2020年10月15日木曜日

中川五郎『ディランと出会い、歌いはじめる』を読みました

「バンドにエイド」「ケルト市」でバタバタだったので、このブログにだいぶ前に読んだ本のレビューなどアップできておりませんでした。この本は8月下旬に読んで、このブログもだいぶ前に書いたのですが、今ごろ、アップ(笑)



古書ほうろうさんで新書として売られていて、だいぶ前にお邪魔した時に購入したのだが、そのまま積読になっていたもの。やっと読んだ。すごくいい!!

中川五郎さんが書いた本ではなく、五郎さんへのインタビュー本になっている。聞き手は黒川創さん、瀧口夕美さん、北沢街子さん。私がリアルでよく知っている五郎さんと、私がよく知らない五郎さんがこの1冊につまっていてなかなか興味深し。装丁がすごく良くって、イラストが良いのはもちろん、本文部分における文字ピッチとか書体とかもなんでもちょうどいい。だからスイスイ読めてしまう。あ、あと紙質もいいねぇ、この本! 手触りもいい。なでなで…(笑)

この本はボブ・ディランのノーベル賞受賞時に出たのか、ボブ・ディランの話題で始まる。私はボブ・ディランは実はあまりよくわかっていないのだが(音楽業界にいてあるまじき態度)、最近なんとなくディランのことがわかってきたところだったので、読んでいてとても勉強になった。五郎さんの日経新聞での文章は良かったので、これ、本で持ててうれしい。新聞記事はとっとくの大変だらかね…

例えば詩はもともと音楽と一緒に伝えられてきたという話など、すごくよかった。印刷技術が発達する前は、詩は歌にしないと覚えてられなかっただろうし。そしてすごいのはディランに賞を与えるもちろんノーベル賞だ、という結論もすごく納得。あれはすごく良い文章だ。あと受賞当時に話題にになったレコ社さんのディランのスピーチ(例のシェイクスピアの例えとかを含む、こちらも素晴らしいものだった)も掲載されているのが、良い。やっぱりこの辺は印刷物として持っていたかったので、嬉しい。

そして…そうなんだよね。みんなシェイクスピアもディランも妙に神格化するけど、本人にとっちゃ日々の生活でありリアルな日常であり自分なのである。少しずつそうやって私もディランのことがわかってきたかな。

そして話は五郎さん自身の話題へと突入していく。私が知らない五郎さんとしては、例の「わいせつ」裁判の話。なんか今まで、あの温厚で優しくてふわっとした私がよく知る五郎さんと裁判で硬派に戦う五郎さんとが一致しなくて非常に違和感あったのだけど、それがやっとこの本を読んで統一されたというか。事情がわかって妙に納得したのだった。詳しくはみなさんも、この本を買って読んで!

そして80年代マガジンハウス時代、レコード会社バブル時代など、この辺になると私もよく知っているリアルタイムの五郎さんだ。当時はプロモーターたちが皆マガハのゴローちゃんと呼び、五郎さんに頼めばマガジンハウスの雑誌に載るというのがあって、五郎さんのことをチヤホヤしていた。当時を振り返ると… 音楽雑誌でない雑誌に載ってどのくらいプロモーション効果があったかは正直わからない。が、音楽誌と一般誌では、発行部数というか、もう分母の数が桁外れに違ったこと、つまりそれを広告費に換算したら、もうありえないくらい膨大な金額なのだったから、当時はそういう判断がまかりとおっていた。当時はバブルらしく、載ることや(広告換算したら桁が大きくなる)誌面を独占することが最重要課題で、内容にどんなことが書かれているかとか、どうやったらこの本の読者に響くかということは二の次だった。だから変なライターさんもたくさんいた。それでもレコード会社としては納得のタイアップだっただったのだと思う。

でもあの当時から一般誌中心に書かれてる音楽ライターさんたちと五郎ちゃんとは、やはり違っていた。髪が黄色くてマガハならこの方と言われている五郎さんは、実は、あの伝説のフォークシンガーの中川五郎さんなんだよね、という圧倒的事実があった。だからみんな音楽わかってる五郎さんに認められたいと思っていた。(しかし当時ブイブイ言っていたライターさんのうち、名前をググったら犯罪者になっちゃってる人もいた… 怖すぎる)

そしてみなさんもよくご存知の現在の五郎さんにいたる。今やご自身のツアーが忙しくて特に週末のライブには来ていただけなくなってしまった。でもこの本で語られる「知らない人に呼ばれて知らない場所にいく」という話には、いやー やっぱり大変だなと思いつつも、そのしなやかさがうらやましく思える時がある。ご自身でマネージャーもつけず仕事をしているのだからしょうがないのであるけれど、地方の主催者の中には交通費とかまったく理解していない人も多いようで、言ってみれば苦労の連続だ。それでも呼ばれれば五郎ちゃんは旅に出る。いつぞやどこかで書いてらしたけど、ギターとバンジョーと一人で持つ荷物も結構大変なようで、暑い夏などは熱中症にならないようにと願うばかりだ。

あと文章を書くことについても言及されていて、文章は書いてほしいけどギャラありません、みたいな話が多すぎる、という話題になり、うわー 五郎さんにまでそういう話が来るのかー 世も末だな…と驚いたり…。

歌うことについても「歌ってください、でもお金は出せない」ってのもあるけど、少なくとも前だったら歌ってる人に「お金出せないけど歌え」という人もいなかったし、書く人に「書いてといって原稿料なし」なんてことはなかった、と五郎さんは話す。そもそもネットが発達して音楽聴くのにもお金がいらなくなってきているから、そういう作業にお金をかけるという考えがなくなったのかな…と五郎さん。でもそういうのは巡り巡って何かを頼まれてもお金がもらえない世の中になっていくのだ、とも。レコード会社も本の出版社も本当に大変。それでも五郎さんは今が一番楽しい、と話す。うん、いいね、今が一番楽しい、って。

そして政治運動と音楽の関係なども。一方でSEALD'sやヒップホップの人たちの自然な感じも新しいことが始まる可能性を予感できて良い、とも。今でも五郎さんが政治活動に呼ばれて歌ったとしても運動の中心にはいれてくれないと寂しい気持ちもあり、ヤドランカさんの話も面白かったし意外だった。運動の人は運動の人で心から音楽を楽しむということをしない人が多い、とも語る。

fbのメッセンジャーでオファーをもらう。交通費とかかかるのでと匂わせつつ、だまっていたら酷い目にあう…と話す五郎さん。でもそういうやりとりにおいても、いくらだったらダメとは簡単に言わないようにしている、とのこと。

そういう私もしばらく五郎さんのライブにいけてないのだけど、配信でもあるなら、ぜひまた五郎ワールドを堪能したいと思う。五郎さんのライブ、長いんだよね(笑)。だから家で聞けるのは病人にとっては嬉しいかもしれない。

この本、取次(卸し)を通していないということで、ここでPAYPALで購入できる。あと古書ほうろうさんにも店頭在庫があると思う。

五郎さんのCDやブコウスキーの本はAmazonとかでも購入できます。ぜひ!



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