ピョートル・フェリクス・グジバチ『ニューエリート』を読みました

なんでこの本を読んだかというと、著者がポーランド人だからだ。来年ポーランド企画をやるにあたって、1冊この方を知るために読んでおこうというわけだ。この本、実際、めっちゃ売れているらしい。というか、よく見たら、この方、たくさん本出されてた。このメールうんちゃらみたいな本は、書店で確かにみたことがある。

で、私はといえば、最近はビジネス書を読むより探検本、辺境本を読んだ方が士気があがるので、そっちに読書が傾いている。

かつては勝間和代さんの『断る力』に夢中になったが、それも最近はご無沙汰。ちなみに『断る力』はホントに好きで,今でも迷いが出た時に,時々読んだりしている。あれは名著だ。

とはいえ、最近はホントにこのテのビジネス書が多いから、世間の情報にもまるで着いて行けてない。まずは、帯キャッチを書いている孫泰蔵さんという人もまずは誰だかピンとこなかったのであるが…(ソフトバンクの孫さんの弟だというのはググって知った)そのくらいダメダメなビジネスパーソンなオレでも、なるほどこの本は面白いと思った。

著者は日本在住17年のポーランド人男性。ピョートルさんは75年生まれ。当時は社会主義国だったポーランドの田舎の小さな村の出身。学歴には意味がない共産主義下の田舎町では、高校に進学をするのはクラスで1人だけだったという。そして89年民主化の波。いきなり跳ね上がった失業率に、小さな村は大変なことに。二人いたお兄さんのうち1人は精神のバランスを失いアルコール依存症になってしまい交通事故で亡くなった。18歳になったピョートルさんは高校を辞め、国境を越えてバイトをしたドイツで、お父さんの2、3ケ月の給料の何倍ものお金をたった1日で手にした時、すべての価値観が変わったと言います。「こんなんではんだめだ」と、ポーランドに戻って学校を卒業し、必死に働いて学費を稼ぎながら大学へ。3つの大学院に進学し、外国の大学を出て、日本に来たのも日本人の消費行動を研究するため千葉大学に留学したからなんだって。でも、グーグルでもその前に働いていたモルガンスタンレーでも、同僚はお金持ち。お金持ち出身者ばかりで、自分のこういう過去が話せるようになったのは最近のことなんだそうです。うううう…辛かったね。

とにかくそういう子供時代だったから、共産主義が資本主義に敗北したのは、がっつり目撃したピョートルさんだけど、果たして資本主義が本当に勝利したのか、ということについては疑問に思っている、と言います。会社は従業員の幸せをサポートする存在であるべきなのに…。これからの時代をリードする人はポスト資本主義の世界の仕組みを作っていかないといけない、とピョートルさんは言います。

とにかく2020年代も働く人は、今の環境が永遠に続くというのは幻想でしかないことを、自分が変わらなくては生き残れないことを自覚する必要がある、と。変わらないでいる事事態が、そもそもリスクが大きすぎる世の中になったわけです。

で、まぁ、本の内容といえば、「常に学び自分をアップデートする」「早く行動する」とか、「意味のない会議をしない」とか「自分で選択すれば疲れは心地いい」とか。あと「アフターファイブに勉強ではなくて仕事に学びを絡めよう」とか「直感に従え」とか、いろいろ書かれているわけなんだけど、特に私が心に残ったことを書き出していきますと…

今の時代の成功とは持続的な成長に加えて「選択肢がある」こと。 それが成功なのだ、ということ。

仕事は「インパクトが高く、学びも多い」そういう仕事が最優先。そしてインパクトが低く、学びも少ない仕事はアウトソーシングする、と。(例えば私にとっての経理とか/笑)でもインパクトが低くても「語学」は楽しいからピョートルさん積極的にやってるんだ、と言う。なるほど。

あとこれはすぐ実践できる!と思ったのは「意見交換しよう」「情報交換しよう」とか漠然と「一度会ってほしい」などと言われた時は、「具体的にどんな課題があるのか教えていただければ準備しますので」と言おう、ということ。これ、確かに最近多くて、で、かつ「あれはいったい何だったんだろう」という感じで終る初対面打ち合わせがホント多すぎるのよね。「有料サロン」開いた理由もそこにあるんだけど、それもなかなかスマートに行かない。打ち合わせが終ったあと「なんだ、それならメールで聞いてくれりゃ、ちゃっちゃと教えたのに」みたいな事もあるわけで…。それより「ちゃんと事前に役に立てるか知りたいので」と正直に言った方がいい、ってこと。これは、もうすぐ使えるなーと思った。

あとなんでも「面白い」と思うと建設的になる、ということ。(いい事言うよね! いつだったかの早野先生の「面白そうにやる」ってのに通じると思う)

あと目の前にいる人は大切にすること。人と会っている時はスマホは見ない、と。相手の言葉以上の事からのいろんな情報を充分に吸収するべし!と。(これ佐々木俊尚さんの言ってた“会ってる時は大切に”ってのと通じる。ホント重要)

あと「コミュニケーションの能力」は、「相手が行動に移したか」に尽きる、ということ。これ、すっごい良い指摘で,確かに誰かに仕事上のアドバイスを求められた、どんな音楽がいいか聞かれた、どんな本がいいか聞かれた、いろいろある。でも相手がそれを行動に移していないのであれば、自分のコミュ能力は低い、と判断せよ、とのこと。世の上司たる人はこれメモっておいた方がいいかも。伝わったか伝わらなかったかは、その場のノリではなく、相手の行動で判断すべし、とのこと。なるほど。

それから、日本人は自己認識、自己開示が圧倒的に低い、と。facebookのプロフィール欄を猫の写真とかにしているようじゃビジネスパーソンとしてはダメダメ。そしてそんな状況なのに「働き方改革」とか言って、この2つの重要要素をすっとばして全部制度から入っているから上手く機能しないのだ、と。

あとマラソンではなく「スプリントの発想で生きる」って事。これは、私も超共感だな。1つの案件を2、3ケ月で終らせろ、とピョートルさんは言っているけど、最近の私は2年かけて1つってのが、好き。でもこの2年ってのがいいのだ。一生やってるわけではない、というのが、気持ちの余裕をもたらす。日本の場合ホールを取るのが1年前だからなー と考えると、1年は最短でも必要なんだけど、2年ではなくせめて18ケ月とかね。でもどっちにしても「あの時点でいったん終る」ってのが先に見えていると、頑張って集中力も続くよ、ってことをピョートルさんは言ってくれてるのだと思う。(そして終ったら休め、とも)

ま,どちらかというと,この本はマネジメント関係者とか、管理職の人が読んだ方がいい本だとは思うけど、何はともあれ勉強になった。ピョートルさん、それこそポーランド関係のイベントでお会いすることになったら、ウチのポーランドのアーティストも是非よろしく! ポーランド企画は今年の11月には発表する予定なので、楽しみにしていてください。っていうか、時間がなさすぎ! やばい!