本は絶対に買っていかない。これ、音楽にも言えるんじゃないかな。理屈や発信が多いほど、実際は経済まわしてない。
一方、実際の本の購入者は、もしかしたら本の感想をどこかで発信してくれることもあるんだろうか、とも思う。どっちが商売にとって大切かは、一目瞭然だ。これを見誤ってはいけない。
それに「お店屋さん」をしていると、いずれにしても心を広く持たないといけない。情報だけ搾取し、お金を落とさない人たち(=バブル期の代理店やメディアの連中みたいな人たち)を疎ましく思ってはいけない。お店を広げているかぎり、そこはある程度パブリックな場所なのだ。
とはいえ、先日は延々と店のカウンターで時間をすごしたというのに、まったく買い物をしないカップルがいたりして、いったいこの人たちはどういうつもりなのかなと思ったりした。
普通カップルだったら、少なくともどちらかが常識を発揮して「ここ、こんなに長居して悪くない?」などと思ったりしないのかな。ま、無理か。
が、それもなにも、とにかく「お店屋さん」をやるからには広い心でいないと、と思う。だから実際お店をやっている人は、本当に大変だよな、とも。BtoBビジネスとは訳が違う。もっとも日本の経済、そのほとんどがBtoBなわけなのだが。
とはいえ、楽しいのはお子様が来た時で(笑)ついつい頼まれてもいないのに、本棚の裏の穴蔵(笑・あそこは子供に人気だ)に案内したり、絵本の読み聞かせなどしてしまう。
子供の相手をしてあげると親はゆっくり本が見れるので喜んでくれる。私も子供と遊んで楽しい。ウインウインだ。
先日はついつい、めちゃくちゃ可愛い子(その子はショーン・レノンの子供の頃にそっくりだった。ヘアスタイルからなにから)がやってきて、穴蔵に誘導するだけではなく、自分が販売していた北欧の可愛い絵本まで売らないであげてしまった(笑)
ショーン・レノンは嬉しそうに本を抱えて帰っていったけど、そういやあの父親も本を一冊も買わなかったな!(笑)別にいいんだけど!
と、こういう社会の様子を知るためだけでも、本屋の店長はやる価値がある。それになんといっても自分の好きな本を説明しながら売る楽しさよ!! まぁ、売れないことがほとんどなんだけどね。特に渋谷の店は!
それにすでにケルト音楽のマニアを喜ばせることばかりしていては、ファンは増えない。とにかく外へ、外へ。それが私の役割だと思う。なかなかイバラの道だけど。
そういう意味ではパブリックに開いている場所を都心に二ヶ所確保しているというのは、我ながら悪くないアイディアだなと思う。
それになんだかLAUより、FLOOKの音楽の方が何も知らない人には響くらしく、映像を流しているとかなり多くの人が足を止めてモニター(というか、私のiPad)をのぞいて立ち止まる。
そのたびにチラシを配っていたら、結構な枚数配れるから素晴らしい。LAUの時なんか、ほとんどの人が興味を示さなかったのに! 不思議だよなぁ。そんなに違うかなぁ。
あ、そうそう、渋谷の店は週末は運営会社のバイトだか社員さんだかが入って店頭を手伝ってくれるのだけど、今回の男の子はなかなかよかった。チャラい感じで、若かったから、どうなのかなと思っていたら(過去にはずっと穴蔵で昼寝をしてるバイトさんもいた)
思いの外真面目で、丁寧に床を掃除したりして、今までの社員さん(バイトさん?)の中で一番よかった。原ドーナツを一個揚げたら、美味しい、美味しいとえらく感激し、アイルランドに興味を示していた。いい子だな(笑)。
あの子もケルト文化に興味を持ったのかしら。大使館でもらったパンフレットを特別に手渡してあげた。
というわけで、今度は神保町の店で3日間、店長をやります。神保町の店はまじで週末の店長業務は激戦区で、ブッキングが公開になる1ヶ月前の深夜、パソコンの前でスタンバっていないとシフトが取れない。今回奇跡的に取れたので、金土日の3日間、やりますよ。
ちなみにすでに神保町の店では直子さんの本が入荷した分すべて売れてしまったので、また納品しないといけない。
あと翻訳家の鴻巣さんの本棚も、私の棚の斜め上くらいにあるのだが、鴻巣さんが訳した、私の今年のアイリッシュ文学激推しの「ほんのささやかなこと」をずうずうしくも私の棚に置かせていただいている。
さて今度の週末はどんな出会いがあるだろう。
神保町パサージュはすずらん通り、神保町の駅から徒歩3分くらい。こちらが地図。28、29、30日。12時から19時まで店頭におります。遊びに来てね!