「死の淵を見た男〜吉田昌郎と福島第一原発の500日」を読みました

結構、前に読み終わっていて、感想がアップできないままずいぶんたっちゃった。早く書かないと忘れそうだから、書く。

ショッキングなキャッチが帯に踊り、タイトルに踊りますが、実際すごい内容でもある。究極の場にたたされたことは間違いない吉田所長と作業員の皆さんの500日。この作者の方はよく知らないが、とにかく多くの人に長時間インタビューしたということで、ある程度信憑性もあるのではないかと思われるドキュメンタリー。

書き出しからして、ちょっとドラマチックすぎて、なんか違うと思ったけど、田舎の町と東京電力って、こういう事なんだ…と理解するには、このくらい書かないと駄目なのかな、とも思う。

私は千葉県出身だけど、東京で就職する以外は眼中になかったな… 田舎で就職しようなんて思いもしなかった。でもここの人たちは違う。そして原発が出来たことによって出稼ぎしなくても大丈夫になった、地元にいられるようになった… 田舎に住む人たちにとってそういうことはものすごく大きい。

他のいろんな文章やニュースソース同様、吉田所長については、とにかくすごいということがたくさん書いてあった。彼のことを悪くいう文章や資料にはあたったことがない。実際彼こそ日本を救ったのだと思う。今までちょこちょこ入ってきた「東電幹部をどなった」とか、そういうエピソードも、この本でやっと経緯が理解できた、とも思う。

いよいよ危ないといって「必要最低限を残して」作業員を返すシーンなどは圧巻だ。それにしても現場にいた人でも何が正しいとか、これが真実だとかジャッジできない部分はたくさんあると思う。外野は無責任にいろいろ言うだろうけど。

雇われの外部作業員なんかは「私は雇われの身で社の命令だから原発から離れないといけない」「でも私は戻らなくては。社長、許可してください」…みたいな。そういう証言がバンバン実名で出てくる。いや、社長としては絶対に許可はできないだろ、そういう時は社長、クビにしてくださいって辞表ささないと… でも涙ながらにその社長は許可したみたいだ。そうやっていったん離れた人が、どんどん戻って来たらしい… なんか想像できるような、出来ないような… 考える。ほんとーに考える。いったい、こういう時どうすればいいのか。自分だったらどうするのか、など。そして仕事っていったい何なのか、と。 

あちこちで批判されたり、また逆に多少同情されてもいるようである菅首相の突然訪問については、私はこの本を読んで、なんかすべてが理解できたようにも思った。詳しく書くとネタばらしになるけど、菅さんの悪いところがもろに出ちゃったね、という印象。でもきっと今でもご本人は何が悪かったか分かってないのだと思う。菅さん、いいところもあるし、私は民主党は今でも好きだ。好きな政治家が何人かいる。でもやっぱり菅さんは総理の器じゃなかった。そういう事なのかな。私に何が分かるわけでもないけど。あとこの本の著者はあきらかに菅さん嫌いだな、というのが見てとれるから、なるべく慎重に読んだつもりだけど。

班目さんの言い分も、この本で、なんとなくここで理解できたような気持ちになった。でも実際この責務を負うものとしてはあまりにも、この人、器が小さい。そういう印象。そういう人たちが原発をまわしていたわけだから、なんて危うい日本。一方、あのボーっっとした印象だった東電のムトゥが意外に頑張ってるシーンとかもあり…

入院中の吉田所長はあまり調子が良くないご様子だ。心配だ。彼に何かあったら、日本全体への、福島の、そして作業に励むの皆さんへのショックが大きすぎる。本当にがんばってほしい。吉田所長とそのご家族の皆さんにフォースを送る。