いや〜読み終わった。あっという間に読めます,この本。ルネ・マルタン氏のインタビューから構築された、自己啓発本みたいな装丁のこの本。いや、実際あなたの人生にちょっとした勇気を与えてくれること間違いなし! 「ルネ・マルタン プロデュースの極意」アルテスパブリッシング。
ルネ・マルタン氏は知ってる人、多いですよね? 毎年すごい人数を有楽町の国際フォーラムに集めて行なわれる「ラ・フォル・ジュルネ(熱狂の日)」のプロデューサー。アーティスティック・ディレクター。世界で年間1,000本以上の公演を成功させているんだって。多くのミュージシャンから尊敬されて、頼りにされて…まさに私から見たら夢のようなお仕事。うらやましーーっ!
ここにはプロデュースの極意だけではなく、ビジネスのヒントや人生を豊かにする哲学が書かれています。ページを開くと右にマルタン氏の言葉。そして左に林田さんの解説が書かれており、とても分かりやすい。
いくつか心に響いた言葉を書き出してみると…
「私たちが売っているのは夢でありエモーションなのです」
「音楽祭やコンサートでのプロデューサーの責任は大きいのです。なぜ、あるアーティストを呼んで,別のアーティストを呼ばなかったのか。その選択に責任をおいながら毎年注意深く企画を作っていく」
「絶対に低価格であるべきです」
「アイディアなら誰でも美しいものをいくらでも思いつくことができる。でもそれを実現させるときに必要となるのが経営。経営とはすなわち実現のことなのです」
「私の力の根源は財政的なものではありません。私の背中を教えてくれる強力な人間関係があるからこそ、リスクを恐れずにいられるのです」
「自分の精神状態を乱すような相手とはできるだけ距離を置く」「熱心に近づいてくる人が、自分の仕事を破壊してしまう有害な相手であることもありうる」
「あるときメニューインはナントにやってきて、財団を作ったから一緒に仕事をしてくれないかと私に依頼してきました。破格の報酬とポストを提示され、ほとんど契約書にサインするだけみたいな状況でした。メニューインのことは尊敬していましたし、申し出には非常に感銘を受けましたが、私にはできかねますとていねいにお断りしました。彼の仕事のお手伝いならできる状態にありましたし、彼らの高い要求に応じられる自分でありたいと常に思っていましたが、自分自身の独立性を保つことのほうが、私には大切だったからです」
「あなたが必要なときにはいつも私はそこにいる」「尊敬する相手のためなら、できることは何でもやる」
「生きるためのお金を得ることは必要ですが、もっと比類のない豊かなものは人間関係のほうです」
「私は男女の間の友情というものを信じています。大恋愛も結局のところ、多くの場合は友情関係だと思っています。よく一緒に仕事をする相手、とても信頼している相手にのことを、ある意味では私は愛しているのだと思います。男性であろうと、女性であろうと」
そしてさらにすごいのは、マルタン氏のこういった本は、なんと日本でだけ、林田直樹さんだからこそ実現したんだってこと。すごい! 氏と日本の不思議な縁も感じますね。そして出版にあたりルネ氏のチェックは一切なかったとのこと。いや、ホント、世の中にバイオ本、評伝、いろいろあるけど、本人のチェックが入ったものはおおよそ面白くないからね…。この本もそこがいい。ただ1つだけルネ氏側からあった条件はフランスに来て,実際の現場をみて取材をしてほしいということだったそうですよ。すごいね。すごい信頼関係。林田さんはルネ氏に何度も日本でインタビューしている他、フランスでも10日間以上にも及ぶインタビューを決行。そうして出来た本が、この本なんです。うーむ。
いや,実際、すごい信頼関係だと思う。本にはルネ氏のプライベートなことや、セックスについての記述もあります。そんなところは、やっぱり氏もフランス人だよな、と思う。ある意味、とってもチャーミング(笑)。(ちなみに編集者さんによると、セックスの部分はさすがにルネ氏が語りたがったわけではなく、「そこを聞かねば、この企画は完成しない」と考えた林田さんと編集者さんが、林田さんの取材の追加日を設けてまで聞き出したんだとか… すごいね!)
ただラ・フォル・ジュルネ自体については、私もいろいろ思っていることはなきにしもあらず。100%もろ手をあげて「あれはすごい!」「ルネ氏、天才!」と絶賛するつもりはありません。でも何か意見が言えるほど体験してないのも事実なのよね。特にこの『低価格の実現』は、ウチのような弱小プロモーターにおいては、ホントに悩ましい問題。人数が確実に集まり、スポンサーが付いてくれているラ・フオル・ジュルネだから可能なんでしょ、とかなんとか言いたくなる。
ホント難しいんだよね。こういう企画。例えばアーティストの長いキャリアを考えれば、フェスみたいな場所で無料に近い値段で見せて、果たしてどうなの?ということはある。無料で来たお客さんは、私は基本、また無料のイベントに戻って行くと考える。果たしてそのアーティストがどんなに素晴らしくても次の来日時に、そういったお客さんが果たして5,000円払ってくれるのか… とか。
だからルネ氏の言うことに私も100%賛同しているわけではない。でもルネ氏の言う「新しい耳をもった聴衆と出会うことが演奏家には何よりも必要です」ってのは、すごくすごくすごくすごく良く分かる。ミュージシャンに対して、そういう機会を私たちは作っていかないといけない。それこそが私たちみたいな仕事をしている人間の使命でもあるわけです。では、いったいどうしたらいいのか。これがホントに難しい。
本当にこの仕事は難しいです。でも、この本は悩める私たちに勇気をくれます。どんな職業の人でも、自分で仕事を生み出すようなプロデューサー的立ち場にいる人なら共感できると思う。是非是非読んでみてください。ルネ氏の言葉は力をくれます。ちょっとフランス人っぽいけど、すべてに愛を優先していいんだ、ってね。
今日も張り切って行きましょう!
