萩原健太さんのotonanoラジオに日向敏文さん出演2 #日向敏文 #toshifumihinata

エストニアのストリートにて


7月27日に発売・配信開始になる日向敏文さんの新作のプロモーション@FM横浜OTONANOラジオ。後半です。この番組は1週間ほどRadikoのタイムフリーで聞けます。ぜひ〜

番組内での日向さんと萩原さんのお話をレコード会社さんに許可いただきましたので、書き起こしました。あくまで野崎が「こう聞いた」という内容なので、文責:野崎でお願いいたします。

ちなみに先週の放送については、こちらにレポートを載せています。

萩原さん「先週に引き続き日向さんの登場です」

日向さん「よろしくお願いします」

萩「やはりオリジナル・アルバム作るとなると姿勢は違うわけですか?」

日「統一コンセプトというのがあると作りやすくなるので、曲調もそれにあわせていきました」

萩「混乱した時代といいますか、今は戦争みたいなこともあるし、誰も体験したことのないパンデミックみたいなこともあり…。でも音楽家の方に聞くと平和な時代に良い音楽が生まれるわけではないというのはありますね」

日「それは言えるかもしれません。それはグレゴリアン・チャントの時代からもそうですもんね。宗教もからんでるし、そういうことから戦争とか起こったりすることもあるし…。(音楽は)人間が声を出して歌ったり演奏したりするものだから、そこにいろいろ現れてくるのは当然かもしれません」

萩「もう一つ、歌詞がついている曲の場合と、歌詞がないインストの音楽の場合のメッセージ性というのもだいぶ違いますね」

日「歌詞はやはりストレートにダイレクトに伝えるし、伝わるというのはあるけれど、インストというのはやっぱりいろんなものが内包されているし、作曲家としてもそうしていきたいと思いますね」

萩「気持ちとか、言葉にできないものなんでしょうね。今回のアルバムでは時代を反映した非常に内省に入り込んだ曲が多いんですが、そんな中で僕が一番好きだったのが、これから聞かせていただく曲です。聞いていると、ちょっと外向きになれた曲でもあります」

M1:So near and dear

萩「こういう混沌とした時代だからこそ<僕と君>みたいなことが大事だったりもするじゃないですか」

日「そういう(自分に近い)人がいると、確かに気持ち的に助かりますよね。いるといないじゃ全然違う」

萩「そういうことを思い出させてくれる曲です。ポップミュージックの世界でいうと70年代入ったころにシンガーソングライターの人たちが出てきてやった、例えばキャロル・キングの「You've got a friend」とか…」

日「あの曲は当時の人間には響きましたよね」

萩「このSo near and dearは、それに似た気持ちを呼び起こしてくれますね」

日「あぁ、それはよかったです」

萩「チェロのグレイ理沙さん、この曲でとても良い演奏です」

日「あたかも五人のチェリストが弾いているように演奏してもらいました」

萩「ふくよかなイメージを伝えてくれていますね」

日「チェロって高い音を演奏するのがとても難しいんですけど、とても綺麗に演奏してくれました」

萩「最初ヴァイオリンなのかなと思って聞いていたんですが、これはチェロのアンサンブルなんですね」

日「(チェロでやると)ヴァイオリンで同じ音域を演奏するよりも太く重い感じになるんですよ。だからあえてヴァイオリンを使わないで、その音域でもチェロということにしました」

萩「グレイ理沙さんって、安定している部分と儚い部分が同居しているような感じ、せつない部分というか、繊細さみたいなものを良い感じであわせもった音を持ってらっしゃいますね」

日「そうですね。実は偶然だったんですが、NHKのETV特集という番組の音楽をやった時に、その番組の最初の5秒くらいにチャンネルIDというか、テーマみたいな音楽が流れるじゃないですか」

「MA(音声の編集)の時にそれを見てピンとくるものがあるものがあって。これ誰が演奏してるんだ?と聞いて、彼女の名前を教えてもらったんです」

「お願いしたら、実はパリ音楽院に留学していたり、いろいろ経験がある方みたいで、すごく若いんですけど結果的にとても良かったです」

萩「僕らもそういう個性を知ることができてよかったと思います。そして日向さんといえば、この人! 中西さん。ヴァイオリンの中西俊博さんも参加してらしゃって。これが面白い企画で(笑)」

