「驚きの英国史」コリン・ジョイス 他

先日ピーター・バラカンさんに会った時、この本を薦めてくださったので、さっそく読んでみた。うん、すごく面白かった。

短いコラムを集めた感じなので、簡単に読める。特にこのライターさんはアイルランド系ということでアイルランドに関する話が充実。面白い。

筆者は70年生まれ。オックスフォード大学卒。ニューズウイーク日本版などに係わり日本に長く住んでいた記者さん。

例えば「聖パトリック」の章。意外と知られていないのだが、セントパトリックは実はブリテン島生まれだったということ。そして誘拐されて奴隷としてアイルランドに連れていかれ、なんとか必死の思いでブリテン島に戻ったが、また布教のためにアイルランドに渡った、というもの。なんと彼が書いたという手紙まで残っているらしい。紀元400年くらいの話。彼以外にも布教に努力した人もいたし、彼が最初の一人というわけでもなかったが、なぜか彼が一番慕われて、布教のシンボルみたいになった…というわけだ。意外と知らないよね、こういう事実。

それにしても歴史というと大雑把に史実をざっくりと覚えるだけしかしてないことが多いが、実は細部こそがおもしろいのだわ。

アイルランド独立戦争の章の最後で「彼はイギリスを倒す法的式を見つけた。軍事面で勝つ必要はない。ただ負けなければ良いという事だった」という文章を見つけて爆笑してしまった。これってアイルランドの今のメンタル面にもすごく言えてないか? アイルランドを語る時「絶対に負けない」って最強のキーワード。ホントにアイルランド人には根性がある。そしていつでも根拠の無い自信に溢れている。それはここから来ていたのか!と改めて思ったりしたのである。

そして他に印象に残った章。これはアイルランドとは関係ないのであるが「ノルマン人は英語をこんなに面倒にした」という章。ノルマン人の支配層がフランス語を話したので、ノルマンの言葉が英語にたくさん残ったという話だ。英語にはまったく同じ意味の単語が2つある場合がある。例えばstart - commence、 end - finish。 かすかにニュアンスが異なることもあるのだが、単に余計に言葉を増やしていることも少なくない、とジョイス氏は分析する。ノルマン・フレンチはラテン語が起源で少しだけ「おしゃれ」な響きがする。merchandise(商品)をpurchase(購入する)と言えば、goodsをbuyするよりおしゃれな感じがするし、少なくともおしゃれだと思ってほしいことが分かる。またbrotherlyとfraternalは「兄弟のような」という意味なのだが、fraternalという単語を知らないイギリス人も多い。(私も知らなかった)他にもfix - repair 、ask - enquire、times - occasions、odd - strange などいろいろ調べてみるとおもしろそうだ。英語は私は大学受験時にしっかり勉強しなかったことが災いして、ホントに今でもいやになるくらい語彙が少ない。こうやってペアにして覚えれば、意外と頭に入ってくるのかな…が、仕事とかで簡単な言葉で何でも言い回せてしまうと、それ以上学ばないのも事実。あああああ〜 英語って本当に難しい。

あと私も知らなかったのだが、金髪の、という形容詞。サクソン人はFairと言ういい方をしたが、ノルマン人が別の単語を持ち込み、その変形が今でも残っている。だから男性の場合He is blondだけど、女性の場合She is blondeで、最後にeが付くの出そうだ。今,知ったよー!! ノルマン人!!! まったく英語を面倒くさい言語にしやがってーーーと私などは思うのであった。

さて、左の写真は数週間前に読み終わった、こちらもユニークな本。72年来日、滞在歴40年のスチュウット・アットキンさんによる「Trad Japan」の2冊。こちらは英国人による日本文化紹介コラム。同じ内容のものが英語と日本語が交互になっていて、英語の方には言葉の使い方の注釈もついていて、とても勉強になる。トイレに置いているだけで,あっという間に読めてしまった。こちらも大のおすすめ!