映画「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」を観ました


試写で拝見しました。ありがとうございます。「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」(まだ公式ページが出来てないみたいだったので英語ページです)

なるほどー こういう裏方?さんがいたのね。全然知らなかったよ。オランダ人の伝説の銀行マン、フランズ・アフマン。70年代半ばから90年代にかけて、アメリカのインディペンデント映画に深く、ふかぁ〜く係った。彼の存在なくしては実現しなかった映画は、なんと900本以上にのぼる。しかもどれも有名作ばかり。「ダンス・ウィズ・ウルブス」「プラトーン」薔薇の名前」「眺めのいい部屋」「恋人たちの予感」…こうした作品をサポートしたのが、実はオランダ人の銀行マンだったことは、まるで知られていなかった。

いわゆる脚本が出来ると配給から、ソフト化から、なにからすべてを先に回って、人脈をつなぎ、映画を出資というよりか「投資」案件にしてしまう、というビジネスモデルを確立した張本人である。

このテの隠れたヒーロー伝説を知って言えることは、こういう、なんというか、いろんなことは個人のちょっとした動きで大きく歴史が変わってしまうってことだよね。特に巨大マネーを動かすことのできる銀行マンなら、その権力たるや絶大だ。経済なんて単なる血液の流れだけだったりもする。気のきいた人間が1人歯車の中にいれば、驚くほど大きく事は回ってしまうのだ。

時代が彼に味方したのか。まぁ、でも出て来る人たちのファミリー・ネームからイメージさせられるように、いわゆるハリウッドのジューイッシュ・コミュニティに上手く機能したのかも、という見方もできるかも? 私は映画の世界のことはよくわからないけど…。

それにしても銀行員という職業は、お金が大きく幅を利かせている世界において、非常に大きな可能性を秘めている、ということ。そこに文化に理解がある、というだけで、大きく事が羽ばたいてしまう。逆にそこに理解がなければ、可能性のあるものも簡単につぶされる。予算がある、というだけで、事はまるで変わってしまう。

ウチなんか銀行からも、どこからもお金かりないで運営してるけど(っていうか、貸してって言っても誰も貸してくれないだろうし)スポンサーもいないから、いつまでたっても小さい事しかできない。でもそれでいいのだと思う。その方が私の身の丈にあっている。予算があれば何か大きなことが出来たのかもしれないが…まぁ、それはまた別の話。

ずいぶん前に週刊モーニングで連載してた「この女(ひと)に賭けろ」という銀行漫画を思い出した。銀行員の主人公は、おっとりした性格の女性でまったく気負いがないものの、いわゆるキャリア・ウーマンで、自分のビジョンをしっかりと持ち、人脈をつなぎ、男社会の荒波をスイスイ泳ぎ仕事をしなやかにこなして行く…といったストーリー。結構好きで単行本も全部持ってたのに、今はどっかにやってしまった。今また読んだら面白い発見があるかもしれない。(彼女の印象的な発言に「女で損をしたことがありますか?」と聞かれて「生理中、眠くなることかしらねぇ」と答えていた、というのがあって、すごくよく覚えている。私も似たような意見だから!w 私もおめでたい性格で、女だから損をしたと思ったことは一度もない)

話を映画に戻すと、このドキュメンタリーはこの銀行員さんのお嬢さんが、死期に近いお父さんをインタビューして制作したのだという。ハリウッドの大物たちが、次々出て来て、彼を讃える。最後は悪役(?)が登場し、銀行員さんは自分で作ったその「システム」から追われて一線から退くのだが、それでも映画好きの彼は映画の審査員をやったり生涯ずっと映画に係わり続けたのだという。

いろんな人が彼を褒める中、ストレートで容赦ないのが奥様(監督のお母さん)の証言で、なかなかリアルだった。仕事で9ケ月アメリカに行ってしまう夫。仕事上では、まったく家族は蚊帳の外だったのだろう。たまに有名俳優に直接会える以外は。彼の大変な時期を妻の私が支えましたと発言することもなく、妙にドライだった。でも亭主留守でお金が潤沢にあるって、いいよねぇ(笑)

それにしても映画かぁ… そうやって人は夢を見るんだよね。銀行マンという立ち場からしたら、映画に投資するより不動産に投資した方が絶対に成功する率は高いでしょうに。映画の制作費たるや、音楽の比じゃないからなぁ。それこそ不動産を買う以上のお金がかかるわけで、それなのに映画好きの彼らは何故か映画に投資するんだよね。そこが人間の面白いところだと思う。ジョブズの言う「銀行員ではなく詩人に…」だね。

で、この映画、ちょっと調べたらEU FILM DAYSで先行上映されるのね。これは是非チェックしてほしいと思う。詳細はここ。あとこんな本にも銀行員さんのことは紹介されているようだ。