ルネ・マルタン氏は知ってる人、多いですよね? 毎年すごい人数を有楽町の国際フォーラムに集めて行なわれる「ラ・フォル・ジュルネ(熱狂の日)」のプロデューサー。アーティスティック・ディレクター。世界で年間1,000本以上の公演を成功させているんだって。多くのミュージシャンから尊敬されて、頼りにされて…まさに私から見たら夢のようなお仕事。うらやましーーっ!
ここにはプロデュースの極意だけではなく、ビジネスのヒントや人生を豊かにする哲学が書かれています。ページを開くと右にマルタン氏の言葉。そして左に林田さんの解説が書かれており、とても分かりやすい。
いくつか心に響いた言葉を書き出してみると…
「私たちが売っているのは夢でありエモーションなのです」
「音楽祭やコンサートでのプロデューサーの責任は大きいのです。なぜ、あるアーティストを呼んで,別のアーティストを呼ばなかったのか。その選択に責任をおいながら毎年注意深く企画を作っていく」
「絶対に低価格であるべきです」
「アイディアなら誰でも美しいものをいくらでも思いつくことができる。でもそれを実現させるときに必要となるのが経営。経営とはすなわち実現のことなのです」
「私の力の根源は財政的なものではありません。私の背中を教えてくれる強力な人間関係があるからこそ、リスクを恐れずにいられるのです」
「自分の精神状態を乱すような相手とはできるだけ距離を置く」「熱心に近づいてくる人が、自分の仕事を破壊してしまう有害な相手であることもありうる」
「あるときメニューインはナントにやってきて、財団を作ったから一緒に仕事をしてくれないかと私に依頼してきました。破格の報酬とポストを提示され、ほとんど契約書にサインするだけみたいな状況でした。メニューインのことは尊敬していましたし、申し出には非常に感銘を受けましたが、私にはできかねますとていねいにお断りしました。彼の仕事のお手伝いならできる状態にありましたし、彼らの高い要求に応じられる自分でありたいと常に思っていましたが、自分自身の独立性を保つことのほうが、私には大切だったからです」
「あなたが必要なときにはいつも私はそこにいる」「尊敬する相手のためなら、できることは何でもやる」
「生きるためのお金を得ることは必要ですが、もっと比類のない豊かなものは人間関係のほうです」
「私は男女の間の友情というものを信じています。大恋愛も結局のところ、多くの場合は友情関係だと思っています。よく一緒に仕事をする相手、とても信頼している相手にのことを、ある意味では私は愛しているのだと思います。男性であろうと、女性であろうと」
そしてさらにすごいのは、マルタン氏のこういった本は、なんと日本でだけ、林田直樹さんだからこそ実現したんだってこと。すごい! 氏と日本の不思議な縁も感じますね。そして出版にあたりルネ氏のチェックは一切なかったとのこと。いや、ホント、世の中にバイオ本、評伝、いろいろあるけど、本人のチェックが入ったものはおおよそ面白くないからね…。この本もそこがいい。ただ1つだけルネ氏側からあった条件はフランスに来て,実際の現場をみて取材をしてほしいということだったそうですよ。すごいね。すごい信頼関係。林田さんはルネ氏に何度も日本でインタビューしている他、フランスでも10日間以上にも及ぶインタビューを決行。そうして出来た本が、この本なんです。うーむ。
いや,実際、すごい信頼関係だと思う。本にはルネ氏のプライベートなことや、セックスについての記述もあります。そんなところは、やっぱり氏もフランス人だよな、と思う。ある意味、とってもチャーミング(笑)。(ちなみに編集者さんによると、セックスの部分はさすがにルネ氏が語りたがったわけではなく、「そこを聞かねば、この企画は完成しない」と考えた林田さんと編集者さんが、林田さんの取材の追加日を設けてまで聞き出したんだとか… すごいね!)
ただラ・フォル・ジュルネ自体については、私もいろいろ思っていることはなきにしもあらず。100%もろ手をあげて「あれはすごい!」「ルネ氏、天才!」と絶賛するつもりはありません。でも何か意見が言えるほど体験してないのも事実なのよね。特にこの『低価格の実現』は、ウチのような弱小プロモーターにおいては、ホントに悩ましい問題。人数が確実に集まり、スポンサーが付いてくれているラ・フオル・ジュルネだから可能なんでしょ、とかなんとか言いたくなる。
ホント難しいんだよね。こういう企画。例えばアーティストの長いキャリアを考えれば、フェスみたいな場所で無料に近い値段で見せて、果たしてどうなの?ということはある。無料で来たお客さんは、私は基本、また無料のイベントに戻って行くと考える。果たしてそのアーティストがどんなに素晴らしくても次の来日時に、そういったお客さんが果たして5,000円払ってくれるのか… とか。
だからルネ氏の言うことに私も100%賛同しているわけではない。でもルネ氏の言う「新しい耳をもった聴衆と出会うことが演奏家には何よりも必要です」ってのは、すごくすごくすごくすごく良く分かる。ミュージシャンに対して、そういう機会を私たちは作っていかないといけない。それこそが私たちみたいな仕事をしている人間の使命でもあるわけです。では、いったいどうしたらいいのか。これがホントに難しい。
本当にこの仕事は難しいです。でも、この本は悩める私たちに勇気をくれます。どんな職業の人でも、自分で仕事を生み出すようなプロデューサー的立ち場にいる人なら共感できると思う。是非是非読んでみてください。ルネ氏の言葉は力をくれます。ちょっとフランス人っぽいけど、すべてに愛を優先していいんだ、ってね。
今日も張り切って行きましょう!