映画『ベルファスト』を見ました。感動の嵐です。これは絶対に見て!


いっやーーー めっちゃ良かった。これは本当に良かった。最高の映画。このクラスのマイ・ヒットは「若草物語」以来かも。

3月25日公開とカレンダーにメモっていたのだけど、22日に信頼している友人のツイートで、こういうものがあり…

うわー、いいなぁと彼の感想に感動するのと同時に、えっ、先行上映やってんの!!というわけで、私も急いで駆けつけて正式公開の1日前にみることができました。皆さん、アンテナが高い。結構、混んでましたよ、劇場。

それにしても、タイトル。ついつい「ベルファースト」って言っちゃうよなぁ。「fast」だから表記は「ファスト」でいいんだろうけど。現地の言葉だと絶対に「ベルファースト」って言ってる。「ベル」のところが高くなる。

ベルファーストでいつも思い出すのは、あの駅の脇にある大きなコンサートホール。Waterfrontって言ったっけ。ポール・ブレイディの公演と、あとすっごい前にアルタンとシャロン・シャノンの公演も見たなぁ、懐かしい! ホールの横にヒルトンホテルがあって、そこにみんな泊まってた。

そうやって、いろんなところへ行ったことが、本当に今になって心から嬉しく思う。本当にそうやって行ける時に行っておいて良かった。

…話がそれた。そんな思い出があるベルファーストだけど、この映画の冒頭にそのWaterfrontのホールも映るよ。他にもベルファーストではロビン・ヒッチコックのコンサートを見たり、メアリー・ブラックのコンサートを見たり、結構良い思い出がたくさんある。

ベルファーストの印象は、道路が北に入ると共和国側より綺麗に舗装されているということ。あとお金が変わること(笑)。

北アイルランド問題についてはいろいろ思うこともある。この映画の後援が「アイルランド大使館」なのもちょっと複雑。

今、アイルランドは例えば政府観光局も、北と南、合同で観光誘致していこうという動きがあったけど、あれも今、どうなっているのだろうか。ブレグジットもあるし、結構複雑ではある。

でも時間はかかってもベストな道を模索しているよね。結局それしかやるべきことはないんじゃないかな。

例えばポール・ブレイディなんかは国境沿いのストラバーン生まれ。両親は二人とも教員で、北アイルランドと共和国とそれぞれの教員免許だったから、国境の街に住むしかなかったのだと言っていた。

1947年生まれのポール自身はカトリックとプロテスタント、男女がミックスされた学校に通い、それは当時ではめちゃくちゃレアなシチュエーションだったと話していた。ものすごくリベラルな学校で、小学校は本当に楽しかったらしい。

この映画「ベルファスト」では、主人公の通う学校はミックスされた学校だったみたいね。好きな女の子がカトリック系だったりしてる。(ケネス・ブレナー監督は1960年生まれ)

日本みたいな国から眺めていると、なかなか想像つかないだろうけど、これは複数の北アイルランド人から聞いている話なんだが、北アイルランド問題って確かにあるんだけど、普通の人はいきなり喧嘩なんか始めないし、普通にハーモニーの中で暮らしているんだよね。

この映画の中でもバディに万引きを教える年長の女の子がカトリックかプロテスタントかは「名前でわかる」なんて言ってたけど、それはわたしは初めて聞いた説。実際どうなんだろう。

私が聞いた話だと、北アイルランドでは、最初知り合った時、まだ人間関係に距離があるうちは、誰もはっきりは直球で「カトリックかプロテスタントか」っていうのは、聞かないだって。

で、だんだん仲良くなっていくと会話の中で徐々に知っていくんだって、その人は言ってた。それにお互いが違う宗派だからといって、いきなり喧嘩にはならない。(その人はたぶん60年代生まれ)

そうなんだよ、普通の人たちは、普通に人間らしくいられるように、普通に調和の中でバランスをとって仲良く助け合って生活している。

映画の中で「過激派の連中がひどくなって、まともな人たちが街を離れたら、街に残るのは過激派の連中だけになって、あいつらはご飯を作らないし、何もしないから滅びる」みたいなことをお母さんの姉妹(主人公のおばさん)が話していて、「ほんとだよなぁ」と思う。

とはいえ、ポールとかの世代だと本当に北か南かというのは大きなイシューで、その後北の超カトリック系おぼっちゃまボーディングスクールを出たポールは、果たしてクイーンズ(北・ベルファースト)に行くか、トリニティ(南・ダブリン)に行くかで大きく悩み、ここでダブリンを選んだことが大きな人生の転換になった、と話していた。

ここでベルファーストを選んでいたら、たぶん伝統音楽の世界とは触れ合わなかったかもしれない。

ちなみにルナサのトレヴァーは、あぁ見えて(って失礼だけど)ものすごいインテリで、ベルファーストのクイーンズを卒業してる。

話を映画に戻すと、とにかくいいんだ、昔のアイルランド。近所のみんなが仲良しな感じ。先日のこの映画でもそうだったけど、言葉がいい!