日「彼にも何十年ぶりかで会ったんですよ。彼は今郊外の自宅に素晴らしいスタジオを持っていて、中西くんの家に行ってあーだこーだ言って録音してもらったんです。中西くんには過去何度か頼んだことがあるのですが、僕の曲をよく理解してくれるんで、今回も素晴らしく解釈してくれました」

萩「日向さんが今回のアルバムの収録曲を解説している文章をちらっと読んで一番うけたのがここなんですけど…日向さんの曲をサンプリングしている人が最近とても多い、と。だったら自分もやろうかと思って…と自分の曲をサンプリングしました、という(笑)」

日「ええ、そうです。なんか、ふとそれを思いついて、どの曲をやろうかな…と思って(笑)。サンプリングして、それにつなげられるかなと思って」

萩「Little Rascalという曲で…  過去に中西さんがヴァイオリンを弾いてらして… そっから出来上がった曲をこれまた現在の中西さんが弾くという」

日「そうなんですよ、タイムマシーンなんですよ」

萩「面白いことを考えるなぁと思いました」

M2:Little Rascal on a Time Machine

日「あっという間にできてしまった曲です。これに中西くん入れたらばっちりだなぁと突発的に自分で思い、それで中西くんの家におしかけちゃったんですけどね」

萩「中西さんも面白がってくれた感じですか」

日「こうなるの?みたいな感じで。85年の中西くんが最初の30秒にいるんですよ。そこから発展して、現代の中西くんが出てくる。(当時と今と)微妙にフレージングも発展しているというか、違うんですよ」

「彼の音っていうのは低いレンジでのビブラートに独特の味があるんですけれど、その深みがさらに増したというか…聞いていて、ニヤニヤしちゃいましたね」

萩「自宅で自分でいろんなことができる時代ですけど、誰かとやることの大きさって、音楽に関しては間違いなくありますね」

日「作る側もそれを求めちゃいますね。(そして出来たものが)100%と思ってたものが120%になるともう最高の喜びになりますね」

萩「一連のパンデミックの中で誰かと何かをやることが難しかった時代に、ちょっとずつ復活していく何かのキザシが見えてきたので、聞く方としてはいろいろ期待します」

日「新しい方法が見えてきましたね」

萩「でも日向さんの音楽って、いろんなところで使われているから、自分の思いもよらなかったところで、いろいろな発見があるんじゃないですか?」(日向さんの楽曲はサンプリング、You Tubeなどの素人さんの「弾いてみた」演奏、カバーなどがとても多い)

日「そもそもこの2年はその発見ばっかりだったです。昔の僕の曲がこういう風に利用できるんだ…と。ラッパーとか、常に違う物、新しい物を探している人たちじゃないですか。その人の素材になれたというのは、ある意味嬉しいです」

萩「あぁいうグルーブつけるんだ…みたいなね」

日「本当にそうですよね。特に彼らのアイディアっていうのは、(元の曲が)3拍子でもなんでも関係なく、4拍子のラップのビートにうまくあわせていく…あれはちょっと驚きましたけど」

「アプローチが自由なんだと思うんです。それは本当にガチガチに曲をつくる作曲家としては、学べる部分だと思います」

M3:Books and a Fireplace

萩「この曲、タイトルもおじさん世代にはぐっとくるタイトルですね」

日「まぁ、これは本当にこのタイトルそのまま。自分の理想の環境、そこから出てくる妄想みたいな。こういう場所にいたいなという願望ですね」

萩「パンデミックで、今、一人時間の過ごし方というのも学ばさせられましたよね」

「というわけで、7月27日にニューアルバム『Angels in Dystopia Nocturnes & Preludes』がリリースされます。世界に向けてストリーミング配信もされます。これはまた世界中のいろんな人たちが日向さんのメロディを遊んでいくというか…(笑)それぞれのやり方で受け止めていくというか…」

日「24曲も作っちゃったので…(笑)聞いていただきたいです。曲を書く人間としては、今でいうコンテンポラリークラシカルとか、ネオクラシカルといか、表現できる場所が広がったので、そういうところで自分の曲を提供していきたい気持ちがどんどん出てきています」

M4:Marigold - Epilogue

というわけで、日向さんの新作発売まで、あと3週間〜。そろそろ先行配信なども始まるようですよ。お楽しみに!