映画「君はひとりじゃない」を観ました


あいかわらず2019年に向けてポーランド勉強中。なかなか「妙な映画」だった(笑) ポーランドってこういう屈折したユーモアのセンスあるのか。ちょっとフィンランドみたい… と思った「君はひとりじゃない

特に最初のうちは、ホントにセリフが少なく淡々としている。「ジンクイエン」(ありがとう)、「ジェンドヴリン」(こんにちは)というポーランド語の挨拶ばかりが妙に残る。地味だ。とにかく地味だ。日の当たり方というか、光の使い方が、それっぽいのか、ちょっと北欧の古い映画みたいなテイストだ。(日本のプロモーションはそれをあまり良しと思っていないのか、このポスターは光の感じが映画を観て受ける印象とだいぶ違う。各出演者の表情とかも…)

ストーリーはこんな感じ。母親を亡くしたオルガ(たぶん20そこそこ)は拒食症状態。母を亡くして以来、とにかく心も身体もすっかり病んでしまいボロボロの状態だ。目ばかりがギラギラとするどい。この女優さん、すごい熱演。おそらくこの映画のために相当体重を落としたんじゃないかな。ほんとにひょろひょろで、そのくせ、服はいつもタンクトップに短パンみたいな感じだから痛々しさがいやでも沁みる。そういう意味ではすごい熱演とも言える。

一方、妻を亡くした父親のヤヌシュは、死体の検死官として働いているのだが、死体にも無感情であたる(そういや冒頭の死体がいきなり歩き去るシーンは秀逸だった! シュールなフィンランド映画みたい!!) 。そしてガツガツとよく食べ、メタボな肥り方が爆発している。娘にはそんな父親は下品に見えて仕方がないのだろう。娘に「大嫌い」と拒絶されっぱなしの父親。

娘の自殺未遂という事態にいたり、事態は深刻化する。ヤヌシュは娘をセラピーに送りこみ精神病院に入院させる。ここで登場するセラピストのアナも非常に不可解な女性だ。妙にスピリチュアルで、怪し気で、彼女のメソッドには果たして科学的な根拠があるんだかないんだか… とにかくまともな神経で考えれば、彼女のセラピーが上手くいくとはとても思えない。中年の彼女には友達はどうやら大きな犬しかいないようで、寂しく1人で暮らしている。その犬もきちんとしつけられていないようで、いつもお行儀が悪く、テレビを観ている彼女を邪魔したり、散歩の時、飼い主に歩くペースをあわせなかったりもする。大いびきをかいて眠る犬を抱いて眠る彼女も、実は子供を失うという大きな悲しみの持ち主だった。

大切なものを失った3人の日常が淡々と描かれる。なんのために生きているのか…。空虚な自分をかかえ、よくわからない。しかしヤヌシュの家の中に数々の不思議な現象が起き、とある事件がきっかけとなり、セレピストにうながされた親子は、母親の霊に会うべく降霊を試みる。何をバカな…と思いつつも、それでもなんとなく父と娘は絆を取り戻して行くのだった。

なんというか地味な映画だ。こういう地味な映画をみるとウチの映画(笑) の方がまだ一般に理解され、大きく公開される資格を持っているのではないかと思ったりするのだが(爆)、ずうずうしいだろうか。うーん、でもこれも悪い作品ではけっしてない。しかしこのテのちょっと斜めなブラック・ユーモアは、日本人には理解されるんだろうか、とも思ってしまった。いや、ユーモアだと気づかないかもしれない。私はかなり好きだけどね。正直、相当地味だけど、フィンランドのちょっとピリッとした作品が好きな人であれば、皆さんもきっと気に入ると思う。ちなみにどっかの記事(たぶん監督のインタビュー?)で読んだけど、この映画、ドイツではお客さんはドッカンドッカン笑っていたが、ポーランドでは比較的静かで笑えてなかったんだって。