秋山訓子『不思議の国会・政界用語ノート 曖昧模糊で日本が動く』を読みました。


曖昧模糊(あいまいもこ)= 物事がはっきりしないで、ぼんやりしていること。知らない言葉だった。56歳にもなって、ほんと世間を知らない私。

尊敬する朝日新聞の秋山先輩の本。秋山さんは私と同じ歳くらいなんだけど、なんか頭がよくって、美人だし、私はいつも尊敬の眼差しで見つめている。なので、勝手に先輩と呼んでいる。

秋山先輩は、女子プロレスが好きで、その割に可愛いものが好きで、着物とか自分で縫っちゃったり(無心になれるからいい、という。私の編み物と一緒だ)いいわーといつも思っているのだ。

女の人には2種類あると思うけど、秋山先輩も絶対に女友達が多いタイプだと思う。私も本当に友達には恵まれているけど、秋山先輩もそういう感じだ。あぁ、リアルでお友達になりたい(笑)

秋山さんの存在は朝日ポッドキャストで知ったのだけど、声がすごく通るのでポッドキャストもすごくわかりやすいし、話す内容がすっごく面白い。絶対に音声メディアに向いている人だと思う。

一方で、秋山さんの本を読むのは「女は政治に向かないの」に続いて2冊目だ。この本もめっちゃ面白かった。で、この「不思議の国会〜」は、2018年、第2次安倍内閣の時期に書かれたもの。

もちろん読んでいるおt政界のおかしなリアルが面白く、私たち一般市民との感覚のずれに大いに呆れるのであるが、一方でこの本を読んだあとに大きく残るのは、秋山さんが話してくれる政治家のちょっとしたエピソードだ。

例えば麻生太郎は私のもっとも嫌いな政治家な一人だけど、彼がトイレに入って手を洗った時、濡れた洗面台をハンカチでぬぐうという話は妙に感動した。

ペーパータオルがあれば、私もぬぐうかもしれない。飛行機内の狭い場所では必ずやるけど、普通の大きさがある洗面台だったら、ひどく汚してしまった時以外は滅多にやらない。それを自分のハンカチで!?って、すごくないか?

もちろんそれにはハンカチを毎日変えて洗濯してくれるお手伝いさんがいるとか、そういうこともあるのだろうが、それにしても「お育ちの良さ」が見てとれるエピソードだ。あの横柄な物言いとか、大嫌いですよ、大嫌いなんだけど!! ちょっと好きになったかも。

他にも実は秋山さんが取り上げると、保守系の政治家さんでも、ちょっとファンになってしまいそうになるんだ。

これって面白いよねぇ… いや、秋山さんがそういった政治家さんたちを褒めているというわけでは全然ないのだけど。なんだろう、人柄がわかると身近に感じるってことなのかな。

また曲がりなりにも彼らは政治家。人間的魅力がなければやっていけないのかもしれない…なんてことを思うのであった。

あと爆笑なのが、番記者の話。「総理番」になると議事堂から首相官邸まで、総理の移動とともに総理番の記者も走るんだって。もちろん総理は車で移動。追いかける記者側で車があるのは共同通信と時事通信だけ(笑)。

多くの総理担当の若い政治記者は自分の足で走る。これを「番(ばん)ダッシュ」と呼ぶ、とか(爆)。

他にも壁に耳をあてて中の様子をうかがうとか(スパイ映画みたい!!ほんとかよっっ!?)信じられない政治記者生活。若くないとやってられない。若い頃の秋山さんは、疲れ果てて人気のないソファでこっそり寝たり、本当に大変だったそうだ。

あとこれはこの本ではなくポッドキャストの方で聞いた話なんだけど、橋本龍太郎さんの、当時の総理番をしていた秋山さんのカーネーションの話はすごく人柄が感じられて、ぐっときた。

新人の秋山さんは「総理を怒らせてしまった」とめっちゃ落ち込んだそうだけど、あとから他の記者に「あれ、秋山さん、総理が探してたよ」と言われたそうだ。

そのエピソードについてはこちらの記事にも載ってますし、このポッドキャストでもものすごくおもしろく秋山さんが話してくれてますので、ぜひ。


その他、本当に細かい国会、政界での日常の変化を聞くと、どんなに安倍政権が異常だったのかもわかる。

どんなに強権で記者に対しても酷い態度なのかも…。そして安倍政権がいかに経産省との関係を深め、置いてけぼりになった財務省が焦って森友学園の文書改ざんを招いたのではないか…とか。こういうことも、毎日見ている記者だからこそ気づく何かがあるんだよね…

他にもエレベーターの前でのやりとりとか政治の世界には独自のルールがたくさんある。政治家に「どうぞ」と言われても記者が先に乗ってはいけない。乗るにしても、かならず「どうぞ」「いや、そちらから」とやりとりが一往復あってから、乗らなくてはならないんだそうだ。…超面倒くさい!

