「バンドにエイド」アーティスト紹介:スヴェング


スヴェングはフィンランドのハーモニカ・カルテットです。左からゲーロ、ヨーコ、パシ、エーロの四人組。ヨーコはシベリウス音楽アカデミーの先生でもあり世界で唯一のハーモニカ博士でもあります。初来日は、今調べたら2007年か。なんか比較的新しいバンドのつもりでいたけど、13年前なんですね。懐かしいなー

彼らを見つけたのは実は毎年フィンランドからやってくる「Finland Fest」の商談会の会場にて。これはいわゆるフィンランドの音楽を世界に広めようという振興会みたいな団体が主催しているイベントで、毎年5月に行われている。普段はそういういわゆる「商談会」の場でアーティストを見つけるのは邪道だと思っている私なのですが(アーティストとの出会いは「恋」のようなもの。お見合いじゃ見つけられません)、まぁ、例年挨拶のために顔は出していたわけです。そしたら、彼らの当時のマネージャーから、別の、すでに来日が決まっている某女の子バンドのCDを売り込まれたんですわ。でも私はその女の子バンドには興味がわかず、たまたま彼女の机の上に並べてあったスヴェングのファースト・アルバムのジャケットに惹かれたのです。「このバンド、良さそう」

で、家に帰って音を聞いてみたらこれがまた最高によかった。このバンドどんな感じかわからないけどハーモニカだけのバンドなんて面白いし、一度呼んでみるかというわけで「割とさくっとした感じで」日本に呼んだのでした。当時、私もいわゆる弦楽器のアコースティックバンドとは違う、もう少しわかりやすいポップなバンドがウチのラインアップにいないものかと思っていたから。(何度も書くけど、プロモーターとしては同じカードを何枚も持ってても広がらないのです)

初来日から同じく北欧の伝統音楽を熱心に紹介しておられた関西のプロモーター、ハーモニーフィールズの小巌さんに協力をいただき、なかなか良い内容のファーストツアーを作ることができた。懐かしいなぁ!!

四人の中ではエーロが一番好き。だって本当に男らしくてかっこいいんだもん。奴はモテるんだ。離婚歴は私が知っているだけでも3回以上、子供の数は本人しか把握していないという噂もあり。うーん、でもモテるの、わかる気がする。

それにしてもバンドってどうしてこんなに性格が違う人たちが集まるんだろう。下は偶然にもおそろいのTシャツを着たエーロと私。aito recordsというのは当時の彼らのレコード会社。


ヨーコ先生のハーモニカ・リード整理袋。すでにマッドである…


ハーモネッタ(コードハーモニカ)の大手術中。楽屋でよくやってんだよね、この作業。すでにかなりエキセントリック。こんな作業、とてもじゃないけどできない。


そんなわけで「割とさくっと」来日を決めてしまったこともあってスヴェングも「空港ではじめまして」バンドだ。それがこんなに長く続いているのだから、やっぱりすごい。彼らを初めて日本に呼んだ時、私はまだフィンランドには行ったことすらなかった。(スウェーデンは一度か二度行っていたと思う。もう記憶があやふや)でもスヴェングの第一回目のツアーが大成功した、というのを聞きつけたフィンランドの音楽振興会の人たちが翌年の春、私をフィンランドに招待してくれたんだよね。

私は当時からいわゆるつっぱり体質で(笑)「こんなの招待されちゃったら、他のバンドも拾わなくちゃいけなくなる」「この仕事は本当に大変なんだ。唯一ある自由、ミュージシャンを選ぶ自由が奪われてたまるか」くらい思ってたのだけど、周りの、それこそフィンランド人の昔からよく知っている取引先が「そんなこと言わずに行っておいた方がいい。お前のバンドのためにも。お前のバンドが現地で助成金を申請した時、あ、受け入れ先はマフィアではなくヨーコか、だったら大丈夫だって向こうも思ってくれるだろう。お前も現地に行って顔を売っておきなさい。お前にはもうそういう責任がある」とアドバイスしてくれて、私も心をあらためたのであった。ほんと私ったら子供っぽい。確かにそうだ。そういう、ある意味では言いにくいアドバイスをしてくれた友人には本当に感謝している。そんなわけで私はヘルシンキへ飛び、自分の出張では泊まれない4つ星のホテルに留まり、夜は白と赤両方のワインが飲み放題の素敵な3コースディナーをご馳走していただき、世界中のプロモーターさんたちと一緒に朝から晩までいろんなバンドを見せられたが、結局その後、結構な数のバンドを日本に呼ぶことになったのだから、やっぱりこういうことも大切なんだなと反省したのである。(その時に出会ってその後一緒に仕事をしたグループ:ノルディック・トゥリー、アラマーイルマン・ヴァサラット、ヨハンナ・ユホラ、ヴァルティナなど)まぁ、でもいつもこんなことやってるようじゃダメだけどね。

