「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」を読みました

久しぶりにこのテの本を読んだ。信頼できる友人が強く進めてくれたので… 探検本ばかり読んでいたから、このテの本は久しぶりである。読んでて思い出した、私は自分の生き方を肯定してくれる「自己啓発本」が大好きだったっけ…と。(というか、自分に都合のよいところばかり響き、あとは忘れるという…) 

この本は平均寿命が100歳になろうとしているこの時期に、いったいどういう人生設計を考えたらいいかという本である。この本によれば、たぶん今、50歳の私も90くらいまで生きる必要が出てきそうだ。確かにウチの親もすごい年齢なのに今だに2人ともピンピンしている。ウチのジジババにいたっては全員90過ぎまで生きた強者だ。やはり私も90歳以上まで生きるしかないのか… 正直少々面倒くさい。

…などと書くと生きたかったのに理不尽な理由で亡くなってしまった人に失礼だが、親が行ってくれたら、もう自分はあまり長く生きる必要はあまりないのではないかとも思う。長く生きることはけっして良いこととは自分では思っていない。が、自分から死ぬわけにもいかないので、とにかく生きている間は、なるべく自分が楽しく人生を続けることが出来る様、自分で努力しないといけないのだ。そして、自分の、面白い事がないとすぐ退屈してしまう、このやっかいな性格を思うと自分でウンザリしてしまうのだ。確かに自分は相当面白い人生を歩んでいるよな…とは思うが、その分自分で努力してきたという自負もある。この努力をまだこの先も続けるのか…とうんざりしているのが正直、今の心境なんだけど…。

そしてこの本が言っていることはまったくもって正しい。お説ごもっとも…。でも実は読み始めた翌日くらいに、55歳の尊敬する友人が亡くなったので、当初はあまりにも本の内容が白々しく感じられ、読めたもんじゃなかった。だって、こんな本読んでいろいろ考えて100歳の自分を想像しても、ある日突然死んじゃうことってありうるんだよ…。

ま、それは個人的感情だから置いておいたとして…。でもこの本の言っていることは本当に正しい。年金はいずれ破綻するし、100歳まで生きるなら80歳までは仕事をしないと、とにかく社会はたちゆかない。それは難しい数字を見るまでもなく、想像がつく当たり前の事だ。

いくつか響くポイントがあったのだが、メモとして書き出しておく。が、やっぱり響くことは、すでに自分が実践している、またはすでに目標として目指している事柄ばかりだったりもするので、果たしてわざわざこういう本を読む必要はないのではないか、と思うのだが(笑) それでも自己啓発本の楽しいところは、そんなところにある。自分の考え方を肯定されたくて読むのだ、こういう本は(笑)

まず「ステップ・ダウン」という考え方。今までキャリアはすべて「ステップ・アップ」だった。でも80まで仕事をするとなれば、それは違うのではないか、ということを著者は強く指摘している。仕事ができる後輩を立てながら,アドバイス的な仕事をし、頼りにされ豊かな人生を送ることの方が、地位のアップより良いのではないかということ。またそれにともない給料や収入の「ダウン」もありうる、ということ。これには非常に納得。これ、実は私の周りではとっくに起こっている現象で、最近、自分の仕事じゃない仕事を手伝う時、自分のボスはだいたい年下になることが多い。ライブの仕事を手伝っている某社も、プロモ手伝ってる某社も、現場の責任者は私より若い連中なのだ。そういえば、昨日までやってたハープ奏者のプロモの仕事をくれたノルウェー人プロモーターのボスも、私なんかよりうんと若いのである。いいよ,年下ボス(笑)そして彼らはホントに仕事ができる!

私もなんとなく現場を長くやってますから風を吹かせているが、やっぱり現場バリバリの子たちが一番仕事が出来るし、頭の回転も早くキレが違う。時代は、もう彼らの時代なのだ。若い人をたてて、やっていかないと、オレみたいなバアさんに仕事なんか1つも回ってきやしない。彼らの話をきき、彼らの夢をかなえる手伝いをし、ちょっとした年上なりの気のきいたフォローをする。それが今の私の仕事、そして幸せではないかと思う。正直、自分が最前線バリバリやる時代は、もう終わりにしたいと心底思っているのだ。

あとこの本が指摘する、無形の財産取得に力をいれなさい、というのにも大きく頷いた。これはホントにごもっとも。友達やあらゆる種類のネットワークはとても大事だ、ということ。お金で買えない経験も大事。特に著者は夫婦間のパートナーシップも強調している。今や家族を持っていたとしても、子供と一緒にいるであろう時間の20年は人生ほんの一部でしかない、と。それより60年連れ添うことになるパートナーとの関係はホントに大事にしなさいよ、と。お説ごもっとも。パートナーのいない私ですらも思わず頷いてしまった。今、結婚するなら相当努力して、仲良くしながら一緒にいないと、一緒にいる意味がまるでなくなってしまうということなのだ。

