なんで他の映画で使ってた曲をまた使うんだろう。しかもそんなに前作から離れてないだろうよ…。
もちろんキラーチューンというのはありうる。例えばマーラーの5番。『ベニスに死す』じゃなくても…。あの曲がかかると、いやがおうにも感動するよね。それは、まだ許せる(かもしれない)。
っていうか、バーンスタインの伝記映画で使うのなら、あの曲は「あり」とは思うよ。マーラー作品とバーンスタインの関係性を思えば、それは当然のこと。そのくらいの理由がマーラーとバーンスタインにはあるのだから。
でも、マックス・リヒターのあの曲…それもそれと同じレベルなのかい? また使うんかい?!! えっ?!
私、映画『ARRIVAL(邦題:メッセージ)』大好きなんですよ。あの映画の、あらゆるものが好き。だから、正直、『ARRIVAL』以外の映画で、あの曲聞かされて、私はどっちらとしらけてしまった。
でもよくみたら、『ARRIVAL』、つい最近の作品だと思ってたら、もう10年たってるわ。
10年といえば、年寄りにとってはあっという間だけど、普通の人には一つの傑作映像作品を忘れてしまうくらいの時間なんだろうか。10年経っていればこういうことは許されるんだろうか。知らんけど。
『ARRIVAL』素晴らしい映画だ。テッド・チャンの原作も読んでいて原作も大好き。言語が頭の中を構成しているというコンセプトがすごい。そしてあのすごい原作を視覚化した映画ももの傑作と思った。少なくとも配信で5回くらい同作品を見ている。そのくらい好きなのだ。
そして、あの曲の無限ループは、あの映画に出てくるへプタポット(宇宙人)の過去も未来もない不思議な言語感覚を表現したものではなかったのか?
あの宇宙人には(映画ではタコ状だったけど)右も左も前も後ろもない。ひいては未来も過去もない。あの感覚を表現した音楽だと信じていたのに。
つーか、そもそもあの曲は、あの映画の前に存在していたのか? …と思ってググったら、楽曲は2012年、映画は2016年だった… オーマイガー!?
や、やられたー
そうなのか。へプタポッドのために書かれた曲だと信じて疑っていなかったたのに、そうじゃなかったのかー 今まで騙されていたーー がーーーーん
しかも悪かったのが、本作を見て同日夜に見たのがケン・ローチ監督の『オールド・オーク』だったということ。
となると、本作の「いかにもお金かかってます」感や、スーパーキャスト感すらも妙にハナについてしまう。映画ってそういうことなの?
それにしても!!!! なんで監督もプロデューサーも、こんなすごい力作の新作映画で、既存の曲を使うかな。音楽舐めてんのかな、音楽を。
いや、映画ファンをなめてんでしょ。あんだけ話題になった『ARRIVAL』の曲を、この『ハムネット』を見に来た人は全員忘れていると思うんだろうか? っていうか、こんなことに拘っているのは私だけ? あの映画と音楽に、こんなに思い入れてたの、私だけ???
いや、わかるよ。マーラーの5番がかかれば『ベニスに死す』じゃないけど、感動するわな…でもさ、あの曲はやっぱり書かれてからかなりの年月がたっているわけで…
そして私の今年のNo.1映画『SMALL THINGS LIKE THESE(決断するとき)』だって、エンディングにラヴェルが流れたさ。それだって、もしかしたら反則なのかもしれない。あの曲聞けば、誰でも感動するわな。それはある。
でも… ?? いや、違う、それは単なる私のわがままなのか。
とにかく衝撃のマックス・リヒターの登場にやられた。お金の猛者なんだろうか。マックス・リヒター。シンクロ料、いくらなんだろう。(と、下世話な考え)
それに加えて、言いにくいけど、『ハムネット』。もしかしたら脚本もダメだったかも。なんだろう、前半は妙に退屈だったし、シェイクスピア役の俳優さんが、私にはイマイチでした。
彼、ちょうどイギリス人の友人に顔がそっくりだったのです。「マーティン・グリーンに目鼻だちが似てるよなぁ」「この目の感じは、ジューイッシュ入ってんのかなぁ」とか、ずっと彼の顔を見ながら考えていたら、なんかそのまま感動もなく終わった。
いや、良い演技だったとは思う。ただジェシー・バックリーが良すぎるから…彼女の存在がすごすぎるから。ジェシー・バックリーは、もう…本当に彼女が実在したのではないかと思わせるぐらい圧倒的でした。
それにしても、シェイクスピアか。私だって一応英国文学好きのはしくれ。シェイクスピアに尊敬の気持ちはあります。
19歳の時に初めていった海外で、シェイクスピアが生まれたストラットフォード・アポン・エイボンにも行きました。単なる観光客だけどね。
そして生家も見ました。観光客としてだけどね。(あまりに小さい家で、その質素さにびっくりした。観光写真で見ると可愛い家だけど、実際は天気が悪いので、非常に印象が暗いです、英国の観光地)
そして、そこで観光客向けのシェイクスピアも観劇しました。
でも当時の私の英語力では(いや、おそらく今の英語力をしても)全然理解できなかった。それ以来、シェイクスピアにはコンプレックスがあります。あれはちゃんと英語で理解していないとダメなものだと私は思うんです。
はぁ…
…とにかく終わった。ごめんなさい。っていうか、音楽が悪かった。町山さんが「最後は号泣です、劇場内啜り泣く声がすごい」とか言うから、めっちゃスタンバイしていたのに、感動カモーンって時に、あのマックス・リヒターの曲に全部ぶち壊しにされた。
っていうか、私もバカだった。今年の映画はもう見る前から1位は『SMALL THINGS LIKE THESE』そしておそらく2位はこの作品だろうと勝手に想像していた。
で、『SMALL THINGS LIKE THESE』はもちろん期待に応えるすごいものでした。あれこそ映画中の映画。最高の映画。今こそ見るべき映画。
そして本作は当初予定2位だったのが、ずるずるとずり落ちて、今やきっと10位くらいになりそうです。いや、圏外かも(のざき調べ)
でもフォローしておくとジェシー・バックリーのすごさは、私も今年の主演女優賞を差し上げたいと思っています。彼女は実際にものすごかったし、原作も北アイルランドの作家さんだから、アイルランド好きはちゃんとチェックした方がいい作品だとは思います。
そしてあの音楽がなかったら、この映画は私の今年の年間5位くらいにはなっていたことでしょう。
はい。
書いてしまった。でもたまにはいいよね。
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◎1996年からかかげてきたTHE MUSIC PLANTの看板は2025年12月にて下ろしました。公式サイトは近日中にアーカイブ化する予定。自分の主催公演や招聘はもうやりません。ただ2026年も若干の雇われ・お手伝い案件(笑)があるので、そちらはゆっくりとこなしていく予定です。
◎現在リリースしたCDの販売は終了しておりますが、書籍はあいかわらず販売しております。アイルランド名盤ガイド。楽曲への配信のリンク(Spotify)や、来日時のインタビュー、エッセイなど充実の内容。ポール・ブレイディ、メアリー・ブラック、マーティン・ヘイズ&デニス・カヒルの3冊です。こちらへどうぞ。
◎神保町すずらん通りのパサージュにてケルト書房という棚を運営しております。ケルト関係の書籍や友人の書籍などを販売中。こちらへどうぞ。
◎パンデミック後くらいから作曲家:日向敏文さんのお手伝いしております。昨年の6月25日に新作「the Dark Night Rhapsodies」がリリースされました。こちらが特設ページ(Sony Music Labels)。アナログ盤と、ピアノ小品集の楽譜は日向さんのサイトで通販中。


