クィヴィーンの公演、最高でした。まさに、その場にいたものしか味わえない音楽体験!

 

昨日の公演は、いや〜、なんか素晴らしい、スペシャルなものがありました。ちょっとなかなか体験できない。音楽ってすごいなぁとまた教えられた。

私に「この場にいないと味わえないコンサートでした」と言ってくれたお客さんがいて、本当にそうだな、と思った。クイヴィーンのライブ映像は結構あちこちで見かけるのだけど、なんだろう、この感じ。ちょっと今までになかった感覚です。


ずっとやりたかったんですよねー。私はクィヴィーンのトーマス・バートレット(Doveman)とのデュオ作品が大好きで。

最初はトーマスも呼びたかったんだけど、なにせ彼は飛行機に乗らない。こりゃダメだと思い、でもクィヴィーンも熱心に言ってくれているので、なんとか実現させたい。そうずっと長い間思っていたのでした。

トーマスを説得するのには…ということで、クイヴィーンと「彼は飛行機に乗るのは嫌いだけど、でもものすごい食べ物好きだから日本は絶対に好きなはず」とか、そういう汚い手も(笑)考えたり…。

じゃあトーマス来ないとして、ピアノを誰かに頼むかーとなったのだけど、あの彼の音楽的世界観をしっかり作れる東京在住のピアニストは、もう明らかに黒木さんしかいないわけで、ずっと黒木さんともクイヴィーンの話をしたりしていたのでした。

その後、クィヴィーンが結婚して子供が生まれたり、あれこれしている中で、すっかりタイミングを失い、その後パンデミックがあり企画が頓挫してしまったり…

で、今回、万博で彼が来日することで、その来日に乗っかり公演がいっきに実現した…というわけなんです。いや、すごいよね。実際、長く準備してこなかったら、たぶん実現できなかった。

そして、その実現のタイミングやら、なにやらを思うと、久しぶりに自分を褒めてあげたい(笑)よくやった!

クイヴィーンのハルダンゲルの切ないような、弓と弦がこすれる、あのなんともいえない独特の世界が素晴らしかった。

そして黒木さんがソロで弾いたLast Rose of Summerもよかった。(あのコード感はどっから来るんでしょうか。すごすぎ!)

日本のアーティストと外国のアーティストをからめるのって難しいんです。ある意味、リスクではある。すぐ文句を言ってくるコアのファンも多いし。でもこれはマジで成功したよね。

あの音楽空間を作れたことで、もうすべてがOKっていう感じ。すごいよね、クィヴィーンも黒木さんも。

黒木さんが途中話していたように、本当に二人初対面で、打ち合わせしすぎない感じもよかった。

実は珍しくリハーサルはサウンドチェックも含めて3時間半とっていたのだけれど(何かあったら嫌だし)、クィヴィーンは会場の斜め前のホテルに泊まっているから、時間あまったらリハ終わりに部屋戻れるしということもあり、大事をとって早めにスタートしたのでした。

そしたらサウンドチェックも入れて、1時間くらいですべてが終わった(笑)逆に黒木さんは、お待たせしちゃって申し訳なかったんだけど。

でも、打ち合わせしすぎない、作り込まない。それが、また良かったよね。もちろんそれが出来るのは二人の実力あっての話なんだけど。そこがすごい。

それにしてもこの曲最高だったなぁ… 今、思い出してもうっとり。


会場も、なんか昨日はアイルランド音楽ファンの皆さんのコアなところが揃った感じがして、皆さんご招待しなくちゃいけない人も多かったのに、皆さんがチケットを買ってくださって、本当にありがたかった。

おかげで、私は全然赤字でもよかったんだけど、ビザ代や宿泊費や、その他あれこれに加えクィヴィーンには思ったより結構払ってあげられて、それもよかった。CDの売り上げもびっくりするくらい売れた。

この公演をやる時は、まぁ、無名のアーティストだし、30人くらい集めれば、それでいいかくらいに思ってたんだけど、結果的にほぼ満員のお客さまが集まってくださり、本当にありがたかった。

そして。この公演で長年付き合ってきた曼荼羅さんとも最後。でも曼荼羅には、また別の機会にお客として何度も来ることができると思うから寂しくない。曼荼羅のスタッフの皆さん、本当にお世話になりました。

それにしても… 私の音楽人生、出会いに恵まれていたよなぁ、と改めて思う。出会いを掴みきれない人って本当に多いと思うけど(もったいないよな、といつも思う)、音楽ワーキングウーマン人生30年、私はその能力はかなり長けていたと自分でも思う。

そして思ったんだけど、やっぱり異文化が出会うと強いんだよね。多様性とか言われる時代だけど、なんでかっていうと、多様な人が集まった時にチームは強いんだな、というのがあるから。それを改めて思った。同じようなことを同じメンバーでやってては全然ダメだよなと思った。

クィヴィーンは… このトーマスとのアルバムが本当にいい。他の伝統音楽家同士のデュオもいいのだけれど、私はこの「異文化」「異なるジャンル」の二人が好きだ。

同じジャンルの連中でつるんでても意味がないとは言わないけど、やっぱりあんまり面白くないよね。違う文化が共存するからこそ、面白いことができる。もちろんそこにリスクはあるけれど、上手くいったときの格別さたるや!…ほんと、この仕事は最高だ。 

っていうか、そもそも生き方として、リスクを取る方に行かないとダメだよね。もちろんそれが難しい時代だというのは重々承知しているのだけど。そしてそれができた自分は幸運だったにすぎないというのも自覚してはいるけれど。

クィヴィーンの言動を聞くと、おそらくトーマスとのデュオの、第2弾はもうないようにも思う。でも…この1枚のアルバムができたことも奇跡だし、彼の、これからも続くであろうキャリアの中で重要な一作になっていくのは間違いない。

私もがんばろう。クィヴィーンはまた日本に秋口にやってくるようだし(その時、私は別のツアーで1ヶ月東京にいない)、ウチとしては次の公演は、いよいよ真打ち登場のポール御大。THE MUSIC PLANTももう終わりだ。どうなることやら。ちょっとドキドキ。

実は昨日、ちょうど曼荼羅を開場時間くらいに御大から「なんか日本のことで、俺忘れてることなかったっけ? そっちの健康状態はどう?」みたいなメールがあった。すごい御大。もちろん御大とはしょっちゅうメールしてるけど、そんなに頻繁にメールしているわけでもない。

何かを、海を超えて察したのか。

「もう飛行機も買ったしホテルも予約済み。空港出迎えの車も手配した。ビザの準備もできているから大丈夫。日本の美味しい食べ物のことでも夢みててください」と返事をしたところ。

ポール、妙に勘がいいところがある。私が他のアーティストに夢中になっていることを察したに違いない。すごいな(笑)

それにしてもずっと心に残る、素晴らしい音楽の時間でした。ありがとう、クィヴィーン。




◎THE MUSIC PLANT次の主催公演はいよいよポール・ブレイディ。単独公演はチケットを発売スタートしています。27日まではe+先行で。それ以降は一般発売が8月2日からスタートになります。こちらもe+にて。


◎野崎は、現在作曲家:日向敏文さんのマネジメントおよび宣伝をお手伝いしております。
6月25日に新作「the Dark Night Rhapsodies」がリリース。こちらが特設ページ(Sony Music Labels)。アナログ盤と、ピアノ小品集の楽譜は日向さんのサイトで通販中

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