北欧音楽業界あれこれ

先週は自分のアーティストが来日していてバタバタだったけど、今週は北欧の音楽関係者が大挙して日本に来日しており、けっこう楽しい。おかげであんまり寂しくなくてすむ。ツアー終わりの事務仕事がまだまだ山積しているのだが、一昨日の大使館パーチーに始って、昨日は商談会に参加してきた。

皆が出しているブースを回ってサンプルCDなどをいただく。今年は例年以上に多くのレコード会社、出版社、マネジメントが参加していた。みんな日本のマーケットにワクワクしている。

左はいただいたCDサンプル以外のあれこれ。ベルゲンのフィッシュスープが嬉しい。アブソルートのショットもいいでしょ。ショットグラス、ダーラナ生まれだっていうお兄さんからいただいた。すみません、ありがとうございます。

みんなとっても熱心にプロモーションしているので、なんとか自分のところで拾ってあげたいと思うのだが、正直これがホントに難しい。今や無名のアーティストをやる余裕は日本の音楽業界にはまったくないのではないか。かと思うと「ウチらの曲はアムロナミエがカバーしたんだぜー」とかいうイケイケ出版社さんにも当たったりする。でも地味ぃ〜なワールドとかジャズとかやっている方たちについては、ウチくらいしか今ややるところはないだろうなと思うと、ホントに皆に「ウチに全部まかしとき! 全部なんとかしてあげるから!」って言いたいのだが、そんなこと口が裂けても言えないところが辛いところだ。

が、ここで自分はこう思うとか、自分の主張振りかざしてもまったく意味がない。一応彼らのプレゼンを一通り聞き、彼らを励まし、なんとか可能性が開けるように定案したり、他の会社の人を紹介してあげたり…そんなことをやってたら3時間があっという間に終ってしまった。

そして、それでもこうして年に1回、みんなの顔を見るのは嬉しい。ヴェーセンがまたこの間やってきて、公演がすごく盛り上がった話とか、スウェーデンの音楽振興会みたいなところの偉い人に報告する。偉い人は私の顔をみるなり近寄ってきて「新しいレーベル紹介するよ」と紹介してくれたが、前にメールで「今度のツアー久々にサポートしないか」と言ったのを10秒くらいで断ってきたのを私は忘れてはいないからね(爆)。メールが早いのはいいことだけどね。もう少し悩んだそぶりを見せてほしいものだ。ヴェーセンは9回来日しているけど国にサポートしてもらったことは、たったの2回だ。もう9年くらいサポートをもらっていない。小さい翌年には誰も来日したことを覚えてないバンドをサポートするより、ヴェーセンみたいなある程度エスタブリッシュしているバンドがさらに大きくなるようにサポートする方が、宣伝費の使い方としては効果的だと思うが、社会主義的な北欧の考え方では、それはなかなか認められない。

そして、それでも、こちらとしては、こういう「やってる感」を彼らに見えるところで出すって大事なのよ。オレたちは自分たちであんたたちのサポートなく独立してますから、あんたたちは関係ありませんで終ってたんじゃ、やっぱり駄目なのよ。(私も大人になったでしょ…と自分自身に言い聞かせる)

あと嬉しかったのは、久しぶりに会った取引先に「あの時、あなたの言ってたグリーンランドのバンドのFacebook追いかけてるんだけど、ホントにあなたが1年前に言ってたとおりの展開になってるから面白くって!」と褒められる。

ありがとう! そう! 自分でシナリオを書いて、それ通りにあれこれすすめるのが、仕事の醍醐味だ。だから、なんというか、売り込んで、その結果を待つみたいな仕事は私はあまり好きではない。もちろんフェスティバルへの参加とか、曲がCMに採用されるとか、ボーナス的な飛び道具が来れば、バンドは飛躍できるのかもしれないが、そういうことに(そういうことの可能性に)自分のシナリオを振り回されてはいけないと思うんだよね。そしてそう思っている人間のもとには飛び道具はなかなかやってこない(爆)世の中上手く出来ている。でも自分の足で歩いてこその仕事人生だものね。自分の足であるけば、大抵のことはシナリオ通りに進むし、大きく失敗することもあまりない(はずだ/笑)。

あとナヌークをヨーロッパで出しているデンマークの某レーベルさんと話が出来たのが良かった。彼らのCDはデンマークでも良く売れているらしい。「言葉はサッパリ分らないけど、いいよなぁ」と言っていた。グリーンランドは,デンマーク人にとってもとてもエキゾチックな場所だ。でもその彼もグリーンランドには行ったことがないんだって。そして私がどうやってバンドと出会ったのか、これからどういう展開になるのかとか根掘り葉掘り聞かれた。

このレーベルさん、実はメジャー系列さんで、その関係もあって実はナヌークのベスト盤の話は最初このメジャーさんの日本の窓口(当然こちらもメジャーさん)に持っていった。一応権利関係のこともあるから、そこではっきり「ウチでは出せません」と言ってもらえないと、次のステップには進めないからだ。で、どうなったかというと、そのメジャーレーベルさんは、どこの馬の骨とも分らない私とちゃんと会う時間を作ってくださり、そしてとっととNOという答えを出してくれた。これは非常に有り難かった。これが無ければ、私はこの話をキングレコードさんに持っていく事が出来なかった。ここだけの話、意地悪というわけではないのだが、はっきり「NO」と断る責任を取らず(それは万が一、ホントに万が一他社でやって売れた時、担当者が責任を取れないからなのだ)回答を出さないでウヤムヤにしてしまうレコ社はホントに多いのだ。そんな中、はっきり答えを出してくれた、このメジャー・レーベルさんにはホントに感謝している。そして、あの担当者さんが,今のナヌークの動きをどっかで偶然にでも見つけてくれているといいな、と思う。(そしてちょっとは後悔してくれないかしら、とも思う/笑)


そしてその帰り道、ただでさえもらったCDサンプルで一杯になったトートバックを3つくらいかかえていたのに、ナヌークの弟、フレデリックに頼まれたギターもピックアップしてきた。なんとギブソンのヴィンテージもので、けっこうなお値段のする代物だ。

この写真をご覧ください。ケースもヴィンテージで60年代のもの。クロコダイル風で可愛い♡ で、紙みたいなケース! 作られた当時はこんな高いギターになるとは想定してなかったからケースも柔いんだって。お店の人が説明してくれた。ふーん。私にはよくわからない世界だけど、フレデリックがまた来日するまでしばらく時間があるから、私も「禁じられた遊び」でも「天国への階段」でも練習してみようかしら。

ギターをかかえ、しかしながら帰宅途中にコロッケそばを食べて(わかめを追加トッピング)帰ってきた。なんかツアーが終って平和な日常が嬉しい。そして帰りながらすぐにお腹がすいてしまいコンビニで唐揚げとシュークリームを買ってきて、チンしてまた食べてしまった。ツアーで疲れているのだから、とここ数日自分を甘やかしていたが、もうホドホドにしないとやばい。こういうグータラな生活は昨日まで。今日からはもう少し節制し泳ぐなり走るなり筋トレするなりする!…と誓う。

今日は終日事務所にいれる日なので、事務仕事に集中します!! いろいろお待たせしている皆さん、すみません。今日中になんとか…