映画『 #誰がハマーショルドを殺したか 』を観ました @whokilled_h



最初に言っちゃうと、ものすごく面白かった!!!…と言うと不謹慎かも。でもすごく良くできたドキュメンタリー映画です。これは今年の映画ドキュメンタリー部門のマイ・ベスト3に入るのは確実かもしれません。

実際、かなりショッキングな内容です。これ本当なのかな。ハマーショルドという人の存在すら知らなかった無知な私は、最初これは「日航機墜落」事件みたいだなと思いながらボンヤリとみていました。青山透子さんのあの本のレビューは実はウチのブログでもっともアクセスの高い投稿の一つなのだが、また今年も夏がやってきたので「またあのブログのアクセスが増えるんじゃないかな」などと皮算用しつつ…  そしたら後半は驚く展開が待っていて度肝を抜かれました。デンマーク人の監督による『誰がハマーショルドを殺したか』というドキュメンタリー映画。オンライン試写で拝見しました。ありがとうございます。

まずハマーショルドという人を初めて知ったのだけど、まぁ、もう彼が暗殺されたのは、これはもう間違いないよね。ハマーショルドはアフリカの自治に力を尽くした国連の事務総長(任期は1953年から亡くなるまでの1961年)だった。スウェーデン人。Wikiを見てみれば、おっ、ウプサラ大学出身じゃないですか。(ウチの人気バンド・ヴェーセンの本拠地はウプサラなのです❤️)断然、興味が湧いてきたところ、一般試写の公募があったので申し込んでみたら当選したのだった。信念の人で、ソ連かアメリカかという冷戦時代に巻き込まれた当時のアフリカでアフリカの自治を願った理想の人です。


しかしこの暗殺を目撃していたアフリカの人たちの証言が当時はまったく無視されていたことなど、実際地元の村民たちや子供たちの証言が無視した日航機事件を思い出させます。それが… あれこれ追求していくうちに、突如、遠藤周作の『海と毒薬』の方向へと映画は方向転換し、そしてサイマーとか、白しか着ないマックスウェルというほぼ頭がおかしくなっていたというリーダーとか、まるでナチとヒットラーみたいなすごい組織や人も登場し、手に汗握る展開となっていくわけです。

とはいえ、これ本当なんだろうか。実際、ハマーショルドの件は今でこそ暗殺説が強力でそちらがほぼ事実だったとされているそうですが、後半のHIVの話は、ちょっと考えてしまいました。これが事実だとしたら、かなりえぐい内容だ。そしてまさに白人が黒人をどう見ていたのかということが… わかる。#BlackLivesMatterだ。本当に恐ろしい。

というシリアスな一方で映画はちょっとユーモラスなシーンも登場。黒人の美人秘書二人にレポートをタイプさせる演出があったり、モノクロのアニメーションで表現されている部分もあったりするので、ヘヴィな内容ながらとても見やすい。


この金属探知機のシーンはかなり笑える。「北欧の二人を守るための日焼け避けの帽子」そして「一服するための葉巻」など。丁寧にベットの上に並べる。そしたら「俺は吸わないよ」と言う相方(笑)


いやー、すごい内容だった。ただ登場人物が多すぎて、ぐちゃぐちゃすぎて全体像がなかなか掴みにくいことも事実。これから見る人は多少勉強してから見に行った方がいいかもしれない。そして、このオンライン試写会のアフタートークで森達也監督が指摘されているとおり、取材方法に問題がある点もいくつかある。それでも映画にぐいぐい引き込まれて、結構長い映画なのに2時間があっという間だった。

それにしても後半の流れでは、この作品を見ているすべての人の力量がためされてくる。その辺はYahooニュースに流れた鎧麻樹さんのレポートが非常に素晴らしいので是非。
これ、自分がいわゆる陰謀論をどう扱うかということを考えるきっかけになるよね。私は自分は陰謀論には引っかからない方だと思っているのだが(←こういう奴が実は一番危険なんだよね。それも自覚している・笑)、ただ陰謀論というのはある意味、在野の者を安心させる材料なのだ。世界は悪くて権力を持つ奴らの意思で動いている、と。人はシンプルに考えたがる。そして安心したいのだ。それが陰謀論の罠だ。悪いことだって、良いことだって、誰かの強い力の元で行われたのだ、と。そして悪いことは、悪いやつを消すことで消滅する、と。危険因子を片付ければ、すべて片付くと考えたがる。ところが実際の世界は人が思うほど秩序だってはいない。おそらく世の中で起こっていることのほとんどが…おそらく95%以上が、偶然の産物だという考え方の方が信憑性があるような気がする。たまたまちょっとしたきっかけで、そうなっちゃったんだよ、と。それを誰も止められなかったんだよ、と。世の中に社会を動かせるほどの大した奴なんて、それほど数はいない。

と、同時に自分の身の回りで起こっていることについてもそうなのだが、歴史がたった一人の人で変わってしまうという事実も絶対に否定できない。その素敵な部分を信じてもいたい。

それいしても…サイマーか。名前からしてふるってるよね。日航機の件もそうだけど、関係者は生きているうちにぜひ告白してほしい。墓場まで持っていく覚悟なんてしないでほしい。それでは犠牲になった人たちは浮かばれないし、この先未来を作っていかねればならない人間も過去から何も学ばない。この映画に最後に登場した勇気のある方だけではなく、告白者がたくさん出てきてくれることを願う。

まぁ、あと言えることは、監督の言う「People are greedy」…まさに。それはフェイクでも陰謀論でもなく、時代が変わっても、まぁ動かぬ事実だろうな…と。

 
ジャーナリストの佐々木俊尚さん、映画監督の森達也さん、月刊ムー編集長の三上丈晴さんなどが参加した試写アフタートーク。こちらもすごく興味深いので是非ご覧あれ。ムーの編集長って面白いねー 話してるところ初めて見たかも(爆)


東京はイメージフォーラムにて公開中。是非是非ご覧になってください。