そして人生のステージも今までの「教育」「仕事」「引退」の3つではなく、「エクスプローラー」「インディペンデント・プロデユーサー」「ポートフォリオ・ワーカー」になる、という著者の分析も良かった。この部分にも、すごく勇気をもらったのは,実は自分はまさにこの通りに人生を今、進んでいるからだ。

「エクスプローラー(探検家)」は「残業、休日出勤ドンと来い!」の猛烈サラリーマン時代の自分を思い出すし、「インディペンデント・プロデューサー」ってのは、自分がまさにそれを実践しているから、やはり響く。要はあまりお金のことは考えず,自分のやりたいことを自分で追求する。起業家みたいに事業を人に売り渡すことは考えず、成功もあまり気にせず、組織に捕われず、でも自分で仕事を生み出し自由な立場で独立をつらぬく、という生き方。これ、まさに今の自分だよ。うん。

そしてその後に続く「ポートフォリオ・ワーカー」は、有給の職業の他にも、副業を持ち、ボランティア活動も含めた多くの活動を1人の人がこなす多様性のある生き方、という事。確かに,今現状私のやっていることを見れば、自分のツアーもあり、自分の企画書を書き、人の手伝い1(ギャラ仕事)、人の手伝い2(ギャラ仕事)、人の手伝い3(経費くらいは出るかな/広場の「のざき塾」など)、人の手伝い4(ボランティア)くらいまで事業があり、原稿書いたりラジオやったり講座やったりする時間もある…という具合だ。

以上が、この本の中で、自分が響いた「オレは大丈夫。ちゃんと出来てるな」的部分。

反対に超・耳が痛かったのは… 貯金だ。はっきりと断言していないが、この本はかなり強く「貯金しなさい」というメッセージを送ってきている。これが矛盾するのだが「インディペンデント・プロデューサー」であまりお金のことは考えず、クリエイティブな仕事しなさい、と言ってるわりには、貯金は大事みたいなことをちょいちょい突いてくる。目の前のことに流されないように。お金に関するコ ントロールはしっかりしろ、と。はい、そうですか。そうですよね。それ分かってるんだけど、これが私の苦手なところ。ダメなんだよねぇ。 ちょっとたまると、すぐ大きな公演やって赤字にしちゃったりする。まぁ、でも、そうです。お説ごもっとも。ホントにこの点は努力をしないとねと思いました。ハイ。

しかしこの本でも最後に書いてあるが、ホントに政府、社会、企業はすべてこの高齢化現状から目を背けず、時代にあわせて変化をとげていかないと、大変なことになる。が、おそらく私が生きている時代は、このままなし崩しに進んでいくのだろう。年金とか出ないこともありうるし、出るとしても未来に借金を重ねながらボロボロのシステムになっていくのだろう。「消えた年金」騒ぎが聞こえなくなって随分たつが、いったいどうなってしまうんだろう。転職かなりしているけど、独立してからもずっと年金はきちんと払ってきたのだけどなぁ。

私もいろいろ考えながら、新しい自分の仕事の形を考えている。将来を不安に思い出すと本当にきりがない。レーベルで好きなCDをリリースして10年間、招聘中心に好きなアーティスト呼んで10年間。合計20年の間、この小さなオフィスをラッキーにも継続してくることが出来た。これはまさに奇跡だ。そして、今、次の10年を、どうやって仕事をするか、という問題をどうにかしないといけない。 どんなに好きなことでも10年もやってりゃ飽きてくる。というか、そもそも今、自分がこいつとなら心中してもいい、と強く思える新しいエキサイティングなアーティストがいない。結構空っぽな状況なのである。まぁ、もちろん既存の連中は継続していきますよ。ペッテリももうすぐ来るし、ウォリスも意外に早く来る可能性があり、ヴェーセンとか、フルックとか、マーティン・ヘイズとか、また機会があれば呼びますよ。でもなんか自分をふるいたたせてくれる新しいアーティストがいないのである。

それにしても、こんな世の中で独身が増えたり子無しが増えるのも無理もない、と著者は言う。今や多くの人は決断を先延ばしにし、なんとか自分の自由を確保しようと必死になっているのだ。今後、ますますその傾向は強まり、婚期は遅れ、子供を持とうという夫婦も減るだろう、と。というのも、人生において何かを選んでしまうと、それはそこで固定されてしまうから、その先の人生の選択肢が失われてしまうのだ。人生の選択肢が減ることは、この時代にといては最大のリスクだから。

それにしても、こんな風に急速に変わる人間社会に対し、政府も教育機関も地域コミュニティもまったくついてこれていない。これは非常に大きな問題だ… ということでこの本は締めくくられている。まったくもってお説ごもっとも、である。

さて、私はどんな風に生きますかねぇ…