岸上伸啓『イヌイット〜極北の狩猟民のいま』を読みました。その他、ナヌークの思い出など。


積読の山から救出したカナダのイヌイットのことが詳細にまとめられた一冊。これは素晴らしい。

2005年に出た本なのでだいぶ時間がたっている。グリーンランドのバンドをプロモーションするにあたり、グリーンランドの資料をさぐっていく中で、岸上先生の存在を知り、そしてこの本もゲットした。本はしばらく積読になってしまっていて、やっと最近読んだ。すみません、先生…

イヌイットの生活やその哲学には、現代を都会で生きる私たちが知れば感動ポイントが多数あるのだが、その情報はとにかく限られている。一応一冊にまとめられた書籍ですら、そもそもサンプル数や取材も限られている状況の中、なんとかフェアな視線で彼らの生活を伝えようと努力を惜しまない先生の姿に心を打たれた。

時間の感覚の違いやイヌイットの人懐っこさ、そしてはびこるアルコール問題や自殺の問題など、イヌイットの典型的な生活や考え方、80年代から現在にいたるまでが書かれている。

唯一、私ができれば書いて欲しかったな、と思ったのは入植者側の意見だ。グリーンランドに移住してくる白人たち(主にデンマーク人)はどんな風にグリーンランドを見ているのか。

なお実際に「イヌイット」の地域を訪ねる人のための最後の数ページをさかれた「旅の情報ページ」も興味深い。

「東京と同じくらいものが高い」と先生は書いているが、2010年代後半に私がグリーンランドに行った時、日本はデフレでグリーンランドはすべてのものがノルウェー以上に高額で、本当に辛かった。 ここは今のグリーンランドとはだいぶ違う。 

それにしても15年でこれだけ大きくイヌイットをとりまく環境は変わってきた。たぶん次の10年にはもっと激しい変化もあるだろう。新しい価値観を取り入れ、若い人たちは可能性を求めて外に飛び出していく。

 そもそも極地に行くのは探検家か、科学者… なので、こういう本は本当に貴重だ。 「みんぱく」の館長さんに就任し、デンマーク大使館の要請で先生が大使館のグリーンランドキャンペーンの準備として現地に行かれたのは、おそらくこの本を書かれた後であると推測する。

そのグリーンランドキャンペーンで、私は先生の説明で聞くグリーンランドの歴史や民族の様子をはじめて聞いたのだが、本当に興味深かった。 

その後、先生とはメールなどでご連絡をしたら、先生は私がやっていることにも興味をしてしてくださり、ナヌークの公演にご来場されたお客さんに配っていいよ、と資料本なども提供してくれた。 

偉い先生ほど、謙虚で、こういった私たちみたいなものを助けてくれる。先生お元気かしら。 またグリーンランドの仕事をするようになったらぜひご連絡したいと思っている。名著。 

 
 

ところで私が手がけたナヌークはグリーンランドから日本にやってきた時に、「相撲がみたい」と言って能町みね子さんに尾車部屋につれていっていただいたことがある。なつかしい。ご一緒した相撲イラストレーターの琴剣さんは今年亡くなられた。

この仕事していると本当にいろんな経験ができて楽しい。とはいえ、昨日のランニングで聞いた朝日ポッドキャストでちゃんこの礼儀とかを知り、私全然わかってなかったことを本当に反省。まったく赤面ものでした。

スポンサーでない例えばマスコミなどの外部のものは「余方(よかた)」といって、それでもお客扱いで先に食べさせてもらえる。でも格下の力士さんたちはまだ食べずに待っている等々。だからちゃっちゃと2杯食べたら席をたつ…等々。あぁ、もう恥ずかしい。


でも本当に楽しい良い経験をさせていただいた。
  

能町さんは「逃北」という本の中でナヌークを紹介してくれている。名著です。逃げたくなったら北へ!



昨日は昨日でやはりグリーンランドつながりの探検家:荻田泰永さんの冒険研究所書店へ。こんなイベントがありました。


やっぱり何が楽しいって、音楽を好きになる。で、その音楽をどうやってプロモーションしようか勉強する。この勉強研究過程が面白いんだ。

そこでいろんな人と出会える。この仕事は本当にいい仕事だよなぁ。いつ本業を再開できるのやら。そして新しい世界にまた出会うことがあるんだろうか。今、持ってる世界だけでも十分楽しいけどね。