いや〜、すごいものを見た。すごかった。すごい迫力。佐野史郎さんの朗読…というよりか、ほとんど演技だよな。座って読んではいるのだけど、まるで情景が浮かぶような圧巻の八雲に、私はすっかり物語の世界にトリップしてしまったよ。5月26日 ヤマハ銀座スタジオにて。
そして山本司さんのギターが泣き叫ぶように歌う。うーん、こんな音まで出しちゃうだ、ギターで…というところもあって、本当にすごい。息のあったお二人が紡ぎだす八雲の世界。そういえば、二人とも八雲の故郷、松江の出身なのであった。
そしてお二人のステージの前には小泉凡さんのレクチャー。八雲の世界が「怪談」だけではないこと。まさに混沌とした今の時代に求められている八雲の「オープンマインド」、そして故郷を思う気持ち、母を思う気持ち、自然に畏敬の念をいだく気持ち、そんな事が紹介される。
そもそもこの朗読ライブは2006年に佐野史郎さんの朗読を小泉凡さんがお手伝いする形でスタートし、翌年から山本恭司さんが加わって、8年に渡って八雲の魂を伝えてきたという。
左は「幽(ゆう)」という雑誌に載った今回の「望郷」のスクリプト。ト書きが興味深いよ。この週末じっくり読もう。
ステージは「怪談」だけではない八雲の世界を次々とその空間に再現していく。佐野さん曰く「ギリシャ向けのBest盤みたいな感じ」だそうで、いわゆる恐いお話
「水飴を買いにくる母親」や「寝ている布団から子供の声がする」の話の他にも、牧歌的なおとぎ話の「若返りの泉」や、凶悪な殺人犯の護送でのエピソードを語った「停車場にて」。そしてあまりにも美しい、でもささやかな自然を愛でる「つゆのひとしずく」など。「つゆのひとしずく」これって、まさにいつか鶴岡真弓さんも言ってた、ミクロなものにマクロを見いだすケルトの心だよね! ちょっと仏教みたいでもあるけど。ちなみにギリシャでは、これが一番受けが良かったらしい。さすが哲学の国!? でも確かに極めて「和」でもあるから、八雲に日本的な何かを期待してたらそういう事になるのかもしれない。
「幽」に載ってたグラビアより。夕日の写真は、右がレフカダ。左が松江の宍道湖。
昨年ギリシャのレフカダではじまったツアーは、この東京でいったん終了。でも秋にアイルランドでの上演も企画されているという。見に行かなくちゃいけないな、こりゃ。本当に楽しみ!
ところで会場には偶然にもこの春、松江で公演をなさるという松田美緒さんと渡辺亮さんもいらしており、数日前のライブの感想をお伝えすることが出来た。これぞ、凡さんが言う「八雲のいたずら」か?! そして渡辺さんが1968年10歳の時に、八雲に憧れ訪ねた松江を描いたというイラスト&感想文が素敵だから、是非ここものぞいてみて!
そうやって…なんだかすべてがつながっている。それが素敵だなぁ、と思うのは、やっぱり伝統音楽みたいな仕事をしている上での、他では得られない大きな喜びだ。大きな流れの中にいる自分が感じられる。そう思うといろんなことが恐くなくなる。