映画『ブルー・バイユー』を観ました。これは圧巻。ぜひ観て!



すごくよかった。今、思い出しても泣けるくらい。もうボロボロにないたー 映画の世界にはいったー 

J-WAVEの映画部部長(笑)大倉先輩が大推薦していたので間違いないだろうなぁと思ったけど、本当に素晴らしい映画でした。『ブルー・バイユー

最初『ブルー・バイ・ユー』だと思ってたんだけど、「バイユー」ってアメリカの南部の湿地帯にある入江のことを言うんだって。リンダ・ロンシュタットのこの曲、知ってる?

 

歌は直接、ストーリーには関係ないんだけど、この南部の湿地帯の感じが映画全編に流れていてとてもいい。じっとりと湿気がある感じ。

そして「水」がすべてのイメージのキーになってる。主人公が子供と遊ぶ入江、主人公の思い出の中の川、バイクで突っ込む入江…などなど。

川っぺりの大きな橋の麓はまるで荒川土手? ちょっとサンフランシスコかと思った。そんなアメリカの南の田舎町の話なんだよね。

話は複雑で、国際養子縁組を得た子供が、大きくなって書類の不届で市民権を持っていないことがわかり30年後にいきなり強制送還されてしまう…という話。

30年もたっていれば、そこに日常や家族や生活が形成されているというのに…それがいきなり言葉も通じず家もない「祖国」に無理やり送還されてしまう。

ちなみに2000年のChild Citizenship Act of 2000」はクリントンの時に施行された法律。これ以前に養子縁組された人たちがこの落とし穴にはまってしまうことがあるのだそうだ。

それにしても、出ている俳優さんたちが最高にすばらしい。 とにかく話の中に引き込まれる。映画を見ながら「これは映画なんだ」と思い出させない圧倒感。

家族の心温まるシーンや、幻想的な回想シーン、生活の厳しさや、あれこれや、バイクのシーンや、窃盗シーンや暴力シーンやすべてがカメラワークから何からとてもリアルなんだよね。 

途中から「あれ、大倉先輩はハッピー・エンディングだって言ってたっけか?」「確認してから見ればよかった」と思いつつ、「お願い、なんとかなって、なんとかなって」と見ている方も必死。

最後はボロボロに泣いて、マスクまでびっちょびちょ。ハンカチとともに予備のマスクも必要です。 

なんというか、主演の韓国系の彼がもう最高! 最高と思ったら、彼が監督、脚本も手掛けてる。最初は自分で演じない方向で考えてたんだけど、「この映画に全責任を負う」ということで自分で演じることを決めたそうだ。 ジャスティン・チョンさんというとてもチャーミングな俳優さん。

カリフォルニア訛りの英語で、彼は実生活でも「歌えない、踊れない、韓国語話せない」ということをネタにしたコメディなんかもやっているそうだ。

そして奥さん役の彼女! 彼女がまたいい!! 名前はもちろんどこで見た女優さんだっけなーとずっと思い出せず、ずっと考えていた。そちらの方の役でも彼女は長いまつ毛に涙をいっぱいためて押し殺したように泣いていた。 

 パンフレットを買って一行目の「スウェーデン人」で思い出した。そう!『リリーのすべて』で最高の演技を見せてくれた女優さんだ。 アリシア・ヴィキャンデル。(ほんと名前が覚えられない私)

そして子役が… これまたやばい! 書くとまた泣けそうなので書かないが、最高に素晴らしい。

別れた旦那の彼も実はいい味だしてる。(彼はアイリッシュ系と見た。すごくいい!!)そしてベトナム人の雰囲気のある彼女、そしてその言葉が通じない寡黙なお父さんも最高。 

 でもとにかく…とにかく「お話し」だってことを忘れるくらい、この映画の中に入り込んじゃった。 最後の展開がもう… 何がなんだかハラハラドキドキ。こんなに映画に感情移入したのは久しぶりだ。 

 どうやら、こういう家族がいきなり引き裂かれる事例はアメリカで次々と起こっているのだそうだ。本当につらい。

映画を見終わって、この家族のこの後のことをいろいろ想像した。そして、少しでもこの家族が良い方向になっていることを強く願わずにはいられない。 

しかし終始この映画にすんなり入り込めるのは、クライマックスで日本の映画みたいにドラマチックな音楽とかを加えてないからかなぁ。ここで泣ける音楽とか入ったら、最高に泣けるだろうけど、見終わった後「どっちらけ」とかありうる。

それがなんかチープな音楽とか入っていない分、カメラワークと俳優の演技で見せる、じわじわ来るクライマックスなんだよね…と今なら冷静に分析できるが、いやー マジで映画の世界に入ったわ。

同じテーマを取り上げた硬派なドキュメンタリーはいくつかあるが、こういう、言ってみればポップなフィクションの形態で見せる映画は説得力が違う。

普段社会問題とかに興味のない人にも見てほしい。そして知ってほしい。というか、それが映画の意図なんだよね。

あ、あと思ったのは…  犯罪とかトラブルってこう言うふうにギリギリに追い詰められて本来なら善良な人が手を染めてしまうことが多いわけで、こういう問題がなくなったら、それだけで犯罪とかが激減しそうな気がする。…なんて単純すぎるか。

それにしても、監督、すごいな!! いやー パワフルな作品でした。教えてもらえなかったら見てないだろうから、大倉先輩ありがとう! みなさんも見てね。

あ、そうだ、パンフレットに載ってた武田砂鉄さんの文章がとても良かった。古い上品な地方都市の喫茶店の話。まさにある、ある。上品で上質で素晴らしいと思っていたおじさんにありがちな選民思想。必読です。