あと秋山さんによると、仏頂面の強面のおじさん政治家が笑うとめっちゃ可愛かったり(小沢一郎は見学に来ていた養護学校の生徒さんたちに写真をせがまれ、めっちゃ可愛い顔して笑っていたそうだ)。

あとこれは複数の政治家も行っているけど、野中広務さんも笑顔がよかったそう。うーん、想像できない(笑) 普段のイメージは戦略なのか?!

一方で自分のイメージの演出がうまい政治家もいるそうで、小池百合子さんなどはその最たるものであるとも。

秋山さんが聞いた小池さんにまつわる証言では「すごい料理好きの料理上手。よく手作りの一品を持ってきてくれる」というのと「家に行ったけど台所を使っているようには見えなかった」というのもあるそうだ。まさに????? 

そしてそれが彼女の戦略なのかも、と秋山さんは思ったのだそうだ。(そういや小泉純一郎さんにお弁当を作ってきている…って噂あったよね…)

あと笑ったのは政治家の呼び方。ボスを指して男性なら「オヤジ」と呼ぶのはなんとなくご存じの方も多いだろう。では女性政治家は?

…これがなんと「ヒメ」なんだって。爆笑! 女性政治家ってお姫様だったの!?

他にも田中角栄の私生活でのパートナーでもあった佐藤昭さんとか、名物秘書の話題も面白い。また秘書なのに高級車に乗って派手な行動をしていた人も。

また多くの政治家が秘書やお付きをゾロゾロ連れて歩くのが好きな中で、少数派ながら少人数で動く人もいて、その最たる存在が小泉純一郎だったとも。これ、いいなぁ。

わたしもゾロゾロと人がついてくるミュージシャンやアーティストが大嫌いなので、そういうことにも、なるほどと妙に感動した。

他にも料亭政治。料亭の若女将と某有力政治家(現職)が恋仲で、地元の有力支援者と結婚したその日に(いわゆる初夜です)その政治家は料亭を訪れ、一晩中夜が明けるまで同僚の政治家(故人)と飲みあかしていたとか…。

もちろん本にも実名は書いてないけど(笑)なんか… 悲哀である。

あとこの本には希望も感じられる箇所もたくさんある。

例えば国会でも話題になり待機児童の問題に議論を巻き起こした「保育園落ちた、日本死ね」の話や、銀行の休眠口座のお金がかつては銀行の利益(700億円!)になってしまっていたのが、公的な活動に使われるようになったとか。

これも民間の人の呼びかけによって実現したのだそうだ。そういう明るい、希望が見える話題もあった。

私なんぞは、ほんとに毎日好きな仕事をし、ストレスなく人生のほぼ大半を過ごしてしまったがゆえ、こういう大人な場所というか、公の場では、まだまだ「社会科見学」感がぬぐえないのであるが「なんかおかしいだろ」という自分の素人感覚は間違っていないと感じた。

こうやって見てみると政治家も人間なのだな、と。みなさんも「自分自身のまともな感覚」を大事にした方がいい。そこに自信を持っていい。


それにしても朝日新聞ポッドキャストの秋山さんの回大好き。

この回も秀逸。最後の神田さんの「もてないでしょ」ってのが大ヒット。進次郎、本当に人間として内容がないというか… 。ぺらっぺらというか…。

でも小泉家の例のお母さんと思ってた人が実はおばさんだったというエピソードとか「へぇー」という部分も多く、めっちゃ面白かった。(でもそれも小泉家のパワーの元に守られていたのだということもある。それわかってるのかな、この人)

政治家の家に生まれるってこういうことなんだね…
   

女性政治家シリーズとか、面白いよーー。Spotifyにもたくさん上がってますよ。こちらへどうぞ。