ヴィクター・ウッテン、最高!!

行ってきた! ヴィクター・ウッテンのビルボード公演。いや〜良かった。

ヴィックは久々の来日だよね。それにしても最近のビルボードはすごい。もちろん入場料が高いとか、飲食代が高いとか、公演のやり方に時間の制限があってそれにあわせないといけないから演奏するほうもやりにくい、とか、世間一般の洋楽のプロモーションと動きや流れが違うとか、いろいろ文句言う人は特に業界内に多いけど、今までの実績からして、ビルボードが呼ばなかったら一生見れなかったアーティストもいるわけだし、ホントに私たちは感謝しないといけない。ヴィックとかいって、私も呼びたかったけど、なかなか難しくてね。前の来日はいつだったっけ? あれからだいぶ時間がたってしまった。

今回はヴィックのベースを面倒みているVenコーポレーションのH川社長と会えなかったのが残念だったけど、本当に行ってよかった。実はH川社長と一緒にずいぶん前にヴィクターと一緒に仕事をしたことがある。H川さんはヴィックが無名のころからヴィックとベースアンプを車に積んで自らハンドルを握りドライヴして日本をツアーしたこともある、というすごい人だ。あの来日は何年のころだったか…まだ10年たっていないと思うけど、とにかくヴィックが来日する、というのでウチでCDを出した。ファーストは以前アポロンというレコード会社が出してくれたことがあるんだけど、当然とっくに廃盤。で、ウチから出した輸入盤帯かけも結構売れたんだよね。アメリカのCompass Recordsからリリースされた初期の4枚。H川さんに頼んで取材日を作ってもらいプロモーションということになり取材をいくつかヴィックに受けてもらったのだ。

私のブログでもずいぶん前に紹介したけど、初めて知る人もいるだろうし、ヴィックの名前でググってここにたどり着いた人もいるだろうから、再び紹介すると、ヴィックのインタビューは今まで私が仕込んだインタビューのうち、ベスト5に入るくらい良い内容だった。ヴィックはテクニックばっかりが注目されてしまう自分のスタイルに対して、音楽は心とか表現のほうが大事なんだ、ということを強調していた。「ベーシストの連中を感動させるのは超簡単だ。でも何も知らない子供たちを喜ばせるのは本当に難しい。だからよく幼稚園に行って演奏しているんだ」

その日受けたインタビューは4、5本だっただろうか。本当に内容が良くって私は感銘しきりだった。で、最後のインタビアーさんだけテクのことを実はまったく聞かなかったんだよね。それに気をよくしたのかヴィック、ついに自分の練習テクを自分から披露してくれた。それを聞いて私はぶっとんだ。す、すっげー!! すっげー練習してるじゃん!! っていうか、そりゃーそうだ。あれだけ上手くても、練習しなくちゃ、あんなに上手いのはキープできないよ! 指の練習,リズム感覚の練習… すごい。すごすぎる。

それにしても当時からヴィックはベースが世界一上手い奴、と私は思っていたけど、どの専門誌でも表紙が取れなくてちょっとがっかりしたな。まぁ、しょせんリチャード・ボナとか、マーカス・ミラーとか、なんだかんだでベーシストといえどメジャーと契約してないと無理な時代だったのかも。そして今でもそれはそうかも。

今回の来日、ヴィックも新譜が再びCompassから出ていたので、うーん、もしこの来日のことをもっとうんと前もって知ってたらウチでやっても良かったかもしれない。とはいえ、厳しい時代だし、自分でやるより、メジャーのレーベルさんに営業かけたかな… まぁ、いずれにしても日本版も出ないで、せっかく来日したのにもったいないよね。取材の1つ2つでも専門誌で入っていれば良いけれど、どうだったんだろう。でも取材とかいってジャーナリストや媒体側で希望しても、じゃあ誰が仕切るんだって時にレコード会社がないと結構難しいし。

それにしても私は楽器がうまい人がほんとに好きである。なんで好きなんだろうなーって思ってたんだけど、最近分かったことがあるんだ。それは楽器がうまい人は「自由」を感じさせてくれるからだ。ヴェーセンとか見てても、そう思う。楽器がうまい人ってどうしてこんなにいいんだろう!

こんながんじがらめのイヤな事ばっかりの世の中。エジプトはぐちゃぐちゃだし、選挙で自民党が圧勝しちゃうし、汚染水は垂れ流されているし…もう音楽なんて何ができるんだろう、って思うばっかりの毎日なんだけど、でも音楽はこんなに私たちを自由にしてくれる、そう思えるから好きなんだ。これは下手なプレイヤーを見ていても絶対に感じられないパワーだ。楽器を完璧に自分の物にした人からしか感じられないパワーだ。

以前も紹介した「ビル・カニンガムとニューヨーク」でのビルの言葉が思い出される。こんな世の中でファッションがいったい何の役にたつというんだ、という質問にビルは「でもファッションは鎧なんだ。日々をを生きぬくための」そうだよ、こういう音楽が私たちには必要なんだよ。

今年ももう後半だけど、夏はいつも公演はやらないで、プランニングの時期に当てている。そんなTHE MUSIC PLANTにおいて、この秋からの本格ツアー・シーズン、キーワードは決まったな。それは「自由」だ。自由より大事なものなんて1つもない。

さてこの自由を感じさせてくれる最高の新人アーティストをもうすぐ紹介する。でも情報解禁が9/30なんだよ。まだだいぶあるね。ちょっと待っててね。この新アーティストもヴィクターのことが大好きだって言ってたなぁ!

大好きな「Isn't she lovely」。あ〜、もう最高! なんて自由なんだろ。



こっちは本人が同じ曲を解説しているところ。こうやって自分の演奏を録音しながら作っていく。




 
この本、マジでおすすめです。自由ってほんとに難しい。一番難しいのは自分自身からの自由。超影響をうけた一冊です。「スカイクロラ」の原作者の人。あっちはまったく知らない(映画も本も読んでない)のだけど、この本は何度も何度も読みました。