「座・高円寺」ドキュメンタリー・フェスティバル『ポーランドへ行った子供たち』を観ました


本日「座・高円寺ドキュメンタリー・フェスティバル」にお邪魔しました。コロナ状況下でのフェスの開催を応援するクラファンに参加したら、無料招待券をいただいたので、この映画を選びました。

以前から何度かお邪魔したことのあるフェスティバルですが(角幡さんがトーク・ゲストで出たこの時もおもしろかったなー)、久しぶりです。上映前に2分ほどの短いクラファンのお礼みたいな映像が流れたんですが、そこで自分の名前も出てきたので嬉しかった…というか、野崎洋子じゃなくて、THE MUSIC PLANTにしたので、他の人が普通の漢字四文字くらいの名前だったのと比較してアルファベットだったから、なんか目立ってました(喜)。

会場は以前お邪魔した時よりもすいていたけど、キャパシティ半分ということを考えたら結構入っていたと思います。さすが人気のフェスティバル。

というわけで拝見したのは、こちらの映画『ポーランドへ行った子どもたち』。2018年に発表になった韓国人の監督による映画です。78分というサイズもよく、とにかく凝縮された内容でした。ドキュメンタリーだから、こんなにドラマチックな結果にならなくてもいいとも思うんだけど、いやはや韓国の映画製作者は感情を伝えるのがとても上手いなと思ったんです。いや、もうずっと見ていて、涙、涙でした。

こんな史実があったのも全然知らなかったのですが、1950年代、朝鮮戦争の戦災孤児1,500名がポーランドに引き取られていったそうなのです。つまり当時同じ共産圏だった国に北朝鮮が子供たちの面倒を観てくれるよう頼んだ。子供たちはひどい状態でポーランドに到着しました。

ポーランドの受け入れ側は、そこで子供たちのお父さん、お母さんという立場になって子供たちに深い愛情をそそいだ。彼らもホロコーストやらで国がボロボロだった時期です。戦争の辛さを痛いほど知っていました。そして…子供たちは6年後(だったかな)に北朝鮮に帰国していった。そこからは…  想像できますよね。彼らのその後については、わかっていることはとても少ない。

なんとかポーランドに帰りたいと歩いてポーランドに向けて歩き始めた子もいたそうです。その子は国境近くの田んぼにはまってしまい、亡くなってしまった。ある子供はポーランドでお世話になった校長先生に手紙を書いた。「僕を連れ戻してください…」  でもそれは不可能なこと。校長先生は泣く泣く返事を書くのをやめたそうです。そのことを涙ながらに語る先生。つらすぎる。

それにしても、このことはポーランドでも韓国でも知っている人は少ないそうで、まずはこの件についてポーランドでドキュメンタリーが作られ、それを見た韓国人の監督がこのドキュメンタリーを作ることを決意したのだそう。人気女優として活躍してきた彼女は、自分でも子供をうむことになって、産後鬱に悩まされたのだといいます。愛情があふれるゆえに、自分の子供が死ぬ悪夢をみてしまい、うなされて夜、起きる…そういう日々が続いていきます。

このドキュメンタリーを撮ることに決めた時、そこに北からの脱北者である女優志望の若い女の子を絡ませてくるんですが、ここが(言い方は悪いけど)上手い!と思いました。いやな言い方ですが、いや、実際、これがすごく効果的にこの史実を伝えることに貢献していると思います。

調査に行く女優志望の若い彼女と監督は一緒にポーランドへと調査へ向かいます。

それにしても、北に帰った子供たちのその後がどうなったかは、わかりません。ポーランド側の人たちも子供たちを受け入れて、愛情を注いだ達成感みたいなものはまったくなく、とても脱力し、悲しく辛い思い出として傷を残したようです。

それでも子育ての鬱状態から脱却していく監督と、少しずつその監督に心を開いていく女優志望の女の子。ポーランド人の関係者に触れることで、二人の表情がどんどん変わっていくのが、すごい。そして最後は「ありがとう(ポーランド語でジンクイエ)」。

それにしても何度も書くけど、韓国の監督は人間の感情を表現するのが本当に上手い。どうしたら見る人たちの心に訴えるのかすごく心得ているように思いました。伝えるメッセージもものすごく強い。もうぐらぐら揺さぶられ、わたしも泣きに泣きました。会場からすすり泣きの音がたえませんでした。いや〜、素晴らしい作品でした。監督は同じテーマでもっと長い大作を考えているようで、まだまだポーランドに調査に行っているようですが、コロナ禍でそれも現在では中断。でもこれからがさらに楽しみですね。

なお映画のあと監督チュ・サンミ監督と配給元の小林三四郎さんのトークもあり、すごく興味深かったです。


配給会社は『音響ハウス』『マルクス・エンゲルス』『わたしはダニエル・ブレイク』などの映画も配給してらしたこちらで、都内では東中野のポレポレでコロナ禍開けに上映になる予定とのことなので、注目していてください。ドキュメンタリー・フェスはこの週末、14日まで続きます。詳細はこちら。

以下は資料です。映画の日本語情報がまだWebにあがってません。こちらは英語の字幕付き。監督のインタビュー

 

こちらは同じことを伝えているアメリカの番組? 英語ですのでわかりやすいかと。


それにしても久しぶりに電車に乗って新宿を通過した。すごく遠くまで行った感じがします!(笑)そして普段、家でオンラインで映画を見ているのとはえらい違い。真っ暗に閉ざされた空間で大きなスクリーンと大きな音。同じ会場で同じものをたくさんの人と同じものを鑑賞するのって、大事だと思いました。こういう一体感、ずっと忘れてた。

ウチも今月25日(木)にこんなイベントをやります。音楽や映画がくれる、あの一体感をぜひ。

 

 詳細はここ。