林田直樹さん『そこにはいつも、音楽と言葉があった』を読みました。音楽愛に溢れる一冊。超おすすめです。

 


読み終わったー あっという間に読み終わってしまった。
林田さんの新刊『そこにはいつも、音楽と言葉があった』。

素敵な本です。ちょっと素敵に演出したくなって、自宅の切花コーナーに置いてました。百合がとても良い香り〜。でも台所で食洗機の横にあるのが、ちょっと情けなかったか…

林田直樹さんは、元音楽之友社に勤めてらした音楽評論家さん。今でも音楽之友社のメディア・コーディネーターとして活躍されているほか、ラジオのプレゼンターもやられたり、クラシックがご専門。

でも、このブログをご覧いただいている皆さんならご存知のように、ウチが呼んでるアーティストの多くが林田さんの番組にお世話になっている。

ラジオにゲストに呼んでいただいたりとか、イベントを手伝っていただいたりとか、取材していただいたりとか…もう数えきれないほどお世話になっている音楽評論家さんなのです。

だから言うわけじゃないけど、この新刊の到着はとても嬉しい!! 届いてあっという間に読んでしまいました。

これは林田さんの、メルマガやWebメディアなどに書かれたコラム的な文章の集大成といっていい本です。

私は林田さんのメルマガも購読しているので(とはいえ全部をきちんと読めているわけではないのですが)何個か、あ、これ、メルマガで読んだかも…という文章にも再会しました。

確かにメルマガ読んでる時から、これメルマガ読者だけじゃもったいないよなぁとずっと思っていたんですよ。だから本になってよかった。

しかしクラシックはド素人のわたし。正直、掘り出しインタビューのコーナーは知らないアーティストや作曲者さんも多く、わからないことも多かったのですが、読めば本当に貴重な話の連続で、逆に私なんぞはエピソードから入って、これはいったどういう人の音楽なんだろうと音楽の方を後から聴きたくなったりしたのでした。

でもって、爆笑なのは「サー」・サイモン・ラトルのある意味、とてもチャーミングなお酒のエピソード。これがすごくいいんですよ。サーの可愛いさと、それを傍で見ている林田さん。ここはジャーナリスト視線と、ファン視線が交錯しているような、不思議な感覚ですが…  その感じわかる!!と私なんぞは共感しかありません。

そして小澤征爾さんの話も良かった。なんか今、バーンスタイン本をプロモーションしてて、その関係でバーンスタインの本も読んだりしているのだけど… そこでも思ったんだけど、巨大マエストロって、なんかみんな可愛いんだよなぁ!!!

っていうか、それだけチャーミングでいられたってのは、本人がピュアな人間だったとのに加えて、周りのスタッフにも恵まれたのかもしれないよなぁ…とか、とにかくいろいろ想像できます。

あと「カラヤンの影」も良かった。私もこう見えて「バルトロメイ」一家と付き合いありますからねー(笑)。パパ・バルトロメイの本にもカラヤンのエピソードがいくつかあって、それもびっくりしたけど、まさに林田さんも書かれている「影」にも震えました。

実像はそこにはいないけれど、ものすごい影響を回りに与える人。彼が亡くなったあとも「影」はくっきりとそこに存在している。

あと編集者時代の武満さんのエピソードにはグッと来ました。「火星人」のところは笑っちゃったけど(すみません)、すごいなぁ、本当にすごい。こういう記事が欲しいという明確な編集者のヴィジョンと、そこに向けられる情熱と…

時には頑なな相手に、こうして挑まないといけないこともある。こういう編集者さん、今は少なくなっているかもしれない。書き手とともに、すごい文章を世に生み出すという作業をする編集者さん。最後はちょっとしんみりだけど、いや、このエピソードを公開してくださったことだけでも読者は嬉しいかも、です。

でもって私が一番この本で好きだったのは、林田さんの音楽ジャーナリストとしての音楽との向き合い方です。音楽との向き合い方、そしてアーティストとの向き合い方、読者との向き合い方。それがとても強く感じられて、本当に痺れました。

特に「誰もがもっている芸術館の魂」のところ、特に感動的。スタッフの中にも、観客の中にも芸術家の魂を持った人がいる。

特に観客の人とかは、普段全然別の仕事をして毎日をすごしているのだけど、そういう人たちの中に音楽は像を結ぶ…というところの一連の文章には、身の引き締まる思いがしました。こういうことを音楽に日常的に関わっている私たちは忘れてはいけない。

普通の人にとって音楽は非日常で、ましてやクラシックのコンサートに行くともなれば「特別感」「非日常感」はすごいものがあります。だからビックプロダクションの公演とか、ライトやら何やらすごかったりして「非日常感」を演出する。

でも音楽を仕事にしていると、ライブにもしょっちゅう行くし、日常に音楽があるがゆえに、こういう感覚を忘れがちなんですよね。音楽って本当にすごいものだ。それを扱いながら、私も仕事をしているんだな…と。改めてグッときた。

そして私も音楽を紹介する仕事をしている一人として、いろいろ考えるし、いっつもいろいろ悩む。これでいいんだろうか、って、いっつも迷ってる。

林田さんの言葉でも何度か出てきてたけど、自分は何か強力な後ろ盾がいるわけでない。たんなる個人。だから本当にいつも「これでいいんだろうか」って悩む。

でもこうやって、林田さんみたいに自分を取り巻く周りのすべてに誠意を持ってあたっていくしかない。そう言うことなんだよね。

いや、でも林田さん、本当におめでとうございます。これまで名盤ガイド的な書籍や、出版プロデュース(特にディーリアス本は超感動!!!)、ルネ・マルタンの本(あれは全音楽プロデューサー必読の大傑作!)などもありましたが、こういった林田さんのペンにフォーカスした本は初めてだと思います。

というか、今までこういった本が出てなかったのが不思議なくらい。

さて林田さん文章も素敵ですが、ラジオのリスナーはご存知のとおりトークも最高です。この本そして、林田さんの音楽愛をさらに感じることができる素敵なイベントがあります。私も申し込みました〜! 本当に楽しみ。

銀座の素敵な本屋さんでお会いしましょう!



アーノンクールの名前がこの本に、ちょっと登場して、知った名前を見つけると私も嬉しくなる。初来日時は、林田さんにそれこそたくさんお世話になった、この二人。

応援してくださった林田さんの期待に応えるためにも、また来日させたいんだが、暗礁に乗り上げ中。果たしてどうなることやら…