山田五郎『闇の西洋美術史』を読みました。全10巻。



貼ったのは私がデスクトップの壁紙にもしているボッチチェリの「プリマベーラ」。イタリア・ルネッサンスの傑作。これ、いつか現物を見に行きたいんだよね。

実はイタリアに行ったことがないという…あくまで寒いところが好きなわたくす…次、ヨーロッパ行く時はせめて帰りによってこよ。

大好きな絵だが、ほんとこういった絵画についての知識がまるでないので、いつかいろいろ勉強したいなぁと思っていた。

いつだったか読んだ中野京子さんの『怖い絵』も面白かったけど、さとなおさんがアニキサスで食べ物への興味をたたれてからいろんなことにチャレンジされていることのひとつであるアートの世界の話も興味深い

美術展について書かれたこの本も最高だった。いまだに美術展の問題ってあまり明らかにされてないけど、現状のビジネスモデルは本当にいろいろな問題だと私なんぞは思ってしまう。

もっともテレビの事業部がからむような展覧会では、世界的にもすごい動員数を記録し、成功しているのだから私がその汚い裏事情に文句を言ったところで、どうにかなるもんでもない。美術館の行列を見るたび、ほんと日本人って権威が大好きなのだと斜めな気持ちになったりするのだが…。

ちなみに私が記憶する限り最後に美術館に並んだのはダヴィンチの「受胎告知」が来日した時だ。あれは、1、2時間並んだんじゃないかな。


レオナルドの「受胎告知」。でもダ・ヴィンチ本人の筆が入っているのは私が必死に「生ダダヴィンチ!!」と見ていたマリア様ではなく、天使と背景らしい。とほほ…

さて、そんなわけで、このコロナ禍に始まった楽しい番組がある。それは山田五郎さんのYou Tube「オトナの教養講座」だ。まぁ、でも五郎さんを昔から知る人であれば、すべてのネタは過去に五郎さんが出された本の中で網羅されていることばかりなのであるが。

何も知らないという設定のワダさん(本職はADさんらしい)とのやりとりが最高に面白く、よく見ている。ちなみに何もわからない若い子に説教するように教える五郎さんを嫌味な親父とする批判もあるようだが、この番組、そもそもこのコンセプトを発案したのはワダさんの方だったとか。いいよね!! 

こちらは人気のドガの会。


このシリーズ、特に生配信の会で知ったのは、やはり美術館がかかえる多くの問題点。そもそも常設展示が弱いとか、学校の美術の授業に「美術鑑賞」がない、とか。

例えば外国の有名美術館に行ったことのある方はご存知だと思うが、欧州の美術館には必ず先生に引率された子供の集団がいる。それが日本ではほぼ見かけない。

いったい美術鑑賞って、誰から教わるんだろ。親からか? 子供のころ「モナリザ」を見に行ったのは記憶にぼんやりとあるが…  いや、あれはパリに行った時、ルーブルでだったか。とにかく人混みがすごかったのが記憶にあり。

そして、教育がそんなんでもダ・ヴィンチやフェルメールやゴッホが来日すれば、こぞって並ぶ日本人というのは、ある意味すごい。

あと興味深い話題では、美術書の印刷の話。確かに印刷って大きな紙で一気に刷るべく輪転機をまわすわけだからこっちのページの色味が良くても、同じでかい紙にレイアウトされたものはあっちのページはだめということは考えられる。だから美術書って値段が高い。

今でも色校ある印刷って、高いもんなぁ! 五郎さんによるとバブルの頃は印刷屋さんも現地に飛ばして現物の色味を確認させたんだそうだ。すごいよね。

とにかく印刷されたものと他のものはまるで違うからぜひ本物をみてほしいと五郎さんはいう。

(ちなみに今回購入した『闇の西洋美術史』はすべてページが白に黒文字ではなく黒の白抜きで(インクをいっぱい使う!?)、絵画がなるべくオリジナルに近い形で安定的に発色するようにという、印刷に関する考察も加えられて丁寧に制作されているのだろうと想像する)

あと五郎さんの配信によれば、国立博物館とか、日本において美術館とは保存するもの研究するものという意図が強く、人に見てもらって価値があるということにはならないんだそうだ。

問題だよね。いったい誰の美術品だよ、と思う。国民のものじゃないのか? 国民が鑑賞できなくて、何の意味があるのか?

また美術の保存にもお国柄があって、ロンドンのナショナル・ギャラリーとか本当に素晴らしい保存状態なのだそうだが、イタリアなどでは大事な遺跡に子供がよじのぼったりしている…という話も面白い。

イタリアでは、壊れたら、またすごい俺たちなんだから再び作ればいいじゃないかという考え方もあるんだそうだ。美術品が本当に生活の中にある。いや、生活の中にあってこそだ、と。

美術って、芸術って、どうあるべきかって考え方がそれぞれですごく面白い。芸術って人類の財産。でもそれを生かさないと意味はないものね。

…と、まぁ、配信を散々楽しんだので、五郎さんの著作もチェックせねばいけないと最新の作品を買ってしまいました。

まずはこちらが非常に良くできた特設ページ。





 

私はよくここにも書いているとおり、お風呂の中で本を読むのだけれど、さすがにこの本は小さいとはいえダメージを与えたくなくて布団の中のみで読んだ。正直、お風呂で別の本を読み、それを中断してこのシリーズの本を手に取るのは勇気のいる作業だったけど。

でも1巻がちょうど寝る前に読めてしまう。文字はそもそも最小限に押さえられているし、小さいから布団の中で読んでいても無理がない。確かに大きな本の方が美術書としては良いのかもだけど、それじゃ顔の近くまで持ってこれないし(笑)

あとちょっと笑ったのが中世の宗教写本。


ケルズの書のあとに書かれたものでもめっちゃ素朴。


こういう凝ったやつは15世紀以降。


これらを見るとやっぱりケルズの書(8世紀)って飛び抜けてすごいなということがわかる。


「ベニスに死す」も、古代ギリシャから脈々と流れる西洋社会が基礎に持っているコンセプトがわかっているとより深みを増す。



それにしても勉強になった。こういうのって楽しい。っていうか、ヨーロッパと仕事をする自分であるならば、例えば有名な聖人の名前やコンセプトなどは一通り覚えておいた方がいいよなと思ったりしたのでした。

五郎先生、ありがとうございました。

しかしこんなふうに、その筋の詳しい先生が、全然知らない人に教える動画シリーズっていいかも。プログレでもできる公式だと思う。みのミュージックさんがマニアな人たち集めてやってるようだけど、そういうんじゃなくて…。

山田五郎先生の配信もワダさんの存在が大きい。この配信、プロの人が編集したり演出したりしているから本当にクオリティが高い。

プルグレの番組を作る場合、私としては先生にケンソーの清水さんかミスターシリウスの宮武さん(お二人とも博識なだけではなくお話がとても面白い)を推したいなぁ。

そして生徒に有名プログレバンドのアテンドをいくつもこなし、誰よりもミュージシャンに好かれながら、あの有名なN先生の名前すら知らなかったという天然面白キャラのAkiko Musicを推したい。めっちゃ爆笑になることうけあいだ。