マルコム・グラッドウェル「採用は2秒で決まる」を読みました

またもや積ん読山の切り崩しの1冊。そしてまたもやグラッドウェル。またもやTHE NEW YORKERの連載からの傑作選。マルコム・グラッドウェル「採用は2秒で決まる 直感はどこまでアテになるか?」を読みました。

このTHE NEW YORKERのシリーズ3冊とも読んだけど、これが一番面白かったかも。

まず「大器晩成:天才=遅咲きの花か」というコラムでは、早熟な天才(ピカソ)と、いわゆる努力型の大器晩成タイプ(セザンヌ)を比較してユニークな視点を展開している。

ピカソは鮮烈な輝きを放った早熟の天才で「私には“探求”という言葉の重要性が分からない」と言ったそうだ。まさに生まれながらの天才のスーパーひと言だよね。一方の遅咲きの花タイプは、常に実検型だ、という話。少しずつ少しずつ花開くその場所まで試行錯誤の上で到達していく。なるほど、すごく面白い。

もちろんピカソやセザンヌに自分をなぞらえるなどトンでもないが、誰でも自分の今までのキャリアにおいて、少しでも「上手くいった」と思っている人は、どちらの道を進んで来たのか検証することをしてみてもいいんじゃないか、と思う。

お風呂で読むのにカバーはずしてたら
どっか行っちゃった。
「危険なプロファイリング:犯罪者分析は容易につくられる」では、実はプロファイリングが何も語っていないことをするどく指摘する。私たちは言葉のウワっつらだけで、結構なんだかんだと説得させられてきてはいないか。これまたあれこれ自分のことを考えるのに、役立ちそうな話だ。

同じことは最後の「トラブルメーカー:アメリカン・ピットブル・テリアが犯罪について教えてくれたこと」というコラムにも言える。統計もちゃんと吟味しないで印象だけで物事を語っていないか、と。ピットブルが人を殺す事故が多くおこっていたエピソードを取り上げ、実はレトリバーだって人の顔を噛みちぎるような事故を起こしているのだ、と。本当に事故を起した要素はビットブルである、ということではないのだ。そして物事を分析する上で、いろいろな統計を吟味し、あらゆる角度で検証することの重要性をとく。物事は1つの理由から起こるのではない。複数の理由、複数の要素が交差したとき、そのポイントにおいて発生するのだ、と。

そして表題になっている「採用は2秒で決まる:就職面接で本当にわかること」 これは人を採用するときの難しさを説く。人を採用する時、70年代ごろの、例えば小さな個室でデスクに向かいつづけるような仕事においては人のパーソナリティよりも、その人が何ができるか、という事の方が重要だった。今はいろんなことが流動的だ。今や職場でスーツを着る必要性も減ってきているし、企業は従業員たちに柔軟で革新に満ちた、官僚主義のない自由自在なグループの一員でいてもらいたい、と。そういう環境においては職場はレクリエーションルームで、本人自身のパーソナリティの特性が非常に重要となってくる、と。なるほどねぇ…

グラッドウエルはなんといっても、この「急に売れ始めるにはワケがある」が最高。ちょっと前に書かれた本だけど、今でもこの仕組みは変わってないと思う。積ん読山崩し、まだまだ行きます。この次はアイルランドのロマンチックな短編集を手にとった。



PS
現在、21日土曜日。オウムのドキュメンタリーをテレ朝でやっている。これもいくつかの要素が…集まって起こった事だと思う。1つの理由だけではない。本当に考えさせられる。