夕飯をTeaと言ったりするあの感じ。「Yes」を「あーい」というあの感じ。「あーい」「あーい」めっちゃ可愛い。わたしも自然に「あーい」が出るようにしたいんだけど、いつも忘れちゃう。あーい、あーい!

それにしてもほんと、主人公の子が、もう最高中の最高なのよ。キラキラしてるのよー キラキラ!! 表情がめちゃくちゃいい。目がいい。本当に自然で、最高で、ほんと監督、すごい子見つけたわー!

とはいえ、子役自身の才能もそうだけど、是枝監督も言ってたけど、彼をとりまく共演者の協力というのも素晴らしかったんだと思う。

ちょうどこの映画はパンデミックの隔離の中で撮影許可がおりた最初の映画の一つだったみたいで、出演者もスタッフもいわゆる「撮影バブル」の中で行われたんだって。だからすごく家族的な親密な雰囲気だったらしい。

でもわかるわー パンデミックみたいなことがあって、「もう絶対にやらなくちゃ」「これやらずには死ねない」って思う監督の気持ち、出演者の気持ち、なんかわかるわー そのパワーの結晶がこの映画なのよね。

まぁ、家族全員最高なのよ。もうヴィクトリア女王からアイルランドの貧しいおばあちゃんまで一気に振れちゃうジュディ・ディンチはもちろん素晴らしいのだけど、おじいちゃんが、これまためちゃくちゃいい。

いつもトイレに座ってる(笑)。

孫に対して教える数学のコツも最高! あぁ、もういちいち思い出しては嬉しくなっちゃう。

そうそう日本人って映画で笑わないんだけど、わたしは日比谷の映画館で最前列でこの映画を見て、隣3席くらい誰もいなかったのをいいことに結構ドッカンドッカン笑っちゃった。これアイルランドでみんなで笑いながら見たい。

そして家のことを決めるのは、女の方なんだよねぇ… としみじみ。お母さんもすごくいい。町山智浩さんがお母さんのミニスカートをめっちゃ嬉しがってたけど(笑)、そうこの時代の若いお母さんってみんなミニスカートやサブリナパンツだったのかも。すごくいいわ。

あ、そうそう、万引きを教える女の子が、これまたいい。この子はいとこなのか、近所のお姉ちゃんなのか…  なんか、ちょっとシアーシャ・ローナンにも似てるし、声だけ聞いてるとシアーシャみたいにも聞こえる。この子のアクセントも最高!

あとねぇ、これはもう絶対に反則というか、やばいんだけど、ヴァン・モリソンが音楽なのよ。ヴァンの声が流れるたびに、もうわたしなんて何度も涙でちゃう。これ、ずるいよねぇ。

もう映画みて、泣いたり笑ったり、本当に忙しかったわ!!

ポールが「俺がやりたかったのにぃ」とか悔しがってそう。それにしてもパンフレットのヴァンの紹介はなんか…  確かにこういうなんとかの順位とかはすごいと思うけど、なんか心がこもっていない…と思うのはわたしだけなのか。

ヴァンで1ページ欲しかったよなぁ。レコ社はサントラとか出さないんだろうしなぁ。そして、なぜ代表作=フィルモグラフィーになっちゃうんだろう…等々、ケルト警察は複雑な気持ち。

それにしても北アイルランド。前にガイドの山下直子さんも言ってたけど、今や共和国ともブリティッシュとも違う、新しい「北アイルランド人」というものすごく魅力的な国民性を生み出したと思う。すごいよー 

その直子さんの感想ブログもとても良いのでぜひ。


 

映画を見た人はこっちらもぜひ。それぞれのシーンを思い出してまた泣いてください(笑)


 

しかしWakeが盛大なのは、北も南も変わらないね! 
この曲歌うお父さん、すごく良かった!


あーー、それにしても最高の90分だった。ん、西新井でもやってる!! あそこ字幕映画は人がはいらないから平日昼間行ったらガラガラだろう。バスでウチからすぐなんだ。絶対に行こう。そして一人で大声で笑って映画を楽しむんだ!

あぁ、あと10回くらい見たい。監督、素晴らしい映画をありがとう。

PS
あ、あと、なんかこの映画、カメラワークがすごいのだ。ほとんどの部分がモノクロだから忘れちゃうんだけど、なんかありえないカメラワーク(こういうの専門用語でなんて言うんだっけ)に圧倒されちゃう。最初ちょっとクラクラした。すぐ慣れたけど。