いよいよケルト終活? 出版事業を始めます!


やっと長い長い秋のツアーが終了し、今、やっとほっとしていますが、まだまだあれこれストップしていた業務が滞っているのは事実。ご迷惑をおかけしている皆さん、申し訳ありません。

昨日やっとケルト市の出店者の皆さんに、出展マニュアルをお送りしました。届いていないという方、ご連絡ください。

自分のイベントとしては久しぶりの秋のケルト市。こちらを成功させないといけません。11月27日(日)です。特設ページにて詳細をチェックしてみてください。

アイルランド大使館さんがイエーツのパネルを貸し出してくれる他、あれこれ追加情報がありますが、なかなかホームページに反映できてない。アップデートせねば!!


そして…!!!! 実は今度のケルト市では、ものすごいもの?!を販売いたします。

アイルランド音楽名盤ガイド Vol.1と題しまして、ポール・ブレイディの78年の名作『Welcome Here Kind Stranger』のリスナーズ・ガイドを、発売します。

そう、なんと! THE MUSIC PLANTは、この秋、出版事業を始めるんです。いや〜、わたし、本が大好きなんですよね。だからいつか出版プロデュースにトライしてみたかった。その夢を半ば無理やり叶えました!! 嬉しい。

当初、著者もののエッセイのリリースを考えていたのですが、どうも著者ものは予定が見えない。著者第1弾、第2弾、第3弾まで想定していたのですが、そのどれもまったく予定通りにスケジュールが進みません。

 一方で、一人オフィスのウチの内情でいえば、スケジュールの組み立てが仕事のキモでもあるわけです。予定が見えないものに対して成果を出すことはほぼ不可能に近いし、そこに自分の生活をかけて取り組むのはとても難しい。

でもなんとか自分が引退する前に(60歳引退予定。あと4年)本を出したい。わたし、本、本当に好きなんですよね。下手すると音楽より好きかもしれない。

 なので、自分で出す本としてはどんなものがいいだろうと考えていた頃、ひょっとしたきっかけで作曲家の日向敏文さんの最新作を、この夏、プロモーションすることになったのでした。

実は、日向さん。86年にリリースした楽曲「Reflections」が世界中の若者の間で大ヒットとなっているのです。ちなみに、これを書いている11月現在、6,000万再生という驚きの数字!?

そしてその日向さんのインタビューに立ち会ったり、お話を聞いたりしているうちに、配信で音楽を提供していくことに関しての自分の考え方がぐるっと変わってしまったんですね…。

もちろん前からSpotifyは有料会員になり、配信で音楽はしょっちゅう聞いていました。しかし自分の仕事としては、CDを出して、それを売って仕事としていた。コンサートを作ってチケットを売っていた。

配信はお金にならないからと基本まったく無視してきた。でもリスナーの立場からすれば、世の中にはお金がなくてCDを買えない、でも音楽を聴きたいという若者がたくさんいる。そんな単純なことに、気づいたのでした。

 日向さんのファンの中には本当に貧しい国の子どもたちが多くいるのだそうです。そういう子たちが夢中で日向さんの音楽を、それこそすがるような気持ちで聞いている。

そういう人たちに、CDという高額なものを売ろうとするのは、もしかしたら一方的な勝者の論理なんじゃないか…と。

そんなふうに考えたことはこちらのブログにも書いてあります。(ちなみにこの日は安倍元首相が亡くなった日でした)

まずケルト音楽はアイルランドや地元の国のセッションでしか聞けない時代があった。それがレコード、ひいてはCDという録音物になり世界をめぐった。チーフタンズが出現して、ステージにケルト音楽を上げ、それは世界中で演奏されるという時代が訪れた。

日本もその中にありました。そこに自分はラッキーにも関われた。でも、今、パンデミックを超えて、果たして高いコンサートチケットやCDを買う人がどのくらい残っているのだろうか。

大ヒットするようなポピュラーミュージックや「ザ・芸能界」みたいな場所とは違う、誰も知らない、まったく売れない音楽をプロモーションしている自分は、とても可哀想な音楽業界人だと思ってきたけれど、それはほんとうにそうだったのか? 

自分はたまたまラッキーにも生き残れてたくらいに思ってきたけど、それは違うのではないか? もしかしたら、自分は勝者だったのかもしれない。勝手な勝者の論理で世の中を見ていなかったか? そしてCDを買ったり、チケットを買うことをお客さんに押し付けてこなかったか?

よくいじめられた方がずっとそのことを覚えているのに、いじめていた方がすっかりそのことを忘れている、ってありますよね。そんな感覚です。まったく自分の立ち位置が見えてなかった。

そう思った時、もう自分の時代は終わったんだ、次の世代にアイルランド音楽を残していくにはどうしたらいいだろう…と考えたのです。配信で音楽を聴く若者の中に、こういったニッチな音楽にたどり着く人がほんの数名でもいるかもしれない。

そういう人に、この音楽に関する十分な情報と、わたしが注いだ愛をつなぐことが…というと大袈裟か(笑)…でも、偶然このニッチな音楽にたどり着いた人が、もっとこの音楽を知るためのガイドになるような情報をまとめたものを作りたい。

それは従来のディスクガイド的なものとは違うものが良いとも考えました。

若者は… ものの本によれば(笑)、いつも時間がなく映画も倍速で見たりして、とても忙しいのだけど、オタクにあこがれてもいる、と。そんな話も知りました。ちなみに参考になったのはこちらの本でした

彼らは自分が適度ハマれる、そして周りと違った自分のアイデンティティを形成するための、オタク文化的なものを常に必死に探しているのだ、と。

とすると、日本におけるアイルランド音楽=ニッチなものの今後に、まだまだ未来はあるんじゃないだろうか?

