今、話題になっているこの本、やっと読みました。いや〜〜 すごく良かったよ!!!
それまでも何度も話題になっていた本だとは思うけど、ちゃんと認識したのはこちら。
ジャーナリストの津田大介さんのポリタスTV。
今日すごい本を読んでしまった。樋口耕太郎著『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』(光文社新書)。「沖縄が貧困に喘いでいる本質の問題は基地でも戦争でもなく別の真犯人がいるから」という驚愕の本格ミステリであり、しかも後半はさらに意外な方向へ展開し、ラストは感動する!! pic.twitter.com/kJeuthHOf4
— 高野秀行 (@daruma1021) June 30, 2020
『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』(樋口耕太郎著・光文社新書)読了。すごい本だった。貧困問題と自尊心の因果関係示す説明に唸った。戦争や環境破壊、差別がなくならない理由として、自尊心の低い人間がリーダーになり社会へ恨みをはらしている、の指摘は思い当たるフシがありすぎて震えた。 pic.twitter.com/AH6jR1VDfH
— 片野ゆか・新刊『平成犬バカ編集部 』11月5日発売 (@yukadalma) July 5, 2020
ここまでくるともう良い本なのは100%間違いなくて、速攻でポチり、届いたその日に読み始め1日で読み終わってしまった。
これはあれこれ言う前に、多くの人に読まれるべきすごい本である。実は「沖縄の問題は日本の問題」というこの本のオチはわかっていて読んだので、読みながら痛い、痛い。とにかく著者の指摘がビシビシ来る。そうなんです、おっしゃる通りです。そこが日本のダメなところなんです、御説ごもっともです…と。
でもこの本にはそこにさらなる「この状態にどうしたら争っていけるか」ということも書かれており、この辺の爽やかさは大ヒットした「ケーキを切れない…」本に匹敵するかもしれない。そう、そうなんだよ!!と。だから大丈夫。読後の爽快感はある。
そしてこの本は「愛とは何か」ということを追求していく。結論をここに書いてしまっても読書感は変わらないのでバラしてしまうと、著者はそれは「相手の関心に関心を持つこと」だという。「相手に関心を持つ」というのとは、かなり違う。そして、読み進めれば読み進めるほど「そう、そう、そう、そう、そうなんだよ!!」という気づきの連続なのだ。ちなみに私の場合はここは「音楽とは何か」という私が一生をかけてなげかけている根源問題とシンクロしてくるので、またこれについては別途書きたいと思うのだが…とにかく!!! とにかくこの本はそういう意味でも沖縄だけじゃない、そして日本だけじゃない、すべてに通じるものすごいパワフルな本だということを断言しておきましょう。
あとこれは… 私個人のちっちゃい話だけど、読んでいてグリーンランドのことをひしひしと思い出した。多くは書かないが彼らと仕事をして得た私の結論は「だからダメなんだよ、保護されている奴らは!」ということだった。ちょっと悲しいけど、これ全人類に当てはまるのかもしれない。せっかく彼の音楽が素晴らしく、私はそれを応援して「あげている」つもりになっていた。いや、もちろん彼らとは今でも仲良しだし、人口たった5万人の全国民に応援してもらい喜んでもらい私は鼻高々だった。パブリシティもたくさん出て、新しい人脈もでき、経済的にはきつかったけど、結果大成功ではあったと思ってはいる。
でも私にとって成功とは、THE MUSIC PLANTにおける成功とは、単発の成功ではなく、「これからもずっと続けていける」「次にもっていいものを作る」ことなんだよね。その意味では、もうこれ以上は無理だと思った。これ以上、上手くなんていきやしない。私はそのことでひどく傷つき、しばらくリハビリタイムも必要だった。グリーンランドは本当に難しい。ま、そんなことはさておき。
そして「保護されている」という意味では、なにも貧しくて教育や福祉がいきとどかないかわいそうな地域ということだけではなく、悲しいかな北欧全般にも言えることで、あそこの人たちと仕事をしていると「だからダメなんだよ、生きる心配のない国に住んでるとよ!」と乱暴に叫びたくなる時もあるのだ。ま、これについては、アイルランドあたりの国が「やっぱ、いいなぁ、アイルランド人は根性があって」と受け止めてくれるわけなのだが、だからといって国が国民の面倒を見なくて良いと言う結論にはなりえないわけで…。まぁ、長くなるので、この辺はまた今度。
それにしてもいろいろ考えた。話を本に戻すと「沖縄社会が貧困であるのは、貧困であることに合理性があるから」…これは重い。とても重い。「沖縄の貧困が(低所得者が)沖縄企業を強固にささえているのだ。極端に言えば、沖縄の社会構造の中では、(悪意なく)変化を止め、(無意識のうちに)足を引っ張り、個性を殺し、成長を避けることが「経済合理的」だったのだ」
あとこの本で気づきがあった場所。特に沖縄の貧困原因を説明し、それをどう克服するかという後半、私は勝手に「哲学編」と読んでいるのだが、その後半が素晴らしい。書かれている細かいことにいちいち響きまくるのであった。
例えばAクラスの人間は自分より優秀な人間を雇う。Bクラスの人間は自分より優秀な人を雇わない、というところだ。私は自分より仕事ができる人としか基本的には仕事をしない。例えばうちのスタッフはみんなとても優秀だ。私よりもよっぽど機転が効き、仕事も早い。仕事仲間も絶対に自分よりレベルが低いと思う人とは仕事をしない。
ただこれは私が自分より優秀な人をつるんで楽をしたいというだけで(笑)この著者のように考えたことはなかったので、なるほど!と思った。いいぞ、オレはAクラスの人間だ!? ありがとう、樋口先生!!(笑)この部分は気に入ったのでメモ。まぁ、でも冗談はさておき、確かに日本の社会ってそういうところすごくあるよね。先輩が後輩いじめたり、新しく入ってきた人に必要な情報あげなかったり…さ。社会を悪くするためにお互い足をひっぱっているとしか思えないんだけど。いったいみんな何を恐れているんだろう。
他にも「自分の羽を信じられない人は、羽ばたく可能性を考えもしない。自分を生きることを諦めている人は、自立を望まない(できると思っていない)」など、とにかくするどすぎる箇所が山ほどあるのだ。そして著者は「経済格差の本質は、つまりは、自分を愛する心の格差だ」と説く。この辺の流れが本当に素晴らしい。
そして人が自分を愛するために、自尊心を回復するために、私たちができること。それもこの本には回答がしっかりと書かれている。私は勝手に「実践編」と呼んでいるのだが、ここもまた素晴らしい。「その人の関心に関心を注ぐこと」「それは人のために立ち止まることでもある」そして著者は自分がかかわったホテルの話など、具体的に説明がなされていく。ちょっとした「有線電話」のエピソードなど、本当に感動的だ。
あぁ、コロナ禍のあと、そしてこの本の出版のあと、なんかいい世の中になるように思えてきた!!!!! いや、それこそ幻想なのかもしれないけど、少なくともこの本を読んだ人には著者の気持ちは十分に伝わるだろう。それが世界をちょっと変えるかもしれない。「沖縄社会は日本でもっとも自尊心がひくい地域かもしれない。しかしそもそも日本人が世界で最も自尊心が低い国民なのだ」これを忘れてはいけない。
そしてインターネットの普及、大規模災害などを超えて、日本の社会にも少しずつだけど風穴が開き始めていることも著者は指摘している。ここに希望があると私は思う。著者が言うように「人が自分を愛することの手助け」を基軸にした社会をみんなで構築していこう。やれるような気がしてきた。ダメかもしれないけど。
今日も天気悪いけど、張り切って行きましょう!