そんなわけでスヴェングは私をフィンランドにつないでくれた大事な大事なバンドなのであった。本当に縁があるところには、縁があるんだね。

ヨーコ先生はユニクロが大好き。裾をなおしたりするのをほんの20分くらいでやってもらえるのがお気に入りだそう。ツアー用に2、3本ジーンズ買ってたな。


イラストレーターのオノナツメさん。どうして気づいたのかは、もう忘却の彼方だけど、彼女がスヴェングのファンだということを知り、連絡を取ってみたのだった。彼女はこんな素敵なイラストを描いてくれた。これもArt Meets Art 二つの芸術が出会った瞬間。ポストカードにしたんだよね。なんか、またコラボしたいなぁ。


これ初来日時かな。バンドのマスコット、熊のヒルパは人気者。





最近のツアーは民音さん主催でアコーディオンの桑山哲也さんと共演。桑ちゃんには本当にお世話になりました。

この二組の共演を作るのに楽屋でリハーサルしたのだけど、桑山さんとマネージャーさんの素晴らしい連携プレイに感動。私なんぞは普段から楽譜を読むのもかなり怪しく、何がAパートで、何がBで何がなんなのかさっぱりわからないのであるが、桑ちゃんとマネージャーのMさんは、本当にてきぱきと二人三脚でリハーサルしてくれるのであった。あれには感動した。的確に譜面をめくったりもするMさん。私なんぞはみんなにお茶を入れるしかない(爆)。うーん、さすがだ。もちろん大きな芸能事務所の音楽担当のマネージャーさんなんだから譜面とか曲覚えるのかお手のもんだろうけど、素晴らしいよね。あぁいうマネージャーさんがいてくれるとミュージシャンも心強いだろうなぁ。しかも二人がすごく仲良しで、遊ぶ時も、いや遊ぶ時こそ、めっちゃ呼吸があってるのが良い。居酒屋の、席に着席した瞬間のワクワク感がいい。本当に素晴らしいチームだ。中野サンプラザには桑山くんの奥さん、トコさんもきてくれて、みんなに木製のポストカードのお土産をいただいたりした。

そうそうツアー先の名古屋の街で、夜歩きながら「桑ちゃんの不健康ぶりをフィーチャーしたテレビ番組」が放送されていたので、みんなで私のガラケーのワンセグで見たのもいい思い出だ。みんなで爆笑した。スヴェングは桑ちゃんをフィンランドに呼びたがっていた。まだ、それは実現できてないけど、きっといつか!!だよね。

それにしても民音さんのツアーは楽しかったけど、大変だった。ステージでは桑山さんにそこここでフォローしていただいた。桑山さんが協力してくれなかったら、こんなに良いステージにはならなかっただろう。桑山さんの広い会場をもぐっとまとめてしまう力に本当に感動した。本当にありがとう、桑ちゃん!! またいつか何かでご恩返ししないといけない。


ところでエーロとヨーコ先生は公演前に「きゅっといっぱい」その国のローカルな蒸留酒をかますのが好きで、ヨーロッパではイエーガーマイスターがその役割を担うので、私も最初はイエーガーマイスターを差し入れていたのだが、最近それは日本では電気ブランだということに気づき、最近のツアーでは電気ブランが楽屋に登場している。「不味く」て「強い」というのが条件だそうで…。なるほど…





ツアーの最終日には空になった電気ブラン(笑)ツアー、おつかれ様でした。

下は桑山さんがつれていってくれたカラオケ。ほんと楽しかったよなぁ。


「バンドにエイド」、スヴェングの曲はショパンの「英雄ポロネーズ」にした。彼らはあれこれ最初「ハウルの動く城」を入れたかったのだけど、原盤を持っているのが彼らではなく当時彼らのレコード会社だったAito Recordsになっちゃうので、それではクラウドファンディングの意味がなく、結局バンド自身が原盤を持っているCDということで、この曲になった。

それにしてもアヌーナの直後に入れたのはどうだったかなー もうマスタリング終わってるしアートワークも入稿しちゃったから変更はできないけど、ハーモニカって音量小さいのになんか耳をつんざく感じなんだよね。小さい音なのにうるさい、というか(笑) それにしても良くできたアレンジだし、聞いていて楽しい。たたたったたったー!みたいな終わり方が最高。なんか笑える。元気が出る、このトラック。