そういう人たちの役にたつようなガイドブック的なものを出せないだろうか。

いいや、そういう人たちこそお金ないし、本なんか買わないかもしれない。

でも、それでもいいや… 日本におけるアイルランド音楽に関する仕事がまだ存在しているとするならば、こういう本を作ることは大きく外してはいなんじゃないか? 

とりあえず90年代から今までアイルランド音楽にかかわり、2020年まで生活できたものの使命だと思って、これをやってみようじゃないか…

そして、第1弾としてポール・ブレイディの「Welcome Here Kind Stranger」を取り上げることに決めたのです。

ポールの78年の名盤のライナーノーツ、歌詞、歌詞対訳、あれこれ資料的なものとは別に、名曲「Lakes of Pontchartrain」にまつわるエッセイや、物語、漫画、ギター譜、そしてポールのことを今まで応援してくれたライターさんたちのインタビュー記事やライブレビューを掲載しました。

特にスペシャルだと自分でも思えるのは、山口洋さんの「Lakes〜」のノベライズ版「ポンチャートレインのほとりで」。いやー 山口さん、らしい!! こういうものがこの世に生まれると、本当にプロデューサー冥利につきる!! お願いしてよかった!!

そしてポールが何気なく日本ツアー中に書いたブログの文章「日本に戻ってきた」です。

ポールって、いい人じゃないから(笑)お世辞みたいなことは絶対に言わない。日本のファンにこびることはいっさい書いてありませんが、私はこの文章は、本当にすごいと思っています。

これをポールに書かせた、日本のリスナーさん、すごい。これはポールと日本のリスナーをつなぐ、お世辞とか綺麗事とかとはまったく関係のない、率直な心の言葉だと思うんです。これを五十嵐正さんが訳してくれました。

ミュージックマガジンの名連載「音楽の発火点」からは、石田昌隆さんの記事も掲載させていただきました。掲載当時、写真はモノクロでしかも1点だけだったと思うんですが、今回はカラーで、同時に撮影された未発表写真も今回掲載の許可をいただきました。

またこの本で一番多くの写真が掲載されているのは、写真家の藤岡直樹さんの作品です。藤岡さんには、この本の制作の最後のさいごにポールの撮影時のちょっとした秘話を書いていただきました。確か、恵比寿の撮影スタジオだったんだよな…あれが、こんな形になるとは!!

松山晋也さんの入魂のライナーノーツ(2011年執筆)も素晴らしい。天辰保文さんが書いてくれた毎日新聞の涙がでるようなライブレビューも。

そしてあれこれアドバイスをくれた五十嵐正さんにも感謝です。実は「Lakes〜」のノベライズというのは五十嵐さんのアイディアです。洋先輩にお願いしようと決めたのは私ですが!


それにしてもポールの日本で行ったインタビュー記事には、本当に素晴らしいものが多いんです。ポールはよくインタビュー中、固まってた。そして「これに答えなくてはいけない」と真剣にインタビュアーさんに向かっていた。

そして出来た素晴らしい記事は、すべて雑誌の期限が来てしまえば、もう読むことはできません。でもそれをもう一度読んでもらえるような形にしたかった。

すべてが、日本でポールの仕事をしてきた私にとっては最高の思い出なんです。

加えて過去の記事を掲載させていただくことによって、今までポールを応援してくたライターさんたちに文章の再利用料として少額ながらお礼がお支払いできるので、そういった意図もあります。

私も「もう自分の年齢ではツアーはできないな」とひしひしと自分の衰えを感じています。そんな中、本当にお世話になった人たちにお礼をして、自分の仕事の「終活」を始めないといけない。

正直、秋のツアーで大変な中、あれこれ作業を進めるのは大変でしたが、そこは敏腕編集者の菅野和子さんと、天才デザイナーの高橋そのみさんの多大なるご協力をたまわり、なんとか本を仕上げることができたのです。

写真は私の宿泊先まで来て、レッツ校正作業のお二人…こっそり撮影したよ(笑)
本当にありがとうございました!!!



色校は、ずっとこうやってホテルの部屋に飾っていました。嬉しすぎる!!


こちらが昨日届いた完成品。128ページ、オールカラー。



というわけで、この本については、この週末中に特設ホームページを作りますので、そこで詳しい情報はご覧ください。 →  こちらにページ作りました

一般価格は2500円+税と高いですが、とりあえずはケルト市で特別価格(2,000円で紅茶付き)で販売し、その後はウチのホームページで同じく特別価格で通販予定。

AMAZONへは流す予定にしていますが、こちらは当然定価になります。また流すにしても来年1月くらいかなと思っています。一般の書店様への流通も今のところ考えていません。そんな情報も追って決まり次第、こちらでご案内していきますね。

秋のケルト市は、豊洲駅直結の豊洲文化センターにて、11月27日(日)に開催されます。どうぞご来場ください。詳細はこちら。



PS
特設ページ作りました。こちらへどうぞ〜。