わくわく!


わくわくするんだ、こういうの! こいつ、徳川時代から生きてるんだぜ〜! すごすぎるでしょーっっ。グリーンランド、すごすぎる!!!?

先日NHKの大アマゾン、イゾラドのドキュメンタリーを見た友達と話したのだけは、もう彼女はあまりにもあの番組を大きく受け止めてしまい言葉がない!と感想を述べていた。わかる。確かにショックだよね。でも、私はね、ああぃうのを知るとワクワクするんだ。(今はこの番組、NHKオンデマンドで見れるから見逃した方はチェキら!)

すごくいい番組だった。余計なナレーションやお涙頂戴演出もないし、ただ単に報告した,って感じで、視聴者に判断がゆだねられているのも良かった。番組放送前に発表になったブログやら記事やらで、NHKがどれだけ彼らに対して注意深く努力したかを知ることが出来たのも良かった。そっとしておいてあげて、という人もいる。いや、でもすでに彼らは近所の人間を襲ったりトラブルがあったりしている。それに、彼らは何かがあって絶滅してしまうかもしれない。…というか、いずれにしても彼らはほぼ間違いなく絶滅してしまう運命にある。あぁ言う人たちは近親相姦とかも多いから短命だし、抗生物質があればなおるような病気や動物にやられた怪我とかが原因で死んでしまうことが多い。ましてやこちら側の人間を襲ってくることになれば、こちら側とて無視はできない。「幸せは分からない」と言った彼ら。毎日毎日、目の前のことにだけ集中している。なんてかっこいい!

そりゃあいろいろ考えるよ。でも考えてもしょうがないでしょ。ドライに言ってしまえば、私たちはこっち、そして彼らはあっち側の人たちなんだ。でもすごい、と思うわけさ。人間ってすごい!!!って。

イヌイットの文化を知ったとき、私は超ワクワクした。イヌイットたちは、特に70年代のイヌイットたちは、ホントに原始人みたいにして生きていた。今でこそ貨幣経済が介入し、教育を与えられ、国に保護されているが、社会問題も山積みで大変なことになっている。

植村さんの本に出て来るイヌイットたちは、ほったて小屋に住み、小屋の中は暗く生のアザラシがつりさがり、お腹がすいたら手や口の周りを血だらけにして食べるというシンプルな世界だ。三食うんぬんという習慣はない。アザラシは殺したら生で食べないと壊血病になる。だから生で食べて血液からビタミンCを取るのだ。野菜とか草なんかこれっぽちもはえていない、本来人間が住めない世界。そこに人間が住んでいるんだよ。すごいと思いませんか? 

捕まえたアザラシをおろすとき、氷点下20度とかの世界では、湯気がほわっとあがるらしい。おろしながらかじかんだ手をアザラシの内蔵につっこみ温めながら作業は進む。あざらしは白く厚い脂質で覆われ、それを輪切りにしてはがすと赤い肉が出て来る。イヌイットの家に来た来客は、食べ物を自由に食べていいことになっている。

また一節によると来客には旦那が進んで奥さんを差し出すのが通常だと言われていた。男は狩りが上手ければスーパーヒーロー。女は子供を産み育て、毛皮が上手におろせるのが良い妻とされる。男女平等とかもってのほか。産めない女は口減らしということで、自分から雪の中に身を投げ出し自殺する。それじゃ女に産まれたら悲惨じゃない?と言う人もいるだろうが、イヌイットの女の人たちは奔放で、集落に旅人なんか訪れた日にはモテモテになっちゃうそうだ。植村さんなんかモテモテで、実は彼の地に隠し子がいるのではないかという噂もある。トイレとかもちろんないからボットン形式でバケツにし、たまったら処分する。敷居などないから、みんなで無邪気に並んですることもあるようだ。植村さんは女の子たちとならんでしたようだが、それがいつまでたっても慣れない…とか本に書いてあった。

犬は深く社会に根ざし、犬ぞり文化はイヌイットの大事な文化だが、犬たちはソリを引きながらンコをする余裕もないので、走りながらする。犬ぞりに乗るものは、飛んで来るンコに要注意だ…。しかも犬は人間のンコも犬のンコもペロリと食べてしまう。何せ草一本生えていないんだから!!… みたいなことを、あれこれ読みながら、私は… わくわくしてしまった。いいなぁ、こういう世界って!!って。

ナヌークの2人はグリーンランドでも都会の入植者エリアに住んでいる。だから彼らにとっては犬ぞりも観光の一部で、キビヤなどイヌイット独自の食べ物もクリスチャンが一度だけ食べたことがある、と言っていたくらいだ。その点は私と差はない。イヌイットの暮らしがたくさん存在した70年代と比べ、今や多くの集落には電気が通り、教育が施され、反対に氷はどんどん溶けてイヌイット本来のハンターとして生活をたてることが本当に厳しくなってしまった。国(デンマーク)に保護されてつつ、アメリカ軍の基地でバイトしたり、公務員として働いたりしてみんなお金をかせぐ。小さな集落は統合されたりするし、若い人はどんどん都会へ出て来る。都会にはヨーロッパの村と変わらないスーパーマーケットが並ぶ。そしてどんどん入植者とイヌイット社会の混血が進む。偏見はいまだにあれど、グリーンランドはそんな風に絶妙なブレンドの中に存在している。カナダのイヌイットの言葉が10%くらいに落ちてしまったにくらべ、グリーンランドには90%言葉が残っている。いや、ホントに何がグリーンランドをグリーンランドたらしめているかというと、言葉なんだよね。そのことについてはまたいつか書きたい。言葉=文化なのだと。犬ぞりはたぶん氷が溶けて、あと10年もたないと思う。でもグリーンランドの文化は残る。そう私は思いたいし、あの国を応援したい、ってすごく思う。

しかもそれは可能なんだよ! 先日もナヌークの日本盤発売を発表したらグリーンランドでは大変な騒ぎになっていた。ナヌークを応援することで、56,000人のグリーンランド人を励ますことになるのだ! あなたたちのバンドは素晴らしいですね!って。これほどやり甲斐のある仕事があるのだろうか!

それはさておき…

先日読んだ「ザ・ロード」でも極限の世界が表現されていた。すべてが壊滅的にやられた世界で生き残る父と子。でも、それは架空の世界ではない。これからいつ戦争になるか、地震が来るか、核爆発が起こるかして、いつ何時こういう世界にならないとは限らない。そういうことを思うたびに、こういうベーシックな何もない世界に憧れるのだ。それは,今、再び日本がなんらかの形で壊滅的にやられてしまい、すべてがなくなることに対する恐怖心の裏返しである。そういうのを心配しはじめると、ホントに心が痛くなるから、自分はあえて原始社会みたいなのに憧れるんだろう。400年生きているサメにも憧れる。彼らが生きている世界、それはいったいどんな世界なんだろう、と。彼らにとって世界はどんな風に見えているんだろう、って。

なんかそういう人間の根源的なものが、北極にはある。だから私は北極に惹かれてやまないのだ。

「マン・オブ・アラン」を撮ったロバート・フラハティのドキュメンタリー映画「極北のナヌーク」は見ましたか? 今やYou Tubeで無料で見られるし、別にストーリーがあるわけでもないから、全部見る必要もないんだけど、おもしろいよー これは貨幣経済が入ってきたころのイヌイットの話(1920年代)。毛皮とかを白人の貿易商に売ったりしている。彼らのまぶしい笑顔。シンプルに生きる人たち。



いつだったか、これの上映会に行ったのだけど、そこでゲストで出演された探検家の角幡唯介さんにQ&Aのコーナーがあり、こんな質問をした人がいた。「この人たちは何が幸せで生きているんでしょう」と。角幡さんは「気持ち分かります」としながらも、そもそも「幸せ」とか「未来」みたいな概念がこの人たちにはないんだ、みたいなことを話してらっしゃった。うーん、ホントに面白い。

いずれにしても自分が生きている世界だけが世界だと思っていると、地震が起きたり戦争が起きたりした時にショックが大きいから、皆さん覚悟をして生きて行きましょう。

今日もはりきって行くぜ! 本日事務集中日、そして夜はプールだ!

南極で遭難したシャックルトンのワンコたち
現在ウチのライブ公演は以下の通り。
10月 ロビン・ヒッチコック来日公演(東京のみ)
11月 辺境の歌コンサート with 松田美緒、ナムガル、ナヌーク(残券わずか)
11月 THE MUSIC PLANT20周年公演 with ヴェーセン、ルナサ、ナヌーク
12月 ウォリス・バード来日公演(